ドグマが狙う者
数日後の夜。
セシルがテオに言ってきた。
「テオ、最近アリス様と仲が良いらしいわね?」
「どこでそれを聞いたの?」
「どこって、アリス様から聞いているでしょ?」
「ああ、そういうことか。アリスが姉さんと一緒に訓練しているって」
「そういうこと」
そこへテオの妹、エリナが混ざってきた。
「お兄様、アリスティア様と仲がよろしいのですか?」
「ああ、アリスとは同じクラスだからね」
「お兄様と同じクラスだなんて羨ましいです」
「エリナが学園に入学する頃には俺はもう3年生だな」
「一緒に学園生活を楽しみたかったです」
シュンとするエリナの頭を撫でるテオ。
するとエリナはふにゃっと表情を崩し笑みを浮かべる。
「何よエリナ。私と一緒じゃ嫌なの?」
「だってお姉様は厳しいですから。それに比べてお兄様は優しいので大好きです!」
ギュッと抱きつくエリナ。
撫でながらテオがセシルの方を見ると、眉がピクピクと動いていた。
「ほらエリナ、お姉ちゃんにもギュッてしても良いのよ?」
両手を開いて「ほらおいで〜」とするセシルだったが、肝心のエリナは姉よりも兄であるテオの方が良かったようだ。
一度顔を向けるも、すぐにテオの胸へと顔を埋めた。
「……なんかごめん、姉さん」
「そ、そんな哀れんだ目で私を見るな〜~っ!」
セシルはそう言って自室へと走り去ってしまった。
「ほらエリナ、後で姉さんのところに行って甘えて来い」
「わ、わかりました……」
それからセシルの所に行ったエリナは、数時間離してもらうことはなかったのだった。
皆んなが寝静まった夜。
テオの下にヴァイスがやって来た。
「テオ様、よろしいでしょうか?」
「どうした?」
テオの前に跪いたヴァイスは口を開いた。
「はい。ドグマが第二王女である、アリスティアを狙っている可能性が御座います」
「……本当か?」
「はい。我々がドグマのアジトを襲撃した際、資料にて発見いたしました」
「連中、何故アリスを狙っている?」
「それが――……」
ヴァイスはアリスが狙われている理由を話した。
「狙っているのはアリスティア様の『血』です」
「血?」
「はい。王族の血には、かつて邪神と戦ったとされる英雄の血が流れています。それを使って邪神復活の研究をしようと企んでおられるのかと」
「そうか」
テオはただ一言そう返し顎に手を置き考えるも、すぐに結論が出た。
そしてヴァイスへと命令を下す。
「手の空いてる者でアリスの監視をしろ。必ず二名は付けろ」
「はっ!」
だがまだ立ち去らないヴァイス。
疑問に思いテオはヴァイスに声をかける。
「どうした?」
「いえ、なんでもありません」
「何かあったか?」
テオの言葉にヴァイスは顔を上げ、口を開いた。
「はい。学園は楽しいでしょうか?」
「そうだな……割と退屈はしない良い所だ」
「それは何よりです」
「ああ。それだけか?」
「はい。個人的に気になっていましたので」
「そうか」
「では私はこれにて失礼します」
そうしてヴァイスは闇に解けるかのように姿を消すのだった。




