転生した異世界の帝王
追放ざまぁは無しの異世界転生ものです。
楽しんでいただけたら幸いです!
漆黒の城の玉座にて、肘掛けに頬杖を突いてつまらなさそうに、退屈している人物が一人。
圧倒的な実力と力を持って、世界を支配したその者の名は、畏怖と畏敬の念を込めてこう呼ばれた……
――【黒の帝王】と。
帝王が世界を支配して数百年。
争いもなく平穏な日々が続いていた。
「――つまらぬ」
ただ一言、帝王はそう呟いた。
その言葉にビックと体を震わせ、顔を青くする配下達。
一人が帝王へと尋ねた。
「発言の許可を」
「許可する」
「帝王様、先程の「つまらぬ」とは一体どういうことでしょうか……?」
配下の質問に帝王は答えた。
「争いもなく、人は死なない」
「……良い事なのでは?」
「確かにそう望んだ。だが、何も争いも起きないこの世界に、果たして俺は必要なのだろうか? 刺激がなく退屈しているのだ」
「帝王様が居たからこそ作れた、誰も死ななくて済む平和な世界です! 何を仰いますか! 我々にはまだ帝王様が必要です!」
「本当にそう思うか?」
帝王は続ける。
「この世界を作る為、俺は多くの者を殺してきた。みんなからすれば俺は恐怖の象徴だろう」
「で、ですが――」
「誰も俺に挑んでこようとする奴もいない。俺は――戦いに飢えているのだ」
配下達は何も言わない。
そのまま帝王は続ける。
「だから思った。平和のために世界を支配するという目的を成した今、やることが無くなった。人々は争いが無くなったこの世界において、平和に暮らしている。文明の発展もした。ならば帝王である俺はもう必要ない。この世界には、俺が最も信頼するお前達もいるのだから」
「何を言っているのですか!」
「お前達がやってきたことは知っている。お前達が居れば、これから先もずっと平和が続くだろう。だから俺は――新たな世界へと“転生”することにした」
「転生、ですか……?」
「ああ、前から準備してきたことだ。あとはお前達の好きにするといい」
そう言って帝王は玉座を立ち上がった。
止める声が聞こえてくるも、振り返ることもせずにそのまま玉座の間を去って行った。
玉座の間を去った帝王はある部屋へと向かった。
配下すらも知らない、帝王しか知らない秘密の部屋。
魔力を流すことで隠し扉を開け部屋に入ると、そこに巨大で幾つもの小さな幾何学模様が折り重なった、魔法陣が描かれていた。
研究を続けやっと完成した、一度限りの大魔法――【転生魔法】。
一度発動してしまえば、この魔法陣は消える仕組みになっている。
配下が自分の後を付いてこないようにするためである。
魔法陣の中央に立った帝王は体内の膨大な魔力を魔法陣へと流し始めた。
この世界に思い残すものは何もない。
今日をもって、帝王の支配は終わるのである。
魔力を流し始めてすぐ、魔法陣が光輝きだした。
そのまま魔力を流し続けると、その輝きはさらに増していく。
そして帝王は唱えた。
「――転生魔法、起動」
強く光り輝き、部屋が真っ白に染まる。
光が収まったそこには――何も残っていなかった。
魔法陣も。
そして――帝王の姿も、部屋から無くなっていた。
こうして一つの世界を支配した最強の帝王は、異世界へと転生したのだった。
夕方と夜で、あと2話投稿します!
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