新たな友人
テオが学園に向かう途中、兵士達の会話が耳に入ってきた。
「聞いたか? 昨夜すぐ近くの洞窟が崩壊したって話」
「なんだそれ? 初耳だな」
その兵士は説明した。
「なんでも裏の組織の潰し合いだったらしいぞ」
「マジかよ。てかお前どこでその情報を仕入れてきたんだ?」
「上層部が話しているのを聞いちまったんだ。しかもその争った二つの組織は名前が分かってないらしい」
「へ~、物騒な世の中だな」
「だな」
話しながらテオの横を通り過ぎていく兵士。
テオは頭の中で考える。
(昨夜の事が国の上層部の耳に入ったか。思ったより早かったな。バレないとは思っていなかったが……洞窟を崩壊させたのは正しかったか。少しこの国の情報が欲しいところだ)
そこでテオは人目のつかない場所へと移動し指を鳴らした。
「テオ様、ご用件は?」
現れたのは組織の者だ。
六影ではない。
声からして女性である。
「昨夜の件が上層部に伝わるのが早すぎる。この国の貴族の中にドグマと関係がある者がいるはずだ。探れ」
「御意」
姿を消す配下。
テオは何事も無かったかのようにそのまま学園に向かった。
教室へと入り席に着くと、アリスティアがテオに声をかけてきた。
「おはようテオ」
「ああ、おはようアリスティア」
「……アリスでいいわ」
「え?」
「だからアリスって呼んで。セシルの弟だから別に構わないわ」
「そう? ならアリスと呼ばせてもらうよ」
「え、ええ……」
少しアリスの頬が赤くなったように見えたが、テオは気付かなかった。
他の女子や男子がアリスへと挨拶をしてくる。
「おはようございます、アリスティア様。今日も麗しい」
「ええ、ありがとう」
事務的な会話になっているが、テオは気にしない。
しばらくして授業が始まる直前、テオへと声をかけてくる男子がいた。
「なあテオ、でいいだよな?」
「ん?」
顔を上げると、そこにいたのは赤い短髪に赤い瞳をする青年がいた。
「誰だっけ?」
「まだ始まって間もないし覚えていなくても当然か」
そう言って笑みを浮かべる青年。
そして青年は自己紹介をした。
「俺はヴェルメリオ・スカラート。スカラート伯爵家の三男だ。気安くヴェルって呼んでくれ」
「テオ・オスクルだ。オスクル子爵家の長男だ。俺の事もテオで良いよ。よろしく」
テオは手を差し出した。
ヴェルは差し出された手を握り返した。
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
そこへ丁度先生が入ってきた。
「じゃあまた後で話そうか」
「ああ」
そうして授業が始まったのだった。
昼休みとなり、テオの下にヴェルが来た。
隣には女性一人と男性一人がいた。
「ヴェル、その二人は?」
「テオに紹介しようと思ってね」
女性が前に出て自己紹介する。
「はじめまして。私はリーリア・パルメルです。パルメル男爵家の次女です」
ピンク色のボブカットでピンクの瞳をした美少女。
見た目の印象は優しい感じの印象を受けた。
「テオ・オスクルだ。家は子爵だ。テオで良いよ。よろしく」
「よろしくお願いします。テオ君」
「俺はヴェント・グリュック。グリュック子爵家の長男だ」
「テオだ。よろしくヴェント」
握手を交わすテオ達。
これから一緒に食堂へ行こうとなったが、テオは背後からの視線が気になり振り向いた。
「どうしたアリス?」
「別に何でもないわ」
「……そう? これから一緒に食堂に行くけど一緒にどう? みんなもいいよな?」
振り向き尋ねると大歓迎と言っていた。
「大歓迎だよ。食事はみんなでした方が楽しいからな。アリスティア様もどうです?」
ヴェルの言葉に乗りテオも「どう?」と聞くと頷いた。
「なら同席させてもらうわ」
「「「喜んで!」」」
アリスの言葉に、ヴェルとリーリア、ヴェントは笑顔でそう返事を返すのだった。
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