表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/68

イーブ様の男の隠れ家2


こうして私が男の隠れ家に幽閉されて、しばらくの時が流れた。



しばらくとしか言いようがない。

一週間くらいのような気もするし、三日くらいしか経ってないような気もする。

実は1000年ほど経過してると言われても、納得してしまいそうだ。



これまでのことをいくつか。



私はオートマタだから、寝ないし食べないし、トイレにも行かない。

呼吸すらしてない。中身は石だしね。



オートマタちゃんの記憶はあまり役に立たない。

決められたことを忠実に守る小学生の女子って感じ。

わからないことや知らないことには答えない。

沈黙をもって答えとす!みたいな感じ。

ちょっと頭の良くないAIってとこ?

いや、イーブ様に作られたAIそのものなのかも。



隠れ家は閉じた空間ではあるが、換気はされてる。

ゆえに埃が溜まる。そのお掃除がオートマタの仕事の大部分。

ホント、埃ってどこから来るんだろうね…



バンダナを発見。

砂漠の町にお使いに行く時に使うらしい。

オートマタも人形だから、呼吸はしてないけど、

口を覆っていないと奇妙なモノを見る目で見られるらしい。

これはちょっとラッキー。装着してみるとちょっとカッコいい。



赤黒い塗料を発見。

少し赤っぽくて黒い塗料を発見。

本棚用のものらしい。色が剥げたりすることは、まずないらしいけど、念のためらしい。

思いついて、気持ち悪かったけど、口の中に筆を突っ込んで、塗ってみた。

口の中を調べられたらマズいかも問題は解決。

せっかくバンダナ見つけたのに・・・

ま、砂漠の町に行ったとき用にね。



本が読めない。

これだけ本があるわけだし、異世界のことも知りたいし、まずは読書でしょ!

一生読めるかも!って思ったけど、文字が全く読めない。ヒントもない。

しかも字が汚い…

ここにあるほとんどの本はイーブの手書きの覚え書きのようなものらしい。

かろうじて、この世界は右から横書きということだけはわかった。


わかってどうするというのか…


私にも読めそうな本はないかとオートマタにも聞いてみたが、

簡単な本は使わないから、本棚の一番上。

オートマタは浮けないから取れない、と言われた。

トホホ…



初期装備を発見。

お出かけ用の服はないのか、とオートマタちゃんに聞いてみたところ、

マントとベルトとバックが出てきた。よし!


マントはパーカー付きで雨具を兼ねているらしい。

オートマタはあんまり濡れると良くないらしい。

あと、時と場合により猫耳隠し。

防刃機能と抗魔機能もすごいらしいが、とりあえずは関係なさそう。

すごく高価だから盗まれないように気をつけないといけない、らしい。

一見、ただの汚い古い布だけどね。


ベルトにはナイフと小銭入れ。

ナイフを抜いてみた。

ナイフってか、包丁?ペティナイフ?

ってか、薄っ!何これ?すぐ折れそう。



アダマンタイトの刃だから、まず折れない。


あ、あ、そう…


イーブ様が最高級品質のダンディなペーパーナイフとして作ったんだけど、

切れ過ぎて怪我したから、オートマタの物になった。

何でも切れる。料理の時にも使う。


賢者って…



バックは異世界定番の大容量バックだった!

ただ無限には入らないらしい。


お引越しの時に使ったから、隠れ家の中の物は全部入る。

入って少し余裕があるくらいって、イーブ様が言ってた。


へー今は中に何が入ってるの?


何も。


あ、そう…




少しずつ、いろんなものを発見しながら、時間は実にゆっくりと流れていった。



私は異世界に転移した。

そして、前世の記憶がスッパリと欠けていることに気づかされた。

生活していたような記憶はあるのだけど、個人的な記憶が全くない。

日本の現代にいて、普通に生活し、漫画や映画を観た記憶はあるのだけど、

その状況を思い出そうとすると、パシッと頭痛が走る。


漫画を読んだ。中身は覚えている。

しかし、その本を買ったのか?借りたのか?

映画は一人で観たのか?だれかと共に観たのか?


そういう事を思い出そうとすると、鋭い頭痛が走る。

記憶喪失というのはこういう感じなのだろうか?

個人に結びつく記憶が何もない。


あのおっかない神様、何にもつけらんねえ!とか言ってよな。くすん。



さて。

私の心境が誰かに伝わるだろうか。


前世の記憶をほぼなくし、今世でやる事がまるでない場所に閉じ込められ、

眠ることもなく、食べることもなく、排泄することもなく、

ただひたすらにお掃除をしたり、

読めない本を開いて、汚い字だ、と絶望したり。



人間であることをやめ、永遠の時をさまよい…やがて賢者の石は考える事をやめた…

とでも言いたくなる心境。


って、そう。

こういう知識はなくならないんだよなあ…


やばいやばいやばい…

本気で私は考える事をやめそうだ…


かといって、オートマタに向かって、外に出たい、と言っても、

帰って来られないからダメとしか言わない。


はい、詰んだ。いきなり詰み。

おい、詰んだぞ!神様?

いきなりかよ!

どうすんだ、これ、最初からバグってんじゃねーかよー

聞いてるかーマイゴッドー

なんともなんねーぞーこの状況ー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ