帝王
「あなたは……」
目の前のエルフを見てそんな声が漏れる。
だが目の前のエルフは周りに指示を出す。
「あの人が来る前にさっさと片付けますよ」
声に応じて現れる四名の黒衣の者達。
その手には黒い剣を携えて。
黒衣の集団の戦闘は圧倒的であった。
相手の攻撃を読んでいたとばかりに躱し、一撃で仕留めていた。
騎士団が苦戦していた魔剣士達が、たった数秒で物言わぬ骸と成り果てた。
「これで終わりね?」
「ええ。ですが、奴はどうしますか?」
反対方向へと背を向けて逃げ去ろうとしている黒幕へと向けられる視線。
フェリシアが口を開く。
「早く奴を追わなくてはいけません! あの者が黒幕です! 早く追い駆けて――」
「五月蠅いですね」
「――ッ!?」
言葉と共にフェリシアや騎士団へと放たれるプレッシャー。
「な、何故追わない! 奴等は――」
「聞こえなかったのですか?」
「ッ――……」
向けられ放たれるプレッシャー。
フェリシアは察した。この者達と戦ったところで自分達では勝てないと。
それだけの実力差はあると分かってしまったのだ。
「それで、どうするのよ?」
「あの人が時機に来るわ」
「なるほど。それに奴は……」
「そうでしたね」
フェリシアには何を言っているか分からなかった。
――その時は来た。
一瞬で場の空気が一変した。
胸が苦しくなるような、物理的な圧力さえ感じるほどのプレッシャーが場に振りかかった。
「な、なん、ですか、これは……?」
騎士団の面々はすでに地面へと膝を突き。青ざめた表情でガクガクと震えていた。
「来ましたね」
先程のエルフが呟いた。
「――我等が主、“帝王”が」
逃げた人物もその場のプレッシャーを感じ取り立ち止まった。
「な、なんですか、このプレッシャーは!!」
そして深淵の底から響く様な低い声が聞こえた。
「逃げられると思っていたか?」
見れば黒幕のすぐ真後ろに、全身に黒を纏った人物が立っていた。
よく見ればコートを着てフードを被っており、顔全体が隠れる仮面を付けている。
フェリシアはその自分を見てわかった。
強いと。それも自分以上で圧倒的に。
「クソッ!」
「逃がすわけがないだろう」
剣閃が煌めいた。
遅れてその人物、ミハエルの首が落ち胴体も地面へと倒れた。
気が付けば辺りには多くの血で、むせ返るような臭いとなっていた。
「所在は掴めているな?」
「はい。屋敷におります」
「では移動する」
「はっ!」
ようやく消えたプレッシャー。
そこへフェリシアが問いかけた。
「何をしようとしているのですか!」
「……貴様等は知らなくて良い」
「なら教えてください。あなた達は一体何者なのですか? 敵ですか? それとも味方なのですか?」
騎士達が剣を向け、臨戦態勢を取る。
フェリシアの質問に黒衣の人物は答えた。
「我が名はノワール。そして我等はネグロヘイム。闇を滅ぼし、陰に秩序をもたらす者」
そう言い残し消え去った。
「ノワールにネグロヘイム。あなた達は一体何をしようと……」
消え去ったノワール達を見て、フェリシアはそう呟くのだった。




