表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること  作者: 夕立悠理
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/40

杞憂

 ―あと、二百六十五個の魔獣の心臓を、捧げると。

 この『悪魔』は『神』になるらしい。


 美味しそうに今日の成果である十個分の魔獣の心臓を食べている悪魔に話しかける。

「ねぇ、悪魔」

 私が名前を呼ぶと、悪魔は、最後の一つを口の中に押し込み、首を傾げた。

『どうした?』

「なぜ、私に契約を持ち掛けたの?」

『……なぜ、か』

 悪魔は、小さく嗤うと、ぺろりと舌で唇をなめた。そのあとは楽し気に、私の短い髪を触って遊んでいる。

「……なぁに?」

 教える気はないって、ことかしら。

 まぁ、それならそれで別にいいけれど。

『我の願いをかなえるためだ』

「あなたの、願い? それって、神になることよね?」

 確か、悪魔は元々は神だったといっていた。その悪魔がなぜか、今は悪魔と呼ばれているらしいけれど。

『……それもある』

 ……も。ということは他にもあるということ。

 他に何があるというんだろう。

「確認なんだけど、それって、リッカルド様に害があることじゃないわよね?」

 リッカルド様の笑顔が奪われるような姿、特にあの、絶望に染まった瞳はもう二度と見たくない。

『……さぁな』

 悪魔が言葉を濁したってことは、やっぱり、リッカルド様に害があるのかしら。

 でも、メリア様と幸せになれれば、リッカルド様は、もう二度と心中なんてことしないだろうし。その他に、リッカルド様に害がありそうなことってないわよね。……なんだ、ただの杞憂ならよかったわ。


『そんなことより』

 悪魔は私の髪を触っていた手を止めると、囁いた。

『……お前は我の贄だ』

「わかってるわ、そんなこと」

 さっきもじとりとした目で見ていたし。別に、リッカルド様とどうにかなる気も、どうにかなる可能性もない。

『そうではない』

 悪魔はなぜかひどく怒ったような顔をした。

「悪魔?」

 珍しいわね、そんな顔をするなんて――。

「!?」


 悪魔は私を抱き寄せた。

 悪魔の鼓動が聞こえる。……悪魔にも心臓のようなものはあるのね。


 そんな場違いなことを考えていると悪魔は、更にきつく私を抱きしめた。

「悪魔?」

 悪魔のほうが背が高いから、そうされると、悪魔の顔が見えない。それに、悪魔の意図もわからない。

『……お前は、我の贄だ』

「? ええ」

 何度も何度も確認しなくても、それくらいわかっている。

『だから――あまり無理をされては困る』


 ええー。せいぜい励めよ、って言ったのは、悪魔じゃない。


 なんて、言える雰囲気ではなかったので、言いたい言葉を呑み込み、頷く。

「……わかったわ」


 今日は、失敗しちゃったけど、明日は、失敗しないようにする!


 心の中でそう誓っていると、悪魔は、私から体を離した。

『……我は――』


 複雑そうな顔で何かを言いかけた悪魔は、結局何も言わずに、消えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ