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タンネルブ1


タンネルブは港町。

なすべき事とは何だろうか?


船に乗る。

まあ、そうでしょう。

港町ってくらいだし。

お金はかかるだろうけど、歩くよりずっと早い。



あれ?そうかな?



一般的な歩きの旅だと普通、山や川を迂回したり、食事をしたり、

夜中に眠ったりする必要があるから、時間がかかる。

船旅だと、迂回する必要もないし、

食事や睡眠中も船が勝手に進んでくれるから、早い。

歩かなくてもいいから楽チン。


私は?


不眠不休で歩いて、山だろうが、川だろうが、関係なく同じペースで歩ける。

食事や睡眠の必要なし。疲れることなし。



あれ?



船ってどれくらいスピード出るんだっけ?

私の歩きよりは速いよね?きっと。

ノットって何だっけ?何キロだっけ?

船って何ノット?30ノットくらい?

うーよくわからん。



んで、仮に私が、何も考えずに、全速で走り続けたら?

全速で走ったことってないような気が…



むー



迷わずに目的地に着くだけでも良い、とすべきなのかな。

乗れないなら乗れないでいいや。

どうせ獣人だしね。はん。



だったら船旅より優先度が高い事は?



情報だよねえ。

あらゆる商品と情報が集まるって言ってたし。



私は勇者を探さないといけないんじゃなかったっけ?

イーブ様がパーティに属してた勇者。

あと、オリハルコンの製法?

もしくはそのヒント。


オリハルコンの製法、エルフの里で聞き損なっちゃったなあ…

まあ、聞いても答えてなんてくれそうになかったけどさ、ははは。


オリハルコンの製法は、どこかの図書館とか研究機関を訪ねてみないとダメかな…

自分で調べないといけないんだろうな…

文字読めるかな…

タンネルブに図書館とかってあるかな?


字が読めないと、こんなに困るんだね、びっくりだよ。

教育って大事だよ…


そもそも、獣人が貴重な本を集めた図書館に入れてもらえるとも思えないなあ…

忍び込めるかなあ。

図書館の近くから、力任せにトンネルを掘ってみる?

銀行強盗みたく。


むー

エルフの里でお勉強できてたらなあ…



あんな怖いとこ、もういや…


おっと、オートマタちゃん!

てか、ミトンちゃん?


もうミトンでいい。


あれから完全に気配を消してたね?

やっぱりあのエルフの長老さん怖かった?


怖かった。

ミトン、消されちゃうって思った…

ミトンの声も聞こえてたみたいだったし、ミトンのこと死霊だって言ってた。


酷いよねー

ミトンちゃん、こんなに可愛いのに。


ミトンはもうとっくに死んでて、

残留思念をイーブ様に縫い付けてもらって、

オートマタになってるだけ。

あのエルフは正しい。

イーブ様は禁忌を超えた。

でも、それはミトンのせい。


お、おお。


ミトンは子供の頃、捨てられてて、

イーブ様に拾ってもらって、生き延びたの。


そうなんだ。


イーブ様にお仕えするためにミトンは居たの。

だから、イーブ様に当たりそうになった呪いを、ミトンが代わりに受けるのは当たり前なの。


ん?


イーブ様の代わりにミトンが石の呪いを受けたのは当たり前なのに、

イーブ様はミトンから呪いを払おうとしたの。


あーうん。

うん。


けど、石の呪いは、イーブ様も止められなくて、

ミトンの身体が、少しずつ石になるから、しょうがなくて、

イーブ様はミトンの身体をオートマタに変えていったの。

呪いを受けて、半年くらいしたら、右手が石になったから、

切って、オートマタにして、

またしばらくしたら、ゆっくりと右足が石になったから、

切って、オートマタにしたの。

結局、身体中、全部オートマタになって、

それで頭まで石になりかけて、ダメになりそうだったから、

ミトン、もう死ぬからイーブ様にさよならって言ったんだけど、

イーブ様はミトンを縫い付けたの。


…そう。


ミトンがいけないの。

早く死ねば良かったの。

けど、イーブ様のお世話しなきゃいけないって思ってたから、死にたくなかったの。

イーブ様はミトンがいないと、普通のことがなにもできないから。

だから、ミトンはイーブ様に言ってしまったの。

イーブ様が心配だから、死にたくないですって。

でも、しょうがないから、さよならしますって。


ミトンがそう言ったせいでイーブ様は禁忌を超えてしまったの。


なるほど…ね。


簡単に超えたりしてないの。

エルフ大嫌い。

ミトンを死なせればよかっただけなのに、ミトンのせいで、イーブ様は超えてしまったの。

イーブ様は悪くない。

エルフ絶対許さない。


そう言い切ったミトンちゃんは少し恐ろしかった。



私は種族間の闘争の原点というようなものを連想した。

誰も皆、自分の正義を持っていて、

自分の正義を貫こうとして、

結果、誰も悪くないのに、

相手が死ぬまで許せなくなってしまうような瞬間。


ミトンちゃんの、ミトンちゃんにしては、長くて、途切れ途切れの告白を聞きながら、

黙考しつつ歩いていたら、

いつの間にか、タンネルブの城門らしき場所に着いてしまった。

人がたくさん並んで、列をなしている。


あら、まだ予定立ててないけど、着いちゃった。

ま、いっか。


と、ぼんやりと列に並ぼうとしたら、

ミトンちゃんに猛烈なダメ出しを喰らう。


列の先頭近くに行って、

ここに並んでたら入城できるか、どのくらい待てば入城できそうか、

確認してから並ぶ。


入城のために、銀貨一枚だけ別に用意しておく。

タンネルブは大きな町だから、そんな酷いことにはならないはず。


船に乗るとか言ったら絶対ダメ。

主人のためにお使いで、

塩と胡椒と、できれば果物の砂糖漬けを買いに来たって言う。

無難に町に入るのが一番大事。


はい。わかりました。

すいませんでした。


賢者の石って、イーブ様より何にもできない。

信じらんない。

町に入るの2回目なのに。


すいません…

てか、一度目もそれくらい丁寧に教えてくれてたら、ですね…


賢者の石が何を知らないのか、ミトンはわからない。

わからないことには口を出しちゃダメ。


そんなもんですか…


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