マリオネットの誕生
カラーン、カラーン。
綺麗な鐘の音。
聞き覚えのあるその鐘の音に顔を上げた私は、驚愕する。
「え……?」
そこは、いつも通っている、聖エトワール学園の正門の前だった。
「……!?!?」
混乱が限界を極め、私はパクパクとまるで金魚のように口を動かす。
一体何が起きているのだろう。私は、ついさっきまで、ここから数十キロは離れた王宮の大広間にいたはずなのに。
王宮___そうだ、王宮で、私は、トワに……。
混乱と同時に先程の記憶が蘇り、顔が熱くなった。ほてる頰を押さえながら、けれど最優先は現状の整理だ。
一体なぜ、私はこんなところにいるのだろう?それに、よくよく見ると服も変わっていた。濃いマリンブルーのドレスから、真新しい制服に。
真新しい……真新しい?
自分で言って混乱する。私は、すでにこの学園での学習を終了し、卒業したはずだ。だって、さっきの大広間の会場は、そのお祝いのパーティーのためのものだったのだから。
私は、確かに昨日、この学園を卒業したのだ。すっかりよれた制服を見て、3年間の勲章だね、なんて言って友達と笑いあいながら。
それなのに、今着ているのは、ノリの効いた明らかに新品の制服だった。よく見ると、靴もピカピカしているし、学園自体もなんだか酷く新しかった。
周りに人は誰もいない。本当に何が起こっているのかと酷く困惑しながら、とにかく誰かいないかと学園へと足を踏み入れる。
「……とりあえず……」
自分のクラスに行こうと思って踏み出した足は、3年生のクラスがある棟ではなく、1年生のクラスがある棟へと"勝手に"向かっていた。
「え?え?」
自分の足であるはずなのに、自分のものではないような奇妙な感覚。意思とは裏腹に、私の足は勝手に私が3年前に通っていた教室へと向かっていた。
「ちょっと……!」
止まれ、と念じても止まらない。気がついた時には、私は教室の扉の前に立っていた。
綺麗に清掃された教室。その中からは、ざわめきが聞こえてきていた。
(よかった、とりあえず、人はいるみたい)
ほっとしたのも束の間、今度は手が勝手に動いて、ガラリと教室の扉を開いた。
途端、私に注がれる視線、視線、視線!
ざっと40人ほどの生徒の視線を一気に集めた私は、ひっ、と怯えながら口を開く。
「あら、頭の悪そうな顔がたくさん並んでいるわね」
______え?