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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること  作者: 夕立悠理
一章

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15/40

子猫

 楽しかった(?)夏季休暇も、そろそろ終わりだ。……だから、といってなにかあるわけでもないけれど。今日も魔獣の心臓を集めるだけだものね。


 今日は、毒を持った魔獣に噛まれないように気を付けよう。


 そう思いながら制服に着替えていると、ふと、昨日の光景が頭の中に蘇る。


『君を閉じ込めてしまおうか』


 それから、睫が触れそうなほど近い距離と吐息も。


 途端に、頬が熱くなるのがわかる。


 ──でも。私の目的はリッカルド様とどうにかなることじゃない。

 リッカルド様を今度こそ死なせないことだ。そのためだったらなんでもする。


 なんでも、する、けど……。

 鏡を見る。


 そこにいるのは、三年前の私だ。

 そう、私は三年間この学園で過ごした。そしてずっとリッカルド様をただ、見つめていた。


 そして、なにも行動を起こさないまま、三年が過ぎ、女神は私とリッカルド様を女神の使いとして選んだ。そうして、──リッカルド様は死んだ。


 時間を戻したところで、一度死んだという事実がなくなったわけじゃない。


 リッカルド様は、死んだ。

 もう、あのときのリッカルド様には二度と会えない。メリア様の香水の香りを纏わせながら、私と義務の夫婦関係を続けていたリッカルド様には。

 

 だから、二度とあのリッカルド様に懺悔もできないのだ。


 そのことを私は、忘れちゃ駄目だわ。


 そう言い聞かせながら、頬を叩いて気合いをいれる。


 よし、頑張ろう。

◇◇◇


 ……そう気合いをいれてはみたものの。

 女子寮を出た私は早速、挫けそうになった。

「やぁ」


 門前で、手をひらひらと振っている顔も声も見覚えがありすぎる。

「……おはよう、ございます」


 私は、極力目を合わせないように気を付けながら、門前を通り過ぎようと──

「まあ、待ってよ。ソフィア嬢」


 ですよねー。やっぱり、声をかけられちゃいますよね。


 私は、ぎぎ、と音が立ちそうなほどゆっくりと、彼を見た。

「昨日、子猫に頭突きをされてね」


 そういうリッカルド様の瞳は、全くもって笑っていない。


 用件は賠償金の請求かしら。


「……そうなのですね」


 小さな伯爵家が公爵家に賠償金を請求されて、きっちり払えるほどの経済力があるかと聞かれると、いいえだ。


 相槌を打ちながら、すたすたと歩こうとしたその腕をつかまれる。

「でもね、とっても可愛い子猫なんだ。閉じ込めてしまいたいくらい」

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― 新着の感想 ―
[一言] この続きは書かれないのでしょうか…
[気になる点] リッカルドの行動が1週目とだいぶ違っていたり、悪魔の思惑などなど気になりますね。 名前しか出てきてないメリア嬢の登場はいつ!w
[一言] リッカルド、ヤンデレの素質あり!?(しゅき!!)
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