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エルフの里1


やがて振袖の和服っぽい服を着たエルフさん達に迎えられた。

文官って感じもするし、儀礼服の神官っぼくもある。


一見するとわからないが、よく見ると光のカーテンのようなモノが見える。

これが結界であろうか?



お帰りなさいませ、カルブーン様。

既に報告は頂いております。

長老様がお待ちでございます。


そうか、すまぬな。



私たちは光のカーテンの中に入っていく。


お迎えの方々の脇をすれ違う時に、

ボソリと、大層なお怒りようですよ、と囁かれた。


プルと身を震わせるカルブーン隊長。

私をチラ見して聞こえたか確認したが、聞こえてないふりをする。


この身体は性能が良い。聞こえちゃうんだよなー

そっかー長老はお怒りかー



私は隠すべき情報と、エルフの里に来た目的の適当ストーリーを再チェックする。

今度こそ私が賢者の石だってことは、きっちり隠しておかないと。


特にこういう研究熱心そうな人たちに捕獲されたら、バラバラにされて、何かの材料にされそうだ。

うん、ありそう。

すごくありそう。

慎重にいこう。



都心のアーケード街っぽい、というと失礼だろうか?

そういう感じの居住地?商店街?のような屋根のある通りを歩く。

建物は木造三階建てって感じのが多い。


タシュクの町に比べると、文明のグレードが一つ上な感じがする。

整然として清潔である。

が、全てのドアは固く閉ざされていて、人はいない。

私への対策だろうか?きっとそうだろうな。



なんかお正月感があるよね、こういう無人の街って。



へーと興味の赴くまま、あちこち見ようとするけど、

エルフの人たちが、ススッと身体を張って、私の視界を遮るのだ。


ちぇ、けち。意地悪。



正面に五階建ての高級旅館の本館というような建物が見えてくる。

これも木造で歴史がありそうな感じがする。

地震なんかないんだろうな、きっと。

火事が起きても水魔法で即ち消火とか?いいなあ。

あそこが目的地でしょうかね?



建物の一階奥の大ホールにて、エルフの長老と謁見。


長老は長身、長髪、長髭、長耳である。

やはり振袖っぽい服を着ているが、色は真っ黒。

振袖の喪服か、感覚がわからないなぁ。



私を置いて、防衛隊の方々がホールから優雅に退出していくのだが、

カルブーンは残れ。

と言い渡されてしまう。


あらら、これはお説教ですな。



私と長老、隊長の三人だけになる。

これならもっと小さな会議室でよかったのではなかろうか。



カンチネラの長老として、里を統治しているカルゾネ・エン・カンチネラという。

以後の面識を許可する。



うっ!

わ、私の名前って何だ!

考えてもなかったよ!



大賢者イーブ様の下僕の獣人、ミトン…


だっ、大賢者イーブ様の下僕の獣人、ミトンと申します。お見知りおきを!


はぁ…ホント賢者の石バカ。


あ、ありがとね…




む?という顔になる長老様。


それは何だ?

精霊か?違うな…

生き霊?いや、死霊だな。

術式で縫い込んであるのか?

ずいぶんあっさりと禁忌を超えるではないか、イーブは…


オートマタちゃんがアワアワしているような気がする!

いきなりバレてはいけないことがバレてしまったのかもしれない。


私はニコリと営業スマイルで、何のことでしょう?と強引に受け流す。


イーブ様は禁忌を超えたりは致しません。

私はイーブ様の消息を求めております。

イーブ様がこちらに最後にお立ち寄りしたのは、いつのことになりましょう?


完全にはったりだ。

きっとイーブはここに来たことがあるだろう。

いや、頼む、来ててくれ。


ふん。

腰が低い割に、図々しいのは主人譲りか。

イーブはもう五十年ほど前を最後に、ここへは来ておらんぞ。

控えめに言っても、印象的なヒト族であるからな。

忘れはせぬ。


そうですか…



正確に言おう。

イーブなるヒト族の者は、これまでこの里を三度ほど訪れたことがある。


最初は賢者の石の製法を求めて来た。

取り憑かれていたと言ってもよいな。

手掛かりになるものなら何でもいいと知識を求めてきた。

資料を漁り尽くして、金だけ置いてフイと消えた。


二度目は長生きの方法を求めて来た。

賢者の石に届く前に寿命が尽きそうだということであったので、長命の秘薬を売った。

執拗過ぎて面倒になり、追い払うために売らざるを得なかった、というべきかな。


最後が、五十年前だな。

いよいよ身体が持たないということで、エルフの血を求めてきた。


血?


罪人のエルフから血を抜いては、何やらわからぬ魔術陣に通して、己に輸血し、

全身の血と取り替えておったわ。

むしろ、死んでしまうのではないかと思っていたが、上手くいったようだったな。

やはり大金を置いて、フイと消えてしまったわ。


どうだ、なかなか忘れられそうになかろう。

お願いでございます、後生でございます、と哀れに乞い願うわりには、

えげつない要求ばかりする者であった。

まあ、対価はしっかりと取ったので、問題はない。

問題はないが、それにしてもな…



そ、それは、主人がご迷惑をお掛け致しました。



うむ。下僕に主人のことを悪くいうのも、どうかと思うのだが、アレはちょっとおかしいぞ。

わかってはおろうが。



おかしくなんかない!

イーブ様はカッコいい!


どうどう。

怪しまれるから、やめなさい。



エルフの長老が、すっと目を細める。


死霊は主人の悪口に反応するのだな。

その死霊がミトンとかいう獣人であろう。


お前は何だ?

別モノだな?

何のためにオリハルコンを求める?


何処の手の者か?



私もアワアワしてしまう。

や、やばい。

さすがエルフの長老様。

なんか丸裸にされそうである。


ザグリンの手の者なら帰す訳にはいかぬ。

エルフの里を焼いてでも、お前を封じざるを得ないな。


ザグリン?


ふむ、やはり違うか。

まあ、ザグリンならお前のような間抜けた者に力を与えるはずもないしな…


ぐう。

ザ、ザグリンとはどなたでしょう?


現在、最強にして最悪の魔王だ。

知らぬか。

であろうな。

カイオウ。


ん?何それ?呪文?

私は戸惑う。


ロンバルド、ローエン、ヌプチャク、ガラク…


何言ってんだろ?


むう。

まさかな…

ヴァルク、ケルマン、リュウモン…


ピクってなった。

この爺さん、当てずっぽうで、私の知識を試してる?!


何だと?!

ヴァルク。


なんでわかるの?

う、動いたら負けな気がする。


ケルマン。


むう…顔に出しちゃ負けだ…


ほう、ケルマン神の使いと申すか…これはまた意外な大物。

しかしケルマン神なら…この大雑把なやり方も納得できる。

なるほど、そこまで追い詰められているか。

認識を改めなくてはなるまいな。



あああー何だよ!この爺さんはーもー

完敗だー。私の心が読めるのかよ~


ふむ。

あまり嫌われても困るかな。

破滅の獣人よ、一つ忠告しておこう。


なんでしょう?


お主、必死に顔を取り繕っておるが、無駄であるぞ。


へ?


お主の尻尾がな。

都合が悪いことを聞かれたり、誤魔化そうとした時に、

ケバだったり、左右にブンブン振れたりして、何もかも筒抜けよ。

今後の交渉の時には、せめて尻尾を隠すようにした方が良かろう。


なっ!


一つ貸しとしておこう。



うーこのクソじじいめー


このクソじじい、とでも思っておるのだろう?

ん?

尻尾を先に隠すが良い。

いかにもケルマンの使いらしい獣人であることよ。


わーホント苦手だわ、こういう爺さん…



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