表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/69

食べ歩き

 魔剣大会が終わり帰宅となった。

 テオ達も少し話して解散となったのだが、帰ろうとするテオをアリスが呼び止めた。


「テオ、ちょっといい?」

「どうした?」

「このあと時間あるかしら?」


 特に予定もないテオは頷いた。


「なら少し付き合ってちょうだい」

「まあ構わないが」


 アリスの後に付いて行きどこに行くのかを尋ねる。


「何処に向かっているんだ?」

「もう少しよ」


 聞いてもはぐらかされ、聞くことを諦めるテオ。

 だが、アリスが向かうのは中央広場だった。


 日が傾き出したのに未だに多くの人が行き来している。

 中央広場にはベンチがあり、そこへアリスが座る。


 アリスが「あなたも座りなさい」と促すので隣に座る。

 アリスは何も喋らないが、しばらくして口を開いた。


「私、悔しかった」


 何が? とは問わない。

 それが何を指しているのかテオにはわかっていたから。


 アリスは続ける。


「私ね、姉様みたいに強くなりたくて頑張ってたの。でも姉様の実力を目にして分かった。あれは天才、才能なんだって」


 そこまで言うとアリスは悔しそうに拳を握りしめた。


「システィールと剣を交えてわかった。あれも姉様と同じ、才能だってね。平凡の私には勝てないのよ」


 そこでやっとテオは口を開いた。


「天才は存在する。でも、アリスの姉であるフェリシア様や今日戦ったシスティールさんは違うかもしれない」

「……え?」


 テオの言葉に顔を向ける。


「才能だったとしても、努力せずに人は強くなれない。俺の姉さんが良く言っている言葉だよ」

「でも!」

「才能が憎いか?」

「…………」


 アリスは答えない。

 憎いのかがわからないのだろう。


 テオは続ける。


「なら努力すればいい。天才達よりも多く努力して挫け、なおも努力して天才にしがみ付き、そしていずれは天才を超える、それが平凡ってやつだろ?」

「……何よそれ」

「凡人が天才に勝つには努力する。それだけだよ。俺も姉さんにこっぴどく鍛えさせられているよ。今日も帰ったらきつく言われると思うけどな」


 そう言ってアリスへと笑みを浮かべて言ったテオ。


「努力、ね……」

「ああ、俺は程々にしておくけどな」

「なんでよ!」


 自分は努力しないと言われたアリスは、ついテオに向かってツッコミを入れてしまう。


「どうだ? 少しは楽になったか?」

「……何よ、もしかしてそれが目的だった?」

「自分から言っておいてそれか? 傷付くぞ」

「え、あ、いや、そうじゃなくて……その、ありがとう。慰めてくれて」

「気にするな。それよりも何か食べるか? 丁度露店も多いくことだし」

「そうね」


 そうしてテオとアリスは露店の物を食べ歩くのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ