夜の街で
誰もが寝静まった夜。
テオは黒い外装を身に纏い、夜の街を屋根伝いに移動していた。
足音と気配を消し移動していると、テオの気配察知に複数の魔力の反応があった。
その中でも一際大きな魔力が一つ。
「何だ?」
思わずそう呟いてしまうが、自分の目で見ないことには分からないこともあり、一度その場所に向かってみることに。
反応があった場所から少し離れた場所に着き、魔眼を発動する。
この魔眼だが、帝王として向こうで生きていた時に手に入れたモノであったが、こちらの世界でも同じく発現できたことに驚いていた。
それもそのはず。この世界には魔眼といったモノが存在しなかったのだから。
魔眼を発動し凝らして見ると、そこにはボロ布に身を包まれながら複数人に叩かれている人がいた。
どうやら大きな魔力を感じ取ったのは、そこの叩かれている人物からであった。
その人物が蹴り飛ばされ被っていたフードが外れ、素顔が露わになった。
白く長い白髪に尖った耳。
エルフは金髪と聞いていたテオは驚きで目を見開いた。
「おいおい、スラムのガキかと思ったらエルフのガキじゃねぇーか」
一人がそう呟き表情に笑みが浮かんだ。
「エルフは高く売れる。売っちまうか」
「その前に女だぜ? こっちは不快な思いをしたんだから、少しは楽しませてもらわないとな~?」
「良い事いうじゃねぇーか」
下卑た視線が彼女を見下ろす。
テオの耳に、少女の小さな呟きがハッキリと聞こえた。
「誰か、助けて……」
そして目から零れ落ちた涙。
男たちが彼女の白く美しい髪を掴もうとして――その手が宙を舞った。
「……は? え?」
少女に触れようとして突然腕が飛んだことに驚く男たち。
そして腕が切断されたことで襲って来る激痛。
「う、うでがぁぁぁぁぁぁあ! 俺の腕がぁぁぁあ!」
喚き散らす男の首が飛んで崩れ落ちた。
「何が起きて――」
男たちは口を噤んだ。
否、閉ざさるを得なかった。
それは暗い路地の奥から聞こえる足音によって。
コツコツと次第に近づく足音。
次第に暗い路地奥から人の姿が現れる。
――黒い。
見た誰もが思った感想だった。
それは少女も例外ではない。
黒い外装に身を包む男――テオは、低く深淵から発せられたかのような声色で男達に問う。
「一人のか弱い少女をいたぶるのがそんなに楽しいか?」
「だ、誰だ、貴様!」
「誰だって良いだろう。助けの声が聞こえたのでな」
「助けの声だぁ? それよりもよくも俺の仲間を!」
恐怖で振るえていた少女だったが、テオの「助けの声」と聞いて顔をそちらに向けた。
その者、テオの顔はフードに隠れていて表情は見えない。
男は腰の剣を抜きテオへと構えた。
「今更命乞いしても遅いからな!」
そう言って襲い掛かる男達はそのままテオを通り過ぎた。
遅れて男達の首がズレ落ち血飛沫を上げながら崩れ落ち、地面には血の染みが広がるのだった。
べ、別に評価とブクマをして欲しいわけじゃないんだから!
……ぜひ評価とブクマを!!!!




