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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること  作者: 夕立悠理
一章

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21/40

茶番

 翌朝。

 昨日はいつもよりかなり早く女子寮に戻ったからか、いつもより体が軽い。

「……ふぅ」

 今日も一日がんばろう。

 すべては、リッカルド様が死なない世界を作るため。


「心臓を集めなくっちゃね」


◇◇◇


 私は今日の授業に出席せず、魔獣の森にきていた。


 今までわりとまじめに学園生活を送っていたけれど、考えてみれば、私にその必要はない。

 もちろん、両親に実家に連れ戻されない程度の成績と出席率は必要だ。でも、私の一番の目的は、三年の間に――いやもっとはやく、三百個の魔物の心臓を集めること。


 だったら、学園生活なんて、結局のところ茶番だ。 


 なんで今までそうしなかったかというと、リッカルド様を少しでも長く見ていたかったから。でも、リッカルド様にも嫌われてしまっただろう今、ようやく覚悟が決まった。


『ソフィア』

「なぁに?」


 悪魔が姿を表した。

 じとりと私を睨む、その顔は明らかに不満げだわ。


『なぜ、学園にいかない?』

「なぜって、学園にいっている間も、魔獣を狩れば、もっとはやくあなたを神にできるのよ?」

 それに、そうしない理由がないもの。

『いいのか? お前は本当に――』


 悪魔って、やっぱり悪魔らしくない。

 私は思わず苦笑しながら、悪魔を見た。

「もしかして、悪魔って、私が魔獣の心臓を三百個集められるとおもってなかった?」

『……!』

「ふぅん。図星なのね」

 こんなに焦った顔をする悪魔は初めてで、笑ってしまう。


『――ソフィア』

「なに、悪魔。私との契約を、忘れたとは言わせないわよ。そもそも、時を戻してくれたのも、あなたが神になりたいからでしょう?」

 神、という言葉を聞いたとき、悪魔の瞳が揺れた。

『……そう、我はかつて神とよばれたもの』


 あれ?

 最初に聞いたときとは、若干違う言い回しに、何か引っ掛かりを感じる。

 けれど、浮かんだ引っ掛かりは、悪魔の悲しげな顔に霧散した。

「だったら、いつもみたいに、不遜な態度で待ってなさいよ。そんな顔、あなたには似合わないわ」

『……』


 悪魔は黙って、私を見つめる。

『……ソフィア』


 そして、絞り出すような声で私を呼んだ。

「ん?」

『お前には――幸せになってもらわねば』

「悪魔?」


 悪魔は俯いた。

『そうでなければ、――て、――までした意味が……』

「悪魔、どうしたの?」


 悪魔の言葉は、小さく早口で聞き取りにくく、いくつか聞こえなかった。


『いや……なんでもない』


 そういって顔を上げた悪魔の顔は、いつもの皮肉げな表情を浮かべていた。

「悪魔?」

『お前に来客のようだぞ』


 そういって、ふっときえる。

 それから、少しして聞こえてきたのは……。

「ここにいたんだね、ソフィア嬢」

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