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豪華客船コンクラーダ号2


そういう私の心境を、朝ごはんの配達と倉庫の様子を見にきた船員ガンビに切々と訴えてみる。


え、いんじゃない?

同じ檻に入れればいいんだね?

トイレと水の世話してくれんだよね?


ああ、それくらいは。


あっさりと合意。

ガンビ先生による檻の中の飼育ルールを学んだ私は、動物の飼育員、期間限定、へと昇格した。


ん?お客様から降格か?




仕事があるって素晴らしいよね。


檻をくっつけたり、仕切りを外したり、トイレを再設置したり、小一時間くらいで作業は終わり、

私と狼犬とトカゲっぽいのは、同じ檻の住民となった。

皆、何となくご満悦である。


いやー手間が省けて、本当助かるよ。さすが獣人の姫だな。


ブッ!

何ですか?それ


いや、そう聞いたぜ。

獣人の姫だから、ご丁重に扱えってな。

檻に閉じ込めといて、ご丁重もないもんだけどな、ハハハ。


くっそう、あのヒゲ船長。

船を降りる時に、絶対ヒゲむしってやる。


しかし、よく手懐けたな、そいつら。

あっという間じゃないか。何かコツでもあるのかい?


コツ?というか、ご飯を分けてあげたら、いい人認定されたみたいで…


食事を分ける!お前がか!


何ですか、それ。

そんなに食いしん坊じゃないですよ、私は。

あんまり食事に興味ないって言ったでしょ。


いや、そうか、そう言ってたな、てか、あの食事を分けたのか?!

こんな!何だかよくわからない生き物たちに!あの!高級料理を!


そこまで驚くことですか?


いやあ…そうか、味覚が違うのかな。まあ、よくわからんが…そうか…


ジトリとした目で私を見る。

いや、あなた、それ、狼犬さんと同じ視線よ。

人としてもう少し何とか、ねえ。



よかったら、ガンビさんも一緒に食べます?ご飯。


いいのか!


いいですよ。

ああ、そうだ。

あんな量じゃ足りないぞって、私が文句言ってたって船長に伝えてくださいよ。

そうしたらガンビさんもいっぱい食べられますよ、高級料理。


いろいろと頑張ったのであろう、船員ガンビ。

ドスンという量が、ドガンって量になった。

みんなで晩ご飯だ。


あれ?ガンビくん。

君が呑んでるのはお酒かな?

どういう交渉したらお酒が出るんだよ。晩ご飯だからかな?


私は念のため、肉を食べたふりをしたりして、そっと皿に戻し、それを狼犬に食べさせる。

もっとも食事に夢中な船員ガンビは私になんて目もくれないけど。


ガンビくんは肉と酒だけでお腹いっぱいになるなんて、生まれて初めて!と、感謝感激している。


トカゲはモサモサと豆を食べ続けている。

狼犬はガンビとシェアしても余るほどの肉の塊にご満悦だ。

異世界初めての団欒である。

なんか涙が出そう。


夕食後、トカゲを脇にはべらせつつ、狼犬を櫛削っていたら、不意にボソッと話しかけられた。

誰に?

狼犬に。


お前、いい奴だな。


ん?念話か?!

何、あんた?話せるの?


何だ、お前、話せるのか?


ん?

トカゲさん?!あんたも話せるの?


しばし沈黙。



そりゃ念話くらいできるだろ、と二匹から突っ込まれた。


え?私がボケてるの?!



どうやら二匹には、念話で語りかけてこないから、念話も使えない低能な獣人だと思われていたようだ。

2匹は既に念話でお友達となっているらしい。


ええー何それ。


まあ、自分で使おうと思っても、よくわからないから、そう言われてもしょうがないかもしれない。

話しかけ方がわからない。

答えることはできるのだけど。


狼犬とトカゲは憤慨している。

この獣人は自分たちのことを何だと思っているのか、ということらしい。


すまん、狼っぽいのとトカゲっぽいのだと思ってた。


何も知らない私に2人は自己紹介を始める。

どうやらお偉い魔獣らしいので、2匹から2人に格上げである。

人ではないけど。


オレは狼ではない。ましてや犬でもない。

まだ小さいがフェンリルという魔獣である。

見ればわかるだろう。


まだ生まれて30年程の若造だ。


何年か前、飢えて死にそうになっていたところを今の主人に救われた。

今の主人は人間で、冒険者兼商人をしておる。


救われた時は、感謝はしたが、すぐに逃げ出すつもりだった。

しかし、主人に説得されてな。

もう少し身体が大きくなるまで一緒に旅をしないか、と。

そうすれば人間という危険な種族に対する理解度も上がるし、何より飢えることがなくなるであろう、とな。

確かに飢えることはなくなり、身体も大きくなったのだが、狩りの能力が上がらないのがなぁ…

魔量も伸びないし、やはりそろそろ独立した野生の生活に戻るべきだとは思ってはいるのだが…



ワシもフェンリルと似たような境遇でな。

ワシはレインボーフォレストドラゴンと呼ばれておる深い森の竜だ。

フォレストドラゴンから偶に生まれる、見ての通り、彩り豊かな竜だ。


やはり小さな頃にグリフィンに襲われて、喰われる寸前のところを今の主人に救われ、

行動を共にしている。

尻尾をかなり喰われてたので、せめて尻尾が回復するまでは、と、

とりあえず生かしておいてもらえたのだ。


時間が経って、尻尾も戻り、身体も少し大きくなったし、

そろそろ逃げ出さないとな、とはワシも思っておってな。

もっとも、ワシはフェンリルと違って、解体されて皮と肉と骨に加工されそうなのでな、

ホホホ…警戒が厳重だから、逃げ切れるかどうか…というところであったが。



あなた、竜だったの?!

で、解体されちゃうの?

割とおっかない人に飼われてるのね?

てか、竜って美味しいの?


竜は美味いらしいな、人に言わせると。

それよりワシの皮がとんでもなく高価になるらしいから、

魔石になってしまう前に解体して、ついでに肉を食う、ということらしいが。


いや、あなた、自分が解体されるにしては、ずいぶんとのんびりしてるわね…


弱いモノは喰われる。それだけのことではないか。


うむ。とフェンリルもうなづく。



うーむ、安定の殺伐さ具合。



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