第一話 目を開けた先には
俺はある日突然こう考えるようになった。
「俺の人生の価値とは」
そう思う日々が続き、仕事や生活にも嫌気をさしていた、上司には上から物を言われ、残業は当たり前、それには慣れてしまったが残業続きで遊ぶ余裕も帰る余裕もなく友達や家族関係も、あまりよろしくはなかった。
ある時俺の頭の隅には突然「死」が連想されていた、特別自分から命を絶とうと言う勇気も行動力もなかった。
価値ある行動、価値のある人生、とは何か仕事帰りに日々思っていた。
そんななか、いつもの帰り道の片隅にある電灯、そこには蚊柱がそびえる、そんな満ち溢れる光景に立ちすくむ俺はゆっくり深呼吸をし目を閉じる。
そんな日々にもう飽き飽きだ、目を開ければまた同じ帰り道、また同じ生活の繰り返し、友達にも家族にもずっと会っていない、それならいっそのこと遠くに行ければなと、叶わぬ夢を馬鹿馬鹿しく思うが、漫画や映画のようなシチュエーションを少し期待し目を開ける。
「まじかよ」
その言葉が真っ先に出た、そこには普段と変わらないいつもの帰り道、光景が広がる。
神様も俺の人生には価値がないと思ってるのか、まぁ夢みがちな幻想に過ぎないかとため息をつく。明日もまた同じ日々の繰り返しかと歩き始める。
「キイイイイイイッッグシャブチ」
一瞬なにが起こったか理解するのに10秒の時が刻まれたが、眩しい光で理解した。
「車に撥ねられてるじゃん、すげぇ痛てぇなんだこれ、目の前で倒れてる人がいる」
そこには無惨な姿の俺の下半身があった。
「あぁこれ俺の下半身かよ、まぁ本望かな痛みもすぐ引いてきてるしなんか体が動かないし死ぬじゃんか」
周りから聞こえる運転手の声と電灯に残る蚊柱だけの光景が少しずつ霞んできている。
「周りには迷惑かけるが俺に対しての人生の価値がわかったような気がする、こんな運命でも少しは役に立ったかな」
そう思い目を閉じる。
目を開けると、そこには見たことある光景、
「あれ?走馬灯?それともデジャブか?」
いつもの帰り道の街灯に照らされる蚊柱と俺自身だった。
一瞬困惑する俺は時計を見る、23:10
さっきと一緒?困惑する。
まぁいいかところで俺はなにをしてるんだ、
そこで深く深呼吸をし目を閉じる。
目を開けるとそこには見たこともないましては道や歩道などもない草木が生い茂っている場所だ、なんだかやけに右腕が重いふと右手を見るとそこには中世ヨーロッパに存在しそうな歴史館などでよく見た剣だ。
なんでこんな物を持っているのか俺には理解できない、すぐさま剣を落とした。
剣をすぐさま離すとすぐ気がついた。いつもは気怠く疲れがあるがやけに体も心も軽い、驚き、軽い体を動かして一直線に森を駆け抜ける、そこには見たこともない一面広がる湖に出た。例えるなら人生で一番行ってみたかったウユニ塩湖だ。
森や草木全てが反射する。
そこで気になる事を思い出した。
「やっぱり」
そこには湖に反射した俺と同じ言葉を喋る見たこともない姿だ。
「なんだこの異世界ファンタジー顔は。俺は車に轢かれて、同じ光景を見て、街灯にいる蚊柱を見つめてそして、この森にいるってわけか?」
どうもよくわからん。何故に、、もしかして本当は車に轢かれた時に死んでここは天国か?それとも輪廻転生というやつか?それともまさか異世界転生ってやつ?そんなこんな戯言を喋っていると
「おーい、ウェイト、ウェイト・バルミュルカー!」
そこには誰かの名を呼ぶ20〜30代に見える男がこちらを見ている。
その男を凝視していると脳に戦慄が走る。
感じた事ない痛みが体全体に行き渡る。
すると懐かしいような新鮮なような記憶が頭に怒涛に流れてくる。
「なんだこれ激痛が走ると共に脳がちぎれそうだ」
「だがしかし、なんだこの記憶は。ここまできた経緯、知らないこの顔をした子供の記憶、懐かしい記憶、全てのことがあったかのように頭に刻まれる記憶。」
「そうだ、僕はウェイト、ウェイト・バルミュルカだ」