ネグロヘイム
テオがヴァイスを仲間にして一年。
気が付けば配下は六人増えていた。
一人目がエルフの白髪が特徴のヴァイス。
二人目が赤い髪が特徴の人間の美女ルージュ。
三人目が緑色の髪を一本に結っている美青年のグリューン。
四人目が白髪碧眼の狼の獣人の美少女イリス。
五人目が金髪紅眼の人間の美少女ティスラ。
六人目が青髪紫眼の人間の美青年エイデス。
この六人は同様に里を追い出された者や迫害を受けた者達であった。
みんな秘めている魔力量が多い。
「テオ様、皆を集めました」
ヴァイスの言葉に、テオは椅子に腰をかけながら頷く。
テオの前には跪く六名の姿。
「今回皆を集めたのは、あることを伝えたいからだ」
「あることとは一体?」
テオは自らが調べたことを話す。
「この世界に伝説、御伽噺となっている物語があるのは知っているな?」
「はい」
ティスラが語った。
「遥か昔、一人の英雄が現れた邪神を倒し、世界を救ったという御伽噺ですね?」
「ティスラの言う通りだ」
「獣人にも同じく伝わっています」
「エルフも同様に。ですが、それがどうかされたのでしょうか?」
ヴァイスの言葉にテオは頷いた。
「この前の夜、俺が街外れの村まで行ったのだが、【ドグマ】を名乗る複数人の魔剣士が、村の住人らを、『邪神復活への供物になるのだ』と言って、虐殺しているところに遭遇した。まあ一人だけ残して殺し、残った奴に話を聞こうとしたが、尋問する前に毒で自殺したがな。そこで、だ。お前達、【ドグマ】について何か情報はないか?」
その言葉に、エイデスが口を開いた。
「テオ様、私に心当たりが……」
「エイデス本当か?」
「はい」
「イリスもです」
イリスも同じようだ。
二人は説明する。
先にエイデスが話す。
「はい、私も以前に【ドグマ】を名乗る者等と遭遇しました。テオ様同様に、吐かせようとしましたが毒で自殺を……」
「イリスもエイデスと同じです」
二人ともテオと同様にドグマの連中と遭遇したらしい。
「……そうか」
顎に指を置いて考えるテオ。
「いかがなさいますか?」
ヴァイスが尋ねた。
テオはすぐに答えを導き出した。
「――我らはドグマに対抗する」
「では人員を集めた方が?」
「頼む。それと組織名がまだだったな。と、その前に話しておこう」
テオの言葉に同意するように頷く六名。
そうしてテオは口を開く。
「ドグマという組織は面には出てきていないが、組織としての規模はデカいだろう。それに邪神の復活は必ず阻止しなければならない、最重要事項だ。だからこちらもドグマに対抗するため、ヴァイスの言う通り、配下となる人員を集めることにする。それをお前達に行ってもらいたい。頼めるな?」
六人は「勿論です」と頷いた。
「頼んだ。では、次に決めていなかった組織名だ」
ヴァイス達はテオを注視する。
「名は――【ネグロヘイム】。そして心に刻め」
テオは自身にも言い聞かせるようにして、六人にへと告げる。
「我らは悪でなければ正義でもない。目的は邪神復活の阻止と――裏世界を支配する陰の支配者だ。裏世界の秩序を我らの手で築き上げ、それらを乱すものは誰だろうと容赦はしない!」
テオに低く奈落の底から響く様な声に、ゾワッと肌を震わす六名の配下達。
そして同時に「御意!」と声を張り上げ、主であるテオの言葉を己の心へと刻んだ。
「そしてこれからは俺の事を『ノワール』と呼べ」
テオの言葉に六名は「はっ!」と頷いた。
「では命令だ。新たな配下の確保とドグマについての情報及びアジトの所在を突き止めろ」
こうしてネグロヘイムは動き始めるのだった。
――世界の命運を分ける、陰での戦いが今、幕を開けた。
明日の更新は朝します!
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