アリスティアVSシスティール
先に動いたのはアリスだった。
自らが出せる最高速度でシスティールへと迫った。
アリスの剣先がシスティールへと迫ったが、体を右に僅かに傾けることによって顔の横を通り過ぎた。
アリスの攻撃をかわしたシスティールは、そのまま手に持つ剣をアリスへと振るった。
綺麗な剣に見惚れそうになるが、身体を無理やり捻ることによって回避した。
そのまま跳躍し後方へと下がり、一度態勢を整えるのだが……
「――ッ!?」
気が付けばシスティールは目の前まで迫っていたのだ。
「はぁあっ!」
システィールの声がアリスの耳に届く。
振るわれる剣だったが、アリスの体は勝手に動いており剣を弾き返したのだ。
「まだよ!」
そのまま攻撃に転じるアリスであるが、システィールの表情が一瞬笑ったのに気が付いた。
「罠だな」
一連の流れを見ていたテオは小さく呟いた。
(――しまった!)
アリスが気が付いた時にはすでに遅かった。
振るわれるアリスの剣を、システィールは弾きカウンターを淹れる。
「――ッ!!」
無理やり体を捻りシスティール剣先がアリスの頬を掠める。
完璧に決まったと思っていたカウンターを避けられたことに、驚きで目を見開くシスティール。
「まだよ!」
アリスは崩れた体勢のまま剣をシスティールへと振り上げた。
「――ッ!?」
身体を仰け反らせることで、アリスの放った一撃はシスティールの服を僅かに切り裂いた。
互いに距離を取り見つめ合う。
そこでシスティールがアリスに向けて口を開いた。
「やりますね。アリスティア様」
「“様”なんてやめて。今、この場では私とあなたは対等の立場よ」
「……そうね。でも驚きました。まさかあのカウンターを避けられるとは」
「そう。ならもっと驚くことになるわ」
「楽しみです。アリスティア」
次に動いたのはシスティールだった。
低姿勢で物凄い速度で迫るシスティール。
その速度は開幕のアリス以上のものだった。
「――ッ!」
剣を振るうが、システィールはそれを躱し攻撃をする。
それから二人の剣での応酬は続く。
確実に回避し弾くアリスとは違い、まるで踊るかのような、舞を披露するかのようなシスティール。
その姿は正しく【舞姫】。
その二つ名に恥じない動きであった。
それから数分の間続く剣と剣の応酬。
激しい剣閃が闘技場の中央にて煌めく。
「くぅっ!」
アリスから声が漏れる。
実力は明白。
誰から見てもアリスは追い詰められていた。
それでも諦めを見せないアリス。
「まだ、まだよ!」
そんなアリスの言葉を聞いてシスティールの表情に笑みが浮かぶ。
「何が可笑しいの?」
馬鹿にされたと思って言った言葉だったが、システィールは首を横に振って否定した。
「違いますよ。ただ、こうも熱い戦いをしたのは久しぶりだったので、つい」
「そう。光栄ね」
「私も負けるわけにはいきません!」
システィールの攻撃に苛烈さが増した。
どんどんと一歩、また一歩と足を後退させていくアリス。
そしてついに、アリスの剣がシスティールの一撃によって弾き飛ばされ宙を舞った。
突き付けられる剣先。
「――うっ」
決着が付いた瞬間だった。
アリスは両手を上げる。
「参ったわ。私の負けよ」
こうして決勝はシスティールの優勝となるのだった。




