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ノワールは恐れない

「ノワール――いや、テオ。貴様が我らの組織に歯向かう者達のリーダーか」

「ああ、その通りだ」


 ガルフの言葉に肯定するテオ。


「良いのか? あっさり肯定して?」

「問題ない。どうせ貴様はここで死ぬ」

「ふん、抜かせ。俺がここで貴様を殺す!」


 剣を構えるガルフはテオへと殺気を放つ。

 常人の者ならば、この殺気を浴びただけで実力差を思い知り降参するだろう。

 だがノワールはどうだろうか?


 ガルフの殺気を浴びてなお平然としている。


「この程度は耐えるか」

「……何かしたのか?」


 殺気を浴びてノワールが気が付ないはずはない。

 ただ単に、弱すぎてそよ風にも感じないからである。


「そうか」


 それだけ呟くと、ガルフはノワールへと接近し剣を振るった。

 が、それはいとも簡単に防がれてしまう――否。流された。


 それでもガルフの剣撃は止まるところを知らない。

 何回も何回も攻撃を繰り出す。

 ガルフから放たれる剣は訓練された魔剣士でも避けるのは難しいだろう。


 伊達に近衛騎士団長を任されてはいないのだから。


「避けるのだけは上手いようだな」

「遅いのでついつい欠伸が出てしまう」

「ふん、生意気を!」


 身体を強化したガルフの振りがさらに過激さを増す。

 それでもなお避け続けるノワール。


「何故だ! 何故当たらない!」


 攻撃が掠りもしないことに驚きの表情を浮かべるガルフ。


「ふむ。少し見込み違いだったようだな」

「見込み違い、だと……?」


 ガルフの言葉にテオは口を開く。


「その通りだ。もう少しやってくれるとは思っていたが、所詮はこの程度か」

「何を! 貴様は攻撃できないでいるではないか!」

「ならしてやろう」


 ガルフの繰り出された攻撃が弾かれる。

 そのまま強化されたノワール剣が、ガルフの剣を粉々に砕いた。


 剣の破片が宙を舞い地面へと落ちる。


「――なっ!? これは最高峰の金属で作られた剣だ! そうやすやすと粉々に出来るはずが……」


 そしてノワールは漆黒の剣をガルフの喉元へと突き付けた。


「さて。何か言い残すことはあるか近衛騎士団長殿?」

「ぐっ……」


 流石に得物である剣が失われた今、抵抗する手段がなくなったガルフには勝ち目が無かった。

 元から勝ち目は無かった戦いであったが。

 そもそもこれを戦いと呼んでよいのかという疑問すらのこってしまう。


 それだけ圧倒的な実力差。

 言えばノワールはガルフという子供を相手にしているようなものだからである。


 聞かれたガルフはノワールへと尋ねる。


「ノワール。一体、ドグマと敵対して何が目的だ? 地位か? 金か? 女か? それとも――領土か?」

「何も。我らはただ我らの成すべきことをするまで。それに立ちふさがるなら、誰だろうと容赦はしない。それがドグマであろうとだ」

「ドグマの根は深いぞ?」

「ならば潜ろう。たとえそこが地獄のさらに底の深淵であろうと」

「ドグマは強大だ。貴様等などすぐに滅ぶに決まっている。ドグマは敵対者には容赦はしない」


 仮面越しに暗い笑みを浮かべるテオ。


「――我らは我らの敵を許しはしない。陰の敵の全てを滅ぼし尽くそう」

「それをして何を成す?」

「陰の支配、それだけだ」

「強欲じゃないか? まるで世界の半分を自分の物にするようじゃないか」


 ガルフの言葉にテオは嗤った。

 その笑みはガルフの言っていることが本当かのように……


「強欲の何がいけない? 世界の陰を支配し秩序を作る。その計画に貴様らの組織が邪魔なだけだ。邪神の復活? 笑わせるな。この世界に神など必要ない」

「神をも恐れないか」

「敵というなら神だろうと殺すまで」


 そこまで聞くと、もう何も聞くまいと目を閉じるガルフ。

 これ以上は何も喋る気はないのだろう。


「――さよならだ。ガルフ」


 ガルフの首が地面に落ちた。


「……行くぞ」

「はっ」


 こうして二人の影は消え去るのだった。





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