怪我
「~~っ!!」
さきほどのことを思い出して、あまりの嬉しさにじたばたとベッドの上で暴れてしまう。
リッカルド様にエスコートされた帰り道はそれはそれは、幸福なものだった。それに。リッカルド様の笑みも何回も見られた。
私たちが結婚してからは一度として見られることがなかった笑み。
あの笑みを、今度こそ守るんだ。
そうして、三ヶ月が過ぎた。
「今日も、だめかぁ」
今日の成果もゼロだった。
最初は魔獣は放っておくと人に害をなすとはいえ、生き物の命を奪うのに躊躇いを感じていたけれど。
このころになると、慣れも出て来はじめていた。
夜、魔獣の森へ出かけて、数体ほど魔獣を狩って、朝の日が上る前に、学園に戻る。
そんな生活も少しずつ定着してきた。
けれど、魔獣の心臓は一向にたまらない。
今の時点で三十は悪魔に渡しておきたいところだけれど、私が渡せたのはその半分の十五個だけだった。
「っ……!」
立ち上がったところで、ズキン、と右腕が痛むのに気づいた。
みると、右腕は結構な損傷を受けていた。
まぁ、回復魔法を何度も何度も重ねがけすれば、治るでしょう。
制服も、血に濡れちゃったけれど、まぁ、いいか。どうせ、この時間に起きてるのなんて、私くらいだ。
それに、夜だし、目立たないだろう。
そう思って学園の中に帰る。
早く寮に戻って、血を流してしまいたい。
そんなことを考え寮へと帰る道を歩いていると。黒い瞳と目があった。
「! え、」
「そ、フィア嬢!?」
えっ、えええええー!
なんで、こんな夜中にリッカルド様が外を出歩いてるの!? って、そうだ私もそうなんだから当然か。魔獣騎士科には門限はないのだ。
だから、彷徨いていても、不思議じゃない。不思議じゃないん、だけど。
「血まみれじゃないか! 大丈夫!?」
リッカルド様は、慌てて私に駆け寄ると、洗浄魔法をかけると、夜でも開いている医務室に連れていこうとした。
「大丈夫ですよ。これくらい。回復魔法をかければ──」
「回復魔法は多用しすぎると、寿命を早める危険がある。授業で習ったと思うけれど?」
リッカルド様は、少し怒った声でそういった。
……しってる。でも、私はどうせ、悪魔の贄となるのだし、いずれは人の理からは外れるのだ。寿命が延びようが、縮もうが関係なかった。
「っ、とにかく。ソフィア嬢、医務室にいこう」




