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探偵ではない重村正(かさね むらまさ)は拒絶する  作者: 佐久間零式改
絵は黙して語らぬもの
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絵は黙して語らぬもの 其の終


「あのいさにめは、いさましいにゃんこのめ、というのが短縮されていない作品名だったんですか?」


「うん、そうだよ。あのにゃんこはね、私が美術室で絵を描いていると、いつのまにか窓際にいるんだよ。甘えてくるワケじゃなく、きりりとした勇ましい顔をしてじっとこっちを見てて、私を見ているのが好きみたいで、とってもとってもとっても可愛かったの!!」


 麻生田さんはその猫の事を思い出して嬉しくなったのか、ぴょんぴょん飛び跳ねた。


「でもね……」


 急に飛び跳ねるのを止めたと思ったら、これまた急に暗い顔になって、


「あの人達があのにゃんこに酷い事をしてからは来なくなっちゃって、私も探したんだけど、見つからなくって……。だから私はあの人達に見切りを付ける意味で退部した後、あの絵を描いたの。あなた達が追い出したにゃんこは、私をずっと見ているし、あなた達がした事を忘れていないって意味を込めて」


「……なるほど」


 山名豊香は、八割は当たっていると言っていたが、全然当たっていなかった。


 麻生田さんにとって他の美術部員達はどうでもいい存在だったのだ。


 もしかしたら、美術部での友達と言える存在はその猫だけだったのかもしれない。


 友達がいなくなった麻生田さんは美術部を辞めて、友達をいじめた美術部員達を批判する意味であの勇猫目を描いた。


 その結果、美術部員達が麻生田さんを追い出したという話になり、勇猫目が美術部員達に対する恨み節のような絵などと言われたのかもしれない。


 そこで、山名豊香が関わる事になったのではなろうか。


 どんなふうに。


 どうやって。


 その思考はとある回答へと辿り着くも、確証が得られなかった。


 俺が導き出した回答が正解であるとするのならば、もっと証拠を集めなければならない。


 山名豊香の正体がなんであるのかを突き止めなければならない。


 そこに答えがあるはずなのだから。


「にゃんこもきっとどこかで幸せに暮らしているはずだって信じているからもういいの。あのにゃんこの事は。だから今を見ないといけないんだよ」


 麻生田さんはそう言って、にこやかに微笑みながら、とあるものを指さした。


 それはもちろん、大賞を取ったという麻生田さんのトリックアートだった。



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