茶番
翌朝。
昨日はいつもよりかなり早く女子寮に戻ったからか、いつもより体が軽い。
「……ふぅ」
今日も一日がんばろう。
すべては、リッカルド様が死なない世界を作るため。
「心臓を集めなくっちゃね」
◇◇◇
私は今日の授業に出席せず、魔獣の森にきていた。
今までわりとまじめに学園生活を送っていたけれど、考えてみれば、私にその必要はない。
もちろん、両親に実家に連れ戻されない程度の成績と出席率は必要だ。でも、私の一番の目的は、三年の間に――いやもっとはやく、三百個の魔物の心臓を集めること。
だったら、学園生活なんて、結局のところ茶番だ。
なんで今までそうしなかったかというと、リッカルド様を少しでも長く見ていたかったから。でも、リッカルド様にも嫌われてしまっただろう今、ようやく覚悟が決まった。
『ソフィア』
「なぁに?」
悪魔が姿を表した。
じとりと私を睨む、その顔は明らかに不満げだわ。
『なぜ、学園にいかない?』
「なぜって、学園にいっている間も、魔獣を狩れば、もっとはやくあなたを神にできるのよ?」
それに、そうしない理由がないもの。
『いいのか? お前は本当に――』
悪魔って、やっぱり悪魔らしくない。
私は思わず苦笑しながら、悪魔を見た。
「もしかして、悪魔って、私が魔獣の心臓を三百個集められるとおもってなかった?」
『……!』
「ふぅん。図星なのね」
こんなに焦った顔をする悪魔は初めてで、笑ってしまう。
『――ソフィア』
「なに、悪魔。私との契約を、忘れたとは言わせないわよ。そもそも、時を戻してくれたのも、あなたが神になりたいからでしょう?」
神、という言葉を聞いたとき、悪魔の瞳が揺れた。
『……そう、我はかつて神とよばれたもの』
あれ?
最初に聞いたときとは、若干違う言い回しに、何か引っ掛かりを感じる。
けれど、浮かんだ引っ掛かりは、悪魔の悲しげな顔に霧散した。
「だったら、いつもみたいに、不遜な態度で待ってなさいよ。そんな顔、あなたには似合わないわ」
『……』
悪魔は黙って、私を見つめる。
『……ソフィア』
そして、絞り出すような声で私を呼んだ。
「ん?」
『お前には――幸せになってもらわねば』
「悪魔?」
悪魔は俯いた。
『そうでなければ、――て、――までした意味が……』
「悪魔、どうしたの?」
悪魔の言葉は、小さく早口で聞き取りにくく、いくつか聞こえなかった。
『いや……なんでもない』
そういって顔を上げた悪魔の顔は、いつもの皮肉げな表情を浮かべていた。
「悪魔?」
『お前に来客のようだぞ』
そういって、ふっときえる。
それから、少しして聞こえてきたのは……。
「ここにいたんだね、ソフィア嬢」
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