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異世界の最高神に勇者として呼び出しくらった話  作者: Monica
第1章 増え続ける魔物の謎
10/22

第9話 『武器屋のナニカ』

前回のあらすじ

ギルド『ラミー』の受付嬢フランシスから「先に武器作ってきて、そしたら申し込めるよ」的なことを言われたので紹介状書いてもらって武器屋に行きました。


今回ちょっと短めかな?


それでは、お楽しみくださいませ。



ギルド『ラミー』の受付嬢フランシスの紹介文を持ち、剣人達は武器屋『リリドラ』へと向かっていた。歩きながら、ルークが話す。


「『リリドラ』はいいぞ、オレの武器やエレノアの杖も作ってもらったんだよ。な!」

「はい、とてもよく馴染みますし、使いやすいんです!店主さんは鍛冶屋であると同時に魔法媒体を作るのも得意なんですよ!」

「魔法媒体?」


聞き慣れない言葉に真弓が反応する。隣の剣人も首を傾げている。


「『魔法媒体』というのは、魔法を使うための道具です。本来私達の中に宿る魔力は、直接放出はできないんです。魔法の扱いに長けた種族や、魔族でもない限りは」

「魔族…」


またも聞き慣れない言葉に反応したが、今は『魔法媒体』の方が気になるので、話を聞き続けることにした。


「『魔鉱石』という、魔力伝導力が高い鉱石があるんですが、それを使えば魔法を放てるんです。魔鉱石さえ使っていれば、どんな形でも良いんですよ。私は杖が使いやすいから杖にしていますが、指輪や腕輪、本などに付けている方もいるんです」

「成る程、魔法のステッキみたいな感じか…」


真弓が納得した様に頷く。

剣人と真弓は今、自分がどんな武器を使おうか悩んでいた。『魔法媒体』の話を聞き、魔法使いになるのも良いかも知れないと思っていたのである。とは言え、魔法の使い方などさっぱりわからないのだが。


「お、着いたぞ」

「!」


ルークの言葉に、剣人と真弓は顔を上げた。目の前には、かなり大きな建物がある。屋根の下に大きい看板が貼り付けてあり、そこにはこう書いてあった。


『武器屋リリドラ』


店の前に置かれた1つの立て看板には、『武器のことなら何でもお任せあれ!』と可愛らしい文字で書かれている。


「ここの店主、武器なら本当になんでも作るんだよな」

「少しはっちゃけた人なのでびっくりするかと思いますが、優しい方ですよ」


それを聞いた剣人と真弓がやや身構えた様子を見せるのもお構いなしに、ルークが先導してドアを開けた。カラン、とドアベルが音を立てる。


店の中は、武器でいっぱいだった。右を見れば武器。左を見れば武器。上を見れば武器。前を見ても武器。剣や弓矢、槍や盾などが置いてあった。甲冑の様な防具も揃えてある。また、魔法の杖の様なものが長い箱に何本も収まっている。中には武器かどうか疑わしいものもあったが、『武器屋』『武器のことならなんでも』と銘打っているあたり、武器なのであろう。


「あ!いらっしゃいましー!」


ドアベルが鳴っているというのに、客の存在に今気づいたらしい店主が明るい声で言う。

奥のカウンターの様な場所には、1人の女性が座っていた。

ショッキングピンクとも言うべき濃いピンク色の長い髪の毛を、高い位置で2つに纏めている。前髪は眉毛を少し出す様に切り揃えた、厚めのぱっつん前髪。

黒い眼鏡の奥には翡翠の様に輝く瞳。手首には髪色と同じ色の紐を何本も組み合わせた様なブレスレットをはめている。

頭の上には黒と黄色を基調としたゴーグル。濃い緑色を基調とした作業着を思わせる服に、薄汚れた黒の長靴を着用している。

その服装を女性がしていると大半は『ダサい』という感想を出すだろうが、彼女の場合は似合っている。とてもしっくり来ているのだ。


「すみませんでし、武器の構想を練るのに夢中で…お客さんに気づかないなんて申し訳ない…およっ⁉︎クシアさんにカミレさん!武器の調整でしか?」


彼女はカウンターから出て、申し訳なさそうに謝る。その姿は一見すると、ただの可愛らしい女性である。少女と言い切ってもいいかもしれない。だが、彼女は()()()()()()()()とは決定的に違う点がある。

剣人と真弓が息を呑んだ理由はそれだ。


──そう、彼女にはツノと尾があった。ツインテールの結び目の近くに、まるで髪飾りの様に黒いツノが2対。そのツノには、彼女の瞳と同じく翡翠色の線の模様が入っている。

そして、床に垂れるほどに長い、太くて丈夫そうな尾。ツノと同じく、漆黒色に翡翠色の模様が入っている。


人間ではない。


剣人と真弓は半ば本能的にそう悟った。目の前にいるのは、人間ではない。人間の様なナニカだと。

剣人と真弓が冷や汗を流し後退りをすると───


「落ち着け、大丈夫だ」

「「!」」


ルークが言葉をかけた。エレノアも2人に近づき、大丈夫だとでもいう様に真弓の肩に手を置いている。一方で店主であろう彼女は、『困惑』の2文字を顔にべったり貼り付け、狼狽えている。


「あの人は確かに人間じゃねえけど、良い人だぜ」


ルークは店主を『人間ではない』と断定する。だが、それと同時に害をなす者ではないとも。

この世界に来てから良くしてくれているルークとエレノアを、2人も信頼している。警戒の姿勢をといた。しかし、目つきは相変わらず厳しいままだ。


「あぁっ!もしかして、ドラゴンを見るのは初めてでしか?」


ドラゴン。彼女はそう口にした。すると、目の前にいる彼女はドラゴンなのか?だからツノと尾があるのか?剣人と真弓はそう推測する。


「申し訳ないでし。驚かせてしまいましたね」


チロ、と舌を出しながら申し訳なさを4割ほど含んだいたずらっ子の様な笑顔で軽く謝罪する。


「あーっ!あちしとしたことが、自己紹介を忘れてしまいました!あちしはこの『リリドラ』の店主兼鍛冶屋を務めておりまし、『リーリエ・ルベリウム』と申しまし!よろしくお願いしましね、勇者様!」


リーリエ・ルベリウム。彼女は自らをそう名乗った。この武器屋『リリドラ』の店主であり鍛冶屋でもあると言う。


「ケント、マユミ。こちらリーリエさんだ。ちょっとはっちゃけてるが、凄く腕のいい鍛冶屋だぜ」

「!」


ルークが剣人達を紹介すると、リーリエは何やら驚いた様子を見せた。しかし、顔には出ていなかったので誰も気づいていない。


「……本日2度目のピンク髪だな」

「うん。ステラリースの人は髪の毛の色素が豊富なんだね。今度はどぎつい感じのピンクだよ」


クシアの紹介に耳を傾けつつ、剣人達が思うこと──それは、『またピンク髪か』であった。先程のフランシスはフラミンゴの羽というか、少し色味の濃い桜の様な淡いピンク色だったが、こちらはどぎついピンク色である。剣人は、『ギャルが良くつけてそうなネイルみたいな色だな』と思った。完全に偏見である。


「むむ、はっちゃけてるとは何でしか、はっちゃけてるとは!あちしはちょっと…いやかなり武器が大好きなだけでし!」

(武器マニア…⁉︎)


剣人が声には出さずに驚く。このどぎついピンク髪ツインテールのドラゴン、武器屋の店主と鍛冶屋を兼任するだけでなく武器マニアだという。つまり好きなことを仕事にしているということだろうか。


(…なんで眼鏡かけてるのにゴーグル付けてるんだろう?)


真弓が口には出さず軽く突っ込む。


「どっちも似た様なもんだろ」

「武器のこととあらばテンション高くなりますもんね、リーリエさん」


そんな勇者2人の心境は梅雨知らず、ルークとエレノアは会話を進める。


「今日は俺らの武器じゃなくってな、こいつら2人のだ。何かしら良いのを見繕ってやってくんねぇか?」

「こちら、フランさんからの紹介状です」


ルークが勇者2人に武器を作ってくれと言い、カミレが紹介状を手渡す。


「…そういうことでしたか。しかもフランから…わかりました!このリーリエ、全身全霊をかけて御二方の武器を作らせて頂きまし‼︎」


クシアの言葉を聞き、成る程と納得する。フランシスからの紹介状を受け取り軽く文面に視線を走らせると、気合を入れて宣言した。


「ではではお二人とも早速こちらへ!」


いつの間にか剣人と真弓の背後に回っていたらしいリーリエは、2人の背中をグイグイと押して店内の奥に誘導する。


「ルークさんとエレノアさんは待っていてください!」

「えっ、なんでだよ?オレ武器が作られる工程とかちょっと見てえんだけど」


ルークのその言葉に、リーリエはしばし顔を硬直させる。この時彼は気付かなかったが、彼女の額には冷や汗が浮かんでいた。

まるで、隠し事がバレそうな時の様に。


「ぁ…武器のご相談は、プライバシーを守ってほしいというお客さんが最近多くてでしね…もういっそ、全てのお客様に個別相談で対応しようかと」

「ですって。大人しく待っていましょう?」

「おー…まぁ、そういうことなら」


リーリエのやや震えて掠れた声に乗せた()()()は、2人には至極真っ当な言い分に聞こえた。

故に、リーリエの安堵した顔には気付かない。


「それでは参りましよ!」

「は、はい」


都合が悪いものを隠す様に、リーリエはやや強引に2人の背中を押して店の奥へと歩く。大量の武器が並べられている店、その奥に扉が1つ。それを開けて、2人を中へと入れた。

中は工房の様になっており、大量の鉱石などが入った箱や剣、刀を打つための道具一式などが揃っている。ここが武器を造る場所と判断するには十分すぎる材料達だ。


剣人と真弓はリーリエの態度にやや違和感を感じていたが、口に出すのは失礼かと思い、黙って扉の近くへと取り付けられている長椅子に座る。

そしてリーリエもまた、何かそわそわしている様な、興奮している様な、不思議な表情をしている。必死に取り繕うとしている様だが、荒い鼻息が漏れて聞こえている。


剣人達から見て向かい側にある、リーリエが武器を造る時に使うのであろう簡素な椅子に彼女は座る。そして両手の指をいじりながら、意を決した様に口を開いた。


「剣人さん、真弓さん…いえ、勇者様方」

「「……⁉︎」」


彼女の口から漏れた、『勇者』という言葉。その矛先は明らかに、剣人と真弓の2人だ。それしかあり得ない。

なぜ、なぜ。なぜ自分達をここに呼び出したゼウスしか知り得ないであろう事実を、リーリエが知っているのか。自分たちを呼び出すことがゼウス含めてお偉方何人かの話し合いで決まったのだとしても、少なくともリーリエは知らないはずである。

何故なら、ドラゴンとは言っても彼女は小さな町のしがない武器屋、しがない鍛冶屋なのだから。


「あなた方のお使いになる武器、そして鎧の役目を果たす『魔鋼服』…全て揃っております」


そう言って彼女は部屋の奥の鍵の付いた大きな箱から、細長い箱と大きな長方形の箱をそれぞれ2つずつ取り出し、剣人と真弓の前に置いた。


「どうぞ…お納め下さいませ」


彼女は恭しく膝をつき、そう言った。


リーリエ・ルベリウム


・アンスリウムを拠点とする武器屋『リリドラ』の店主

・腕利きの鍛冶屋

・客の目がないところでは静かで落ち着いた性格になる

一言で纏めると↓

武器屋で鍛冶屋なはっちゃけ武器マニアピンクツインテドラゴン


2023/03/28 加筆修正

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