新たな配下
おはようございます。
今日も一日頑張りましょう!
テオはエルフの少女へと歩み寄り声をかけた。
「大丈夫か?」
先程とは違う優しい声色に安堵する少女。
次の瞬間、少女へと手をかざしたテオ。
すると少女の身体に出来ていた傷がみるみるうちに癒えていく。
「き、傷が、治って……」
驚き目を見開く少女は、慌てて答えた。
「は、はい。その、あなたは……?」
「俺はテオだ」
名前を告げた瞬間、目の前の少女はテオの前に跪いた。
「テオ様、この度は助けていただきありがとうございます」
「ああ、じゃあ俺はこれで」
その場から去ろうとするテオを、少女は引き留めた。
「お待ちください!」
「まだ痛むか?」
「いえ。その……どうして私を?」
少女の質問にテオは答えた。
「助けの声を聞いてしまった手前、見捨てることはできなかった」
「そうでしたか。その宜しければ少しお時間を頂けますか?」
少し迷ったテオだったが、何があったかを聞いた方が良いと判断し、話を聞くことにした。
「良いだろう」
場所を移動し、屋根の上へと来た。
テオと少女が移動して少し、騒ぎに気が付いた兵が男達の所へと集まっていた。
それを尻目に少女の話を聞くことに。
「改めて。この度は助けていただきありがとうございます」
頭を下げ、少しして顔を上げ続ける。
「私はエルフの国の里を追い出され、この国へと流れつきました」
「……まだ子供なのに、か?」
「はい」
俯く少女。
もしかして、と思ったテオは追い出される原因を告げた。
「……その髪が原因だな?」
なんで分かったと驚く少女。
「エルフは金髪と聞くが、お前の髪は白色だ」
「その通りです。私はこの髪のせいで、忌み子として追い出されました」
「……名前は?」
少女は言おうとしたが言葉を呑んだ。
居住まいを正し、再びテオへと跪いて口を開いた。
「もし御不快でなければ、テオ様の配下として頂きたいと思います」
突然の発言であったが、テオには配下が必要だった。
「……いいのか?」
「はい。テオ様はこの髪を忌避していません。それに、私はテオ様に命を救われました。一生を尽くさせていただきたいのです」
テオが目を見つめると、その目は真剣そのものだった。
「……わかった。お前を俺の配下として向かい入れよう」
「ありがとうございます。では配下となった暁に、名を頂ければと思います」
「前の名前は?」
「忌み子として里から追放された私には、前の名など不要です。新たに頂ければと思います」
それは彼女にとっての決断であった。
その意味を理解したテオは頷いた。
「わかった。ではお前に名をやろう。新たな名――『ヴァイス』。これからはそう名乗るいい」
「ヴァイス……ありがとうございます。この命、テオ様に尽くさせていただきます!」
「ああ、働きを期待している」
テオはこの世界に来て初めて配下にしたエルフの少女、ヴァイスの手を取るのだった。
夕方か夜にもう一話投稿します!