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悪役令嬢な私が、あなたのためにできること  作者: 夕立悠理
一章

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12/40

油断大敵

「今日の収穫も一つかぁ」


 思わず舌打ちしそうになったのを、寸前で抑え込む。


 魔獣を狩るのは大分慣れた。

 少々傷ついたところで、回復魔法と香魔法をかければいい。そう割りきったことで以前よりも格段に魔獣を狩るスピードは上がっていた。


 だというのに。

 魔獣の心臓を魔獣がなかなかおとさないのだ。


 このままで本当に間に合うんだろうか、という焦りが生まれていた。

 ──そんなとき。


 低い、うなり声が聞こえた。魔獣の声だ。ちらりと視線をそこに向けると、かなり大型の魔獣がそこに立っていた。


 チャンスかもしれない。


 このくらいの大型の魔獣が落とす魔獣の心臓は──本当に落とすかは別として──普通の心臓の三倍は価値がある。だから、もしここで狩って魔獣が心臓を落としてくれれば、今日のノルマとしては十分だ。


 私は、魔獣に向き直った。


 ──そして。







「はぁっ、はあっ、……っは」


 これは、ちょっとばかりまずいかもしれないと、気を抜くと薄れそうな意識で思う。

 魔獣は倒せた。

 心臓も手に入れた。


 問題だったのは、魔獣が毒を持っていたことだ。それに気づかず、回復魔法を重ねがけした。


 結果、毒がまわった。



 鈍る思考では思うように魔法をかけられない。そんなに複雑な構造の毒ではないから、解毒魔法をかければすぐ治りそうなのに。


 とりあえず学園に戻って、医務室に行けば、なんとかなる、はず。


 ふらつく足どりで森から学園に戻ろうとしたけれど、学園まで目前のところで石に躓き転んでしまった。



「……っ、あ」

 



 立ち上がりたいのに、足に力が入らない。何度も何度も、立ち上がろうとして失敗した。


 目の前が、真っ黒になった。

 ──その、ときだった。


「──! ──、──!!!」


 誰かが何かいっている。けれど、何をいっているのか、頭が働かない。


 でも、なんだかとてもいい気分だ。


 そう思ったのを最後に意識が、途切れた。







「ん、……」

 とてもいい夢を見た気がする。

 そんなことを思いながら、目を開ける。


 今日も一日がんばらなくっちゃ。そう思いながら、体を起こそうとして、天井がいつもと違うことに気づいた。


 疑問に思って記憶をたどり、どうやらここが自室ではなく医務室だとわかる。


 そうか、私、毒で倒れたんだった。誰がここまで運んでくれたんだろう。


 ぱちぱちと、瞬きをすると。

「……目が覚めた?」


 黒い瞳と目があった。


 途端に、頬がひきつるのを感じる。

「どうやら、意識もはっきりしているようだね。そう、まずは、目が覚めてよかった。それから……」


 まずは。ということは、まだ私に用件があるということだ。今すぐここから逃げ出したい。

「助けてくださり、ありがとうございました。では!」


 慌てて起き上がろうとしたその体を、覆い被さるようにして縫い止められる。


「まぁ、待ってよ。話は、これからなんだから。…僕は、『次』はないっていったよね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 壁ドンならぬベッドドン!! にまにましてしまいました!
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