表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること  作者: 夕立悠理
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/40

頭突き

 そこで、私がとった選択は。

「……そう、でしたか?」

 首をかしげる。何とかしてこの場をやり過ごすしかない。

「そうだよ」

 けれど、リッカルド様はそんな私を見て、目を細めた。

 私の指に、リッカルド様の指がからめられる。

「!」

 思わずびくりと体を揺らした。

「僕に手段を選ばなくさせたのは──君だ」

「私、は……」

 私は、ただあなたに生きていてほしくて。

 けれど、喉が乾いて言葉にならない。


「ねぇ、ソフィア嬢」


 リッカルド様は、そっと囁く。

「君を閉じ込めてしまおうか」


 またまた、ご冗談を~。リッカルド様にはメリア様がいらっしゃるじゃないですか。

 ……なんて、いえる雰囲気じゃない。


 代わりにでてきたのは、

「ど、して……」


 どうして今のあなたが私に執着するのか。

 わかりきったことを問う、言葉だった。

「……そう。あれだけ言ったのにわからないんだね」


 いや、わかってる。私が自分を蔑ろにするから。蔑ろにする人を、自分を粗末に扱う人を、リッカルド様は許さない。赦せない。

「リッカルド様は……」

「うん?」

「私のようなものがいる度に、いちいち婚約を結ぶおつもりですか?」


 い、言っちゃったー!!!

 声に出してからしまったと思うけれど、もう遅い。一度でた言葉は取り消せないのだ。


 でも、でもね、リッカルド様。

 私たちは、もう子供とは言えない年だ。

 自分の責任は、自分で持たなくてはならない。

 だから……。

「……君は、僕のことをそんな風に思ってるんだ」

 君の考えはよくわかったよ、と言われた。

「まさか、僕が誰にでもこんなことをすると思われているなんて」


 こうすれば、伝わるんだろうか。

 リッカルド様は囁いて、顔を近づけた。


 リッカルド様の長い睫毛がふれそうになるほど、近い。

 けれど、それを意識する前に──。


 鈍い音を立てて、私の額とリッカルド様の額が衝突した。否、衝突させた。


「!?」


 リッカルド様が驚いた顔をして、私から距離ができる。その隙を見逃さなかった。

「申し訳ありません、リッカルド様! 私、とても大事な用事を思い出したので、これで!!」


 ベッドから転がり落ちるようにして、その場を去る。



「はあっ、はあっ……」


 全力で女子寮までをかけた。

 心臓がどくどくと脈打っている。

 その理由が、走っているせいだけではないと知りながら、私はその感情から目を、逸らした。


◇ ◇ ◇

 ──今日は散々な目に遭ったわ。

 自室に戻り、息をはく。

『ソフィア』

 自室では実体化した、悪魔が不機嫌そうな目でじっとりと私を見ている。

「……わかってるわ」


 ちゃんと、わかってる。

 私は、悪魔の贄だ。それ以上でも、それ以下でもない。


「私は……」

 あなたが生きていてくれる世界を作る。たとえ、あなたに嫌われようと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ああ〜、どうなっちゃうんだろう.......
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ