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探偵ではない重村正(かさね むらまさ)は拒絶する  作者: 佐久間零式改
人は飛ぶ夢を見るか否か
9/10

人は飛ぶ夢を見るか否か 其の二

「屋上は……ええと、屋上は確か鍵がかかっていますよね?」


 俺がこの掘っ立て小屋に流れ付いた時の事を思い返した。


 一人になれる場所として屋上という選択肢が真っ先に思い浮かんで、すぐに向かったはずだ。


 しかし、鍵がかかっていたため、屋上に出ることはできなかった。


 話によると、以前何かしらの事件が起こったため、鍵をかけて簡単に出入りできないようにしたとの事だった。


「ああ、その通りだ。屋上には鍵がかかっていて簡単には出入りできない」


「その鍵は誰が管理しているんです?」


「鍵は職員室にあって、先生方がある意味監視しながら管理していると言っても過言ではない」


「屋上の扉は常に鍵がかかっている。その鍵は簡単には持ち出せない。だから、どこにでも出入りできる幽霊が屋上にいたと?」


「そうだとは思えないかい?」


「言っていますよね? 幽霊の存在証明ができないと、屋上にいた人物が幽霊であると断定できないと」


「いや、君はそうは言っていない。幽霊の存在を証明して欲しいとしか言っていないのではないか?」


「だから幽霊の存在を証明できないと、屋上にいた人物が幽霊だったとは確定できないじゃないですか」


「いや、それができるのだよ」


 何を言っているんだ?


 俺はそう思って本から顔を上げると、のぞき込むように俺の事を見ている山名豊香と目が合った。


「存在が証明できなくても、幽霊が確認されれば『いた』事になるのではないか?」


 山名豊香がさも当然といった調子でそう述べた。


「屁理屈ですか?」


 存在が証明されていなかったとしても『目撃』されたのならば、ある意味、その存在が証明された事にはなる。


 目撃された事でその存在が認められたようなものなのだから。


「屁理屈ではない。過去、目撃された事によってその存在が証明された動物などは数多いる。誰かに目撃されなければ、その存在は未来永劫証明されないし、認知されないのだ」


 山名豊香が言わんとしている事は理解できる。


 誰かが視認しなければ、その存在はないようなものである。


 この話に関して言えば、宮信田さんが屋上にいる芹川さんらしき人を目撃した後、芹川さんが夢の中で屋上に降り立ったと話した事で、屋上にいたのが芹川さんの生き霊か、ドッペルゲンガーではないかと仮定されたのだ。


 仮定では無く、屋上にいたのが『芹川さん』であると認識されたようなものだ。


「……山名部長、あなたの思惑がようやく分かりましたよ」


 この推理の流れにはやはり違和感がある。


 違和感というよりも、何かしらの思惑のようなものが見え隠れしている。


 山名豊香の話には。


「ん? 何の話だい? よく聞こえなかったのだけど」


「俺に倣って難聴系ですか?」


「ん? 今なんて?」


「山名先輩は屋上にいたのが芹川さんの生き霊か何かだという事にしたいのですね」


 俺は上半身を前に乗り出して、山名豊香に顔を近づけて、聞き流せないような距離でそう告げた。




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