王女様と模擬戦
訓練場に移動したテオ達に、担任の先生は告げた。
「ではこれよりお前達がどの程度なのか、模擬戦で見せてもらう」
その言葉に数名の生徒から疑問の声が上がる。
「なんでそんなことやるんですか?」
「そうですよ。別にやらなくても」
「それに模擬戦って言ったって先生とやるんですか?」
生徒の言葉に首を横に振って否定する。
「違う。やるのは生徒同士だ。それでは二人一組なってもらおう。身体強化と模擬剣の強化は使っていい。だが、正々堂々勝負するように」
「……え?」
テオは小さく、誰にも聞こえない程度の声色でそう呟いた。
だって他の生徒は顔見知りが多いみたいだが、テオは披露宴やパーティーなど積極的には参加してこなかったので友達などはいないのだ。
所謂、『ボッチ』というやつだ。
他のみんなが二人一組を組む中、必然的にはぶられる人が出て来る。
そう。王女様である。
みんなが王女様相手に勝ってしまったら、と考え遠退いていたのだ。
テオは内心面倒くさそうに、されど表面上は普通にして声をかけた。
「あの、王女様……?」
ギロリと睨まれるテオ。
そして睨んだまま何も言おうとしない王女、もといアリスティア。
「もし組むお相手が居なければ、俺で良ければしますが? てかくほかにもう組む人いなさそうですし……」
そう言って辺りを見渡すテオ。
すでに組んだのか、何やら話しているのが分かる。
そしてチラチラとテオとアリスティアを見て話していたが、どうでもよかったので知らない振りをした。
「ならお願いするわ」
「ありがとうございます」
お礼をするテオ。
生徒が二人一組を組んだことを確認する先生は、口を開いた。
「よし。ではこれより始めてもらおう。最初は~……」
周囲を見渡し誰にしようか迷っている先生。
生徒たちは少し緊張しているようにも見える。
そこへ先生の視線がテオとアリスティアに向いた。
「アリスティアとテオのペアにやってもらおう」
「わかりました」
「はい」
テオとアリスティアが返事を返し、生徒たちは最初に指名されなかったことに安堵しているようだった。
まあそんなものだろう。
そう考えながらも、テオとアリスティアの二名は模擬剣を構え向かいあった。
テオは同学年の人がどの程度出来るか知らないため、どの程度の力加減でやろうか考え、目の前のアリスティアの実力を見据える。
(構え方も綺麗だ。相当練習したのだろうな。まあ、1000分の1程度でやれば良い感じか。あまり目立っても仕方がいから少し派手に負ければいいか)
「――始めっ!」
先生の合図が下されたのと同時、アリスティアが身体と剣の強化を使い、一気に間合いを詰めた。
「はぁぁあ!」
テオからすればとてもゆっくりで遅い攻撃だ。
待っている間にも欠伸が出そうになってしまう。
どうしようか考え、ギリギリのところで避けることにした。
表情は少し焦った感じにして何とか捌くことが出来た感じする。
「わっ!?」
同時に剣を振るい、キンッという小気味よい音が鳴り響き、防ぐことに成功した。
少し距離を取ったアリスティアは口を開いた。
「良く反応で来たわね」
「たまたまだよ。それにしても凄く速かったよ」
「……そう。ありがとう」
そのまま接近されギリギリで避けたり捌いていたりと続き、最後にはテオの剣を弾き飛ばされ首筋に突き付けられた。
「降参です」
両手を上げて降参する。
「終わりだ。二人ともよくやった。テオに関しては良くアリスティアの剣を捌けたな」
「ははっ、まぐれですよ。にしてもアリスティア様の剣は凄かったですね」
「これくらい普通よ。姉様に比べたらね」
そう言ってアリスティアは生徒たちがいる方へと戻っていき、テオも慌てるようにして戻るのだった。
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