食べ歩き
魔剣大会が終わり帰宅となった。
テオ達も少し話して解散となったのだが、帰ろうとするテオをアリスが呼び止めた。
「テオ、ちょっといい?」
「どうした?」
「このあと時間あるかしら?」
特に予定もないテオは頷いた。
「なら少し付き合ってちょうだい」
「まあ構わないが」
アリスの後に付いて行きどこに行くのかを尋ねる。
「何処に向かっているんだ?」
「もう少しよ」
聞いてもはぐらかされ、聞くことを諦めるテオ。
だが、アリスが向かうのは中央広場だった。
日が傾き出したのに未だに多くの人が行き来している。
中央広場にはベンチがあり、そこへアリスが座る。
アリスが「あなたも座りなさい」と促すので隣に座る。
アリスは何も喋らないが、しばらくして口を開いた。
「私、悔しかった」
何が? とは問わない。
それが何を指しているのかテオにはわかっていたから。
アリスは続ける。
「私ね、姉様みたいに強くなりたくて頑張ってたの。でも姉様の実力を目にして分かった。あれは天才、才能なんだって」
そこまで言うとアリスは悔しそうに拳を握りしめた。
「システィールと剣を交えてわかった。あれも姉様と同じ、才能だってね。平凡の私には勝てないのよ」
そこでやっとテオは口を開いた。
「天才は存在する。でも、アリスの姉であるフェリシア様や今日戦ったシスティールさんは違うかもしれない」
「……え?」
テオの言葉に顔を向ける。
「才能だったとしても、努力せずに人は強くなれない。俺の姉さんが良く言っている言葉だよ」
「でも!」
「才能が憎いか?」
「…………」
アリスは答えない。
憎いのかがわからないのだろう。
テオは続ける。
「なら努力すればいい。天才達よりも多く努力して挫け、なおも努力して天才にしがみ付き、そしていずれは天才を超える、それが平凡ってやつだろ?」
「……何よそれ」
「凡人が天才に勝つには努力する。それだけだよ。俺も姉さんにこっぴどく鍛えさせられているよ。今日も帰ったらきつく言われると思うけどな」
そう言ってアリスへと笑みを浮かべて言ったテオ。
「努力、ね……」
「ああ、俺は程々にしておくけどな」
「なんでよ!」
自分は努力しないと言われたアリスは、ついテオに向かってツッコミを入れてしまう。
「どうだ? 少しは楽になったか?」
「……何よ、もしかしてそれが目的だった?」
「自分から言っておいてそれか? 傷付くぞ」
「え、あ、いや、そうじゃなくて……その、ありがとう。慰めてくれて」
「気にするな。それよりも何か食べるか? 丁度露店も多いくことだし」
「そうね」
そうしてテオとアリスは露店の物を食べ歩くのだった。




