第1話 始まりの日
初めまして。初心者ですので慣れない事もありますが、温かい目で見守って下さると幸いです。
それでは、お楽しみ下さいませ。
『呼び出しをくらう』。それは、学校或いは会社において、自分より立場が上の者が自分を呼びつけることである。ここでは、生徒が教師から呼び出しをくらう場合を指す。
それらは全て、教師側が生徒に対して何らかの用事がある場合のみ成立する。何かプリントを渡すだとか、話があるとか、少しばかりお説教されるとか、そんなことだ。
そして多くの生徒は、呼び出された時に自分が呼び出された理由を把握しているものである。
「あ、合唱コンクールの伴奏の件か」とか、
「あっやべ絶対提出期日のプリント忘れてるからだわ」とか、良い用事にせよ悪い用事にせよ、しっかりわかっている。生徒とはそういうものである。
そんな中で、高校生活2年目にして初めて呼び出しをくらった俺こと『霜崎 剣人』と、その幼馴染『星野 真弓』は、その理由を全く把握していないわけだが。
「…何で呼び出されたと思う?」
「………わっかんね」
幼馴染の真弓が聞いてきたので、正直に答えた。
『わからない』。そう、俺たちの胸中は正にこれに尽きるのである。
自分から言うのもなんだが、俺たちは『優等生』という枠組みにいる。
遅刻は勿論したことが無いし、提出物だって期日までには必ず出している。成績は割と上位の方だし、テストでも授業の態度でも先生方からの評価はかなり良い。精々がたまに、極たまに忘れ物をするだとか、そんなささやかなものだ。
何なら数学と理科に関しては真弓はバケモノレベルの成績である。真弓によって一体今までに何人の理系苦手民がテストの度救われたか。かく言う俺もその1人である。
クラスでは男女問わず人気があり、真弓を嫌う人間はクラスにあまりいない。優しいし、可愛いし、面倒見も良い。友達に頼られたら『仕方ないなぁ』なんて言いながらも丁寧に対応している。こう考えると、真弓はモテる要素がかなり詰まってる。真弓に告白して振られた男子の集うチャットグループが密かに存在しているのも頷ける。
そして俺はそのメンバーからあまり良い目で見られていない。彼氏だと思われているのだと思い、『別に付き合っていない』と否定するとより一層恨みの篭った目で見られた。不思議である。
対して俺は『地歴公民オバケ』なんて馬鹿げたあだ名しかつけられていない。クラスメイトからはテストの時社会に関して大いに頼りにされるが、別に誰からも好かれる人気者というわけでもない。
まぁ、現状に不満があるわけではないのだが。
自分で言うのもアレだけど、顔の造形はそんなに悪く無いと自分でも思う。しかし、中学の時も、そして今も、そんな話は一切無い。俺だって彼女の1人くらい欲しい。ファンクラブに関しては全力でお断りしたいが。真弓は告白を悉く断っているらしいが、全く不思議な話だ。あれだけ人気なんだから、彼氏の1人くらいできていてもおかしくないだろうに。
____そうじゃなくて。
今問題なのは真弓の成績や人気の高さの如何では無く、
『優等生』にカテゴライズされている俺たちが、特に先生からのプリントがどうとかそういう事もない俺たちが、何故先生に呼び出されているのかだ。『昼休み生徒指導室に来なさい』と、生徒指導部の先生からお達しがあったのだ。何の前触れもなく。何か悪い事でもしたのか?先生の機嫌を損ねる様な事をした覚えは無い。ここ最近は忘れ物なんて全くしていない。勿論、遅刻なんて以ての外だ。
「…取り敢えず、入ろっか。…何で呼び出されたのかわかんないけど」
「…あ、おう、そうだな。…本当に何で呼び出されたのかわかんないけど」
真弓の声に、俺は咄嗟に現実に意識を呼び戻す。
扉の前で『何故呼び出されたか』をいつまでも考えていたってしょうがない。先生がそういうのだから素直に従っておけばいいのだ。理由は自ずとわかるだろう。
ガラガラ、と音を立てながら生徒指導室の引き戸を開ける。
果たしてそこには_____
_____宇宙が広がっていた。
『…………………は⁉︎』
俺と真弓は声を合わせて、生徒指導室の状態に全力で驚いた。
完全に不定期投稿ですが、完結はさせます。
あとここのスペースには書ききれない設定こぼれ話でも書こうかと思います。
一応今週中には次話を投稿する予定です。