余計なお世話
「……あ」
すっかりその存在を忘れていた。そういえば、リッカルド様も、夏期休暇に実家に帰らないと言っていたのだった。
そして私は多用するなといわれた回復魔法をがんがんに重ねがけして使っており、香魔法を使ってもいないので、ミントの香りを漂わせている。
「ご、誤解です! 少しミントティーを飲んだだけですから」
「こんなに強い香りがするのに?」
自分でも苦しすぎる言い訳だとわかったけれど。即行で見ぬかれ、少し落ち込む。ならば。
「傷痕が残るのが、嫌でして……」
嘘のなかに真実を混ぜればいい。
回復魔法を使わない場合、自然治癒力に任せることになるので、傷痕は多少残る。
けれど、回復魔法を使うと、傷痕が残らないのだ。
私は悪魔の贄になるので、もう誰かと結婚することは二度とないけれど。
綺麗な体で、お嫁に行きたかった。そういうと、リッカルド様は、少しだけ表情を和らげた。
「傷痕が残るようなことをそもそもしない、というのは、僕たち魔獣騎士科には難しいことだね……」
そうそう、だから、そこを通していただけないでしょうか。
「でも。君は将来の伴侶に、君の寿命よりも、傷痕を気にする男を選ぶ気なの?」
えっええー。リッカルド様、いくら友人とはいえ、それは流石に余計なお世話じゃない?
なーんて、口が避けても言える雰囲気じゃないので、
「選ぶというか……私の将来の相手は、決まっているんです」
と答えた。
悪魔だって、傷がある贄と傷がない贄だったら、後者のほうがいいと思うよね。
そう思ってリッカルド様のほうをみると、リッカルド様は、目を細めた。