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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること  作者: 夕立悠理
一章

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17/40

いつかくる破滅

 黒い瞳は、私を見つめている。

「……!」

 まるで懇願するような瞳に、世界が揺れるような、感覚に陥った。

 このまま、全てをリッカルド様に話したらどうだろう?


 一瞬、馬鹿馬鹿しすぎる考えが頭のなかに浮かぶ。


「私、は……」

 私はあなたが笑っていてくれたら、それでいいのに。

 けれど、その世界は私が壊してしまった。


 悪魔の力というずるを使って、リッカルド様の死を受け入れられなかった私は、過去に戻ったけれど。


 過去に戻ったって、一度私が、リッカルド様とメリア様が心中するほど、追い詰めてしまった事実は消えない。


 私のなかでその事実は、永遠に残り続けるだろう。


 それに。

 これは私が始めた物語だ。破滅に向かう私だけの物語。

「……ソフィア嬢?」


 黙り込んだ私にリッカルド様が心配そうな顔をした。

 その顔で、思考から現実に引き戻される。


「いえ。これは、私自身の問題なのです。リッカルド様には――関係ありません」


 わざと突き放すような口調を心がける。


 本当に、リッカルド様を思うなら、変にかかわるべきではなかった。私は、ただ黙々と魔獣の心臓を集める機械になればよかったのに。


 今さらながらそのことに気づいて、落胆する。


 私は結局、リッカルド様のためといいつつ、私自身の欲を優先してしまった。


 これでは、前回の二の舞だ。

 ――もう間違えない。

「では」


 今度こそ腕を払い除けて、リッカルド様の前から立ち去る。


 引き留められることはなかった。

 せっかく力を貸そうといってくれた人に、こんな言葉を掛ける私には愛想がつきたということだろう。


 でも、きっと、これでいい。


 これでいいんだ。

 少しだけ自分勝手に胸が痛んだような気がしたけれど。

 気のせいだ。


 ◇◇◇


 ――教室でもリッカルド様から話しかけられることはなかった。


 そのことにほっと息を吐きつつ、夏季休暇後、初の授業を終えた。

 授業は、私が既に実践していることばかりで、正直つまらなかったけれど、聞いている間は、余計なことを考えなくていいから気が楽だった。


 いつもなら友人のマリーと過ごす時間。

 私は魔獣の森にこもっていた。


「……ぜんぜん、足りないなぁ」


 三年の間に三百個の心臓を捧げなければならないというのに。


 上手く仕留め損なって顔についてしまった返り血をぬぐいながら、考える。


 私があと必要な魔獣の心臓は、二百六十五個。

 三年の間に、ということは、反対に三年以内であれば、いつでもいいということだ。


 だったら、早い方がいい。

 だってまた、女神の使いに選ばれてしまったら意味がないから。


 だというのに、今日といったら、成果はたったの一個。


 ため息を吐きながら、回復魔法をかけ、剣を構えたときだった。

『……ソフィア』

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― 新着の感想 ―
[一言] ソフィアの行く末がとても気になっているので更新嬉しいです。 リッカルドと幸せになってほしいなぁ。 ご無理のない範囲でよろしくお願いします。
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