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異世界の最高神に勇者として呼び出しくらった話  作者: Monica
第1章 増え続ける魔物の謎
7/22

閑話『精霊使いの受難』

前回のあらすじ


ホフゴブリンを殺したことに激しい後悔を覚える剣人と真弓。剣人は割とすぐに吹っ切れましたが、真弓は落ち込んだまま。

でもなんとか慰めて吹っ切れました。

曇らせ回であり、剣弓イチャイチャ回でもありました。


前回の投稿からかなり日が経って御免なさい。ちょっとバタバタしてたんです。

それはそうと、約束通り閑話を挟みました。


それでは、お楽しみくださいませ。



空が薄暗くなった頃、ローズレイ国の『星羅神殿』、とある一室。

開いた窓の隙間から、光るものが2つ飛び込んできた。その光るものは部屋の真ん中で止まると、何かを待つように扉を凝視している。


「お疲れさん。勇者2人はどうだった?」


───不意に、扉が開いた。扉を開けた人物は、その2つの光るものに声をかけた。


「あ!アイシャさまー!」

「ねね、ぼくたち勇者さまの武器になったよー!勇者さまをたすけられたの!」


その2つの光るものは、声をかけた人物に対し元気よく返事をする。まるで、テストで良い点を取ったことを母親に報告する小学生の様に。


「そうかそうか、偉いこった。私の魔力やるよ」

「わーい!」

「アイシャさまの魔力きらきらしててすきー!」


彼女──アイシャは微笑み、彼等を労った後報酬として自身の魔力を渡した。アイシャの指先から、星空の様な霧状のものが噴き出し、彼等の頭上に降り注ぐ。彼等は幸せそうな笑みを浮かべた。


「おいしー!あんしんするー!」

「お前らマジで私の魔力好きなのな」

「うん、すきー!」


彼等はアイシャの言葉に同意する。彼等にとって魔力とは食べ物であり、心身を回復させてくれる癒しでもある。彼等はアイシャの魔力を好んで食うのだ。


「でもでも、アイシャさまの方がもっとすきー!」

「だあいすきー!」

「ははは、そいつァ嬉しいね」


しかし彼等は『アイシャ』と言う人物を心から敬愛している。正直彼等にとって魔力は二の次だ。心の底から信頼しているアイシャが隣にいることの方が余程大切なのである。


「ぼくのほうがアイシャさまのことだいすきだもん!」

「むぅ、わたしのほうがだいすきだもん!」

「こらこらお前ら、()()()()()()()の為に喧嘩すんな。それよか聞きてェことがある。勇者はどんな風に立ち回ってた?」


どちらがよりアイシャを愛しているのかと言う、まるで『言った』『言ってない』の言い争いの様に不毛な口喧嘩を始めたが、アイシャがそれをやんわりと止める。そして大本命である、勇者の様子を聞いた。


「んとねー、おとこのほうはねー、ホフゴブリンをちょーはつしておびきよせてた!いしなげてやっつけようとしてたから、ぼくが剣になってあげたの!けさぎりしてから心臓に刺してた!」


「おんなのこのほうは、冒険者ふたりをかばってたよ!ホフゴブリンがきょだいかしたから、弓になって力をかしてあげたの!」


「成る程な」


アイシャは2人の話を聞いて頷く。戦いとは無縁の地球人にしては上手く立ち回った方だと感心もする。最も、この2人は頭を使うことや情報を長時間覚えておくことが不得手なため、実際はもっと複雑な状況であっただろうが。


「でも、まだ勇星力はつかえなかったみたい」

「そりゃそうだ。地球で使えねェ力をステラリースに来て早々使いこなされたらただのバケモンだろうよ」


『勇星力』と言うものについて話し出した。2人はまだ使いこなせていないと言うが、アイシャが使いこなせなくて当然だと言う。


「おんなのこのほうは魔物のしんぞうをせーかくにいぬいてたし、ふたりともつよいよ!」

「うん、これからもっとつよくなるよ!」

「オーオー、精霊から太鼓判押されたか。将来有望だなコリャ」


『精霊』と呼ばれた彼等は真弓の行動を評価し、これから強くなると機体の色が込められたことを言う。その様子にアイシャは少なからず安心した。他人を庇うということは、今までの様に名声だけを欲しがるチンピラ共ではないだろう、と。


「でもねー、2人ともちょっとよわごしかもー」

「…ほう?」


ここで、精霊の1人が意見を口にする。アイシャは耳を傾けた。


「ホフゴブリンを殺した()()()ですっごくわるいきもちになってたよ。ざいあくかんとか、ふあんとか、こうかいとか、そういうの!」

「とくにおんなのこはすごかったよ!いまにもなきだしそうなかおしてたもん。ざいあくかんとか、きょうふとか、そういうのがおとこのこより濃かった!」

「うん、濃かった!」


精霊は、勇者の2人がホフゴブリンを殺したことを悔やんでいることに苦言を呈していた。2人に言わせれば、悪感情が濃かったのだという。


「まァまァ、そう責めてやんな。しょうがねェだろ?今まで戦いとは無縁の場所で過ごしてきたんだから。生き物をこの手で殺す機会なんてそうそうあったもんじゃねェ」


しかし、それも仕方のないことだとアイシャは2人を諌めた。


「これくらいなもんか?他に何か…」

「あっ!あと…」


まだ報告すべきことがあるかアイシャが効く。すると、弓に変身した方の精霊が思い出した様に声をあげ、話そうとする。


「んとねー、ホフゴブリンの巨大化が、なんか変だった!」

「うん、変だったよ!」


「変…たァどう言う意味だ?」


精霊達によると、ホフゴブリンの巨大化現象に違和感を覚えたのだと言う。


「んーと、うまくいえないんだけど…なんか、ホフゴブリンがじぶんでやったんじゃないみたいだった!」

「うん、おもいかえしてみれば、ホフゴブリンの魔力とはちがったきがした!ホフゴブリンの魔力に、なんか混ざってた!」

「何か混ざっていた、か…」


その言葉にアイシャは考え込む。精霊達の言葉を纏めると、ホフゴブリンは自分の意思で巨大化したとは思えなかった。ホフゴブリンは確かに自らの魔力を使っていたが、その魔力に何かしらが混ざっていた、とのことだ。


(そもそも魔力に乏しいホフゴブリンが魔力を使うってのが土台ありえねェ話だが…確かに、稀に魔力を多く持ち、体を大きくする個体もいるにはいる。だが、サイコロ振って50回連続で6が出るみてェなクソ低い確率だ。更に、巨大化は自らの意思ではない、魔力に何か混ざった感覚、となると…魔物の巨大化は故意に行われた可能性が高ェ)


アイシャは僅か0.003秒と言う凄まじい思考速度で考えを纏め、結論を出した。魔物の巨大化は、何者かによって故意に行われた可能性が高いと。これは由々しき事態である。


「ご苦労だったな。お前らはもう寝とけ」

「「はーい!」」


アイシャは精霊2人を下がらせた。精霊は元気よく返事をし、自分の体を光で包む。瞬きする間に彼等はこの部屋から消えていた。


「魔物を殺すってのは…まァ慣れていくしかねェわな」


自分1人しかいなくなった部屋の中で、アイシャは呟いた。


「にしても…もう勇星力を使ったか。無意識下の出来事とはいえ、使えたわけだ。これからちゃんと扱える様になりゃいいねェ…」


アイシャの部下である精霊達が感知できなかった、『勇星力』。それをアイシャは感知できていた。それはひとえに、アイシャが『神』だからである。この世界で勇星力を扱えるのは、勇者のみ。感知できるのは勇者自身と神だけなのである。

最も、剣人達はそんな余裕など無かったから、『よくわからない力』程度の認識すらできなかったであろう。

先程の精霊達は知能が低く、自分達が勇星力を感知できないことを忘れている。故に、『まだ使えていない』と判断を下した。


「『何かあったら支援してやれ』ねェ…はてさてどうしたもんやら」


確かに魔物は生物だ。理性が無かろうと知性が低かろうと、確かに意思がある。しかし、この地に生きるものはそれを隣人とは思わない。命があるものとは思わない。最早『生き物』とすら思ってないのかもしれない。


魔物を殺すのが当たり前であるこの世界で、そんなに優しい性格をしているのなら、何とも生き辛そうだと、アイシャはそう思った。


「こればっかりはアイツら自身の問題だな…まァ、私は勇者じゃねェ。ただの後方支援係だ」


だから、この世界には彼等が慣れていくしかない。自分はただ、見守っていればいい。手を貸してやればいい。いざとなれば高位精霊でもくれてやればいい。何しろ自分は精霊使いであり、精霊にはツテがあるのだから。


「故意に行われた魔物の巨大化ねェ…何が潜んでんだか。ギルド全体に警告でも出しとくか。それから、アイツらにも一応言っとこう。こっちもこっちで調べとかねェとな」


ここで浮上した新たな問題、『故意に行われた魔物の巨大化』。こちらの対処も必要となる。ギルド全体への警告、同じく『三姫神』の仲間達への注意喚起、こちら側での調査など、仕事は山積みだ。


「腹減ったなァ…メシ食うか」


アイシャはそう嘯き、部屋から出ていった。


勇者2人の心の平穏を願いながら。



『精霊』

・サイズは様々(小指になるくらいのから掌に人間を乗せて移動できるほど大きいのまで)

・ランク付けされており、ランクが下がるほどおバカになってくる

・魔力がごはんであり癒しでもある


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