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エルフの里2


さて、カルブーンよ。


はっ。


お前を此処に残した意味が少しわかったか?


はっ。

武力がある者に交渉力も備わるとは限らないということでしょうか?


そうだ。

お前は判断が早すぎるし、粗雑すぎる。

破滅の獣人にいきなり攻撃を仕掛けたな?



いや、待て待て…

本人の目の前で頭弱いとか言わないでください…

そして、それを即座に肯定しないでください…



この獣人の行いの報告を受けておりましたゆえ、当然のことかと…



わ、私の行いって何よ!

…森林破壊か?そうか。


というか、私は存在を忘れられつつあるようだ。

一人、心の中でエルフの会話に突っ込むのに疲れてきた。


なんか昔もこんな事あったような気がするなー

私がやらかした事なのに、私の頭越しに会話が進んで、

私の事なんて忘れられちゃってて、どうしようかな、と思ってるうちに、

結論が出ちゃってるっていう…


こう、モヤモヤする感じ。

こんな負の感情のかけらだけが、前世の記憶かー

なんか前世なんて思い出さない方がいいのかもなー


などと考えているうちに、エルフ親子の会話は進むのであった。




獣人の力を見切ってのことか?


いえ、獣人の力は我々の想像以上でした。


さよう。

全てお前の慢心に由来するのだ。

まず、獣人を倒せると思い込んでいた。

獣人の振る舞いにお前が我慢できなくなったから、攻撃をした。

そして、お前が倒せないと思ったから、降参した。

獣人が大人しくすると言ったから、それを信じて、里に招き入れた。


全て、お前が見たものだ。

お前の感じたものだ。


お前の愚かさは判断の基準が自分しかないことだ。

周りを見ろ。知恵ある者と語り合うがよい。

他の者に理解させ、納得させよ。

里の者が、カルブーン様の判断であれば、間違いないだろうとわからせるのだ。


カルブーンよ。

確かにお前は強い。単独の勝負であれば、我を超えるだろう。

1000年に一度の逸材と世間がいうのも、認める。

だが、強さの持つ脆さを理解せねば指導者にはなれぬ。


強さの持つ脆さ…


お前も少し会話をしてみれば、すぐにわかったはずだ。

破滅の獣人の知識の薄さ、知恵のなさが。


ケルマン神とは、そういう神なのだ。


よいか、ケルマンは決して侮ることなどできない神だ。

しかしながら、ケルマンには配慮がない。先の見通しがない。

これまでもヤツとの交渉もそうだった。

全ての約束がその場凌ぎで、後で約定を違えようとも、それがどうした?で終わる神だ。

心しておくが良い。

その場の気分で動く我儘で子供のような神だが、

一度動いたら、エルフの里を易々と潰せる力を働かせるかもしれぬ。


そうだな、今のお前もケルマンに似ておるな。

考えのなさといい、強大な力に溺れておる点といい…


はっ!?


まあ、あれほどの力は持ち得ないようだがな。


なっ!

そ、そこまで言うなら、父上の対応を問おう。

父上は私の立場であれば、どうしたと言うのですか?


まず里には入れぬ。


では、獣人が暴れるままとすると?


その獣人と会話をしたのか?

獣人が求めていたのは、イーブの情報であって、里の内部の情報ではなかった。

里の老人達を何人か、獣人のもとへ派遣すれば、それで終わっていたはずだ。

イーブは50年ほど前に来たきりで、それ以降は知らぬ、と言うだけで、話は終わっていたろう。


お前は森を彷徨い、面白いように罠に嵌る、噂ほどでもない獣人を侮った。

ワシなら、木を切り始めた時点で、声をかけて、情報だけを与えて、

タンネルブの街へでも案内して、森から離れさせたであろう。


しかし、それでは、エルフの里の不干渉の定めに反するのではありませんか?


相手を見ろ、ということだ。

よく観察し、少し話してみれば、この獣人の異様さが知れたはず。

知識もなく、魔力もなく、そのくせ物理攻撃、魔力攻撃、共に無効。

食事をせず、魔石も摂取せず、水すら飲んでない、ということだったな?

我らの常識の範囲外にあるモノには、それなりの対応があって、然るべきだ。


我々に気づかないように、何らかのものを摂取していると思っておりましたが…


この獣人は監視されていた事にすら気づいてすらおるまい。

何も摂取せずに動き続けられるという事よ。

我々の知識外の動力源を持つということであろう・・・な。

うん?

古代ヘルノノ族にオートマタ技術というものがあったな…

しかし、あれも巨大な魔石があってこそ…

封じ込められるのは、精霊だけであったか?…


父上?


ああ、うむ。

それにしても、気になるのは、この獣人が持つケルマンの加護よ。

どういう加護を与えると、このような不思議なモノができるのか…


捕らえて、じっくりと研究してみたいものですが、無理でありましょうな。


無理であろうな。ケルマンによる何らかの使命を帯びておるはず。

協力などしてくれぬであろうし、力づくで捕らえて解体もできぬであろう?


力づくでは難しいでしょうな。

背後関係がわかったくらいで満足しておくべきですか。


それにしても、獣人の瞳が気になるのう…

石のようにも見えるが、よく感情を表す。

やはり、抉り出してみないと、研究はできないだろうか…

そうだな…いや。



父上?


賢者の石か、そうか。

ザグリンか。

ならばイーブとやらは賢者の石に届いたのか?

そうなのだな?

だが、それなら、なぜオリハルコンの情報がいる?

必要なのは、アダマンタイトの情報だろう?むしろ。

あれが市場に出なくなってずいぶん長くなる。

おかしい、

重要な何かが足りてないな。

カイオウなのか?…いや、そんな訳は……



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