終わりの予感
「おつかれさまです」
21:00にバイトを終え、僕はモテナスに緑色のターバン型ブローチを買いに行こうと自転車にまたがった。そしてバイトのピーク時の、僕の直観は正しかったのか。メロンさんは僕の働いている、この町のあのハンバーガーショップへフィレオフィッシュを買いにきてくれたのか?
モテナスは22:00閉店だし全然間に合うけど、僕は自転車のスピードを上げた。全然寒くなんかない。
焼き鳥屋の赤ちょうちんの前で話をしている仕事帰りであろうスーツを着た男性3人組の横を猛スピードで駆け抜ける。
「おう、あぶねーぞ」
そんな声が後ろから聞こえた。
なぜ僕は急いでいるんだろう。急ぐ必要はどこにもない。
モテナスに到着し、地下の自転車置き場に停め鍵をかける。急いでいたせいで車輪が一度枠から外れる。地上への階段を一段外しでのぼる。
閉店が迫ったモテナスは、さっき来たときよりも客の数はまばらだった。エスカレーターも駆け上がり4階へ向かう。何人かが僕を不思議そうな顔で見ている。
見えてきた。トラあなのグッツショップ。
男性客が一人、買い物袋を手に持って店を出てくる。僕はお店に入り、ブローチの回転棚の前へやってきた。
どこだ? どこだ?
僕はキーホルダーや、ミニマスコット、そしてブローチが陳列されていた棚を回転させた。キーホルダーが金属製の棚に当たって音を立てた。
ない。なくなってる……。
青のターバン型ブローチはあったけど、その横すべてが空になっていた。
え。
どういうことだよ。そんなに売れるもんなのか。
僕はレジにいる男性店員に聞いた。
「あの、あそこのブローチ、緑色のターバンのブローチ売り切れですか?」
「ターバンのブローチ? あ、はいはい。あれですね」
店員はいきなり聞かれたからか驚いたようで、でもすぐに一緒に回転棚まで行って確認してくれた。
「緑? う~ん、ないですね。あ、清水さん。ここのブローチ、緑色のやつもうないですかね?」
男性店員は回転棚に手をかけたまま、そばを通ったもう一人の男性店員に聞いた。
「あ~。それね。そこにあるやつで全部」
僕は引き下がらず聞いてみた。
「次の入荷いつになりますか?」
「そうだねえ。早くてもクリスマス明けですかね」
男性店員二人は、そういうことなんでよろしいでしょうか? というような顔で僕を見ていた。
ゆっくりペダルを漕ぐ。マフラーはバイトに置き忘れた。ダウンジャケットの首元から入り込む空気が冷たい。僕はダラダラと自転車を漕いだ。
どうせ実際に渡す事なんかできないとわかっていたのに買おうとした、メロンさんへのクリスマスプレゼント。買うことすらできなかった。間に合わなかった。あの時財布を持ってきていれば……。
そして帰ってログインしても、メロンさんは僕と会話すらしてくれないだろう。きっとあのフィレオフィッシュもメロンさんではないだろう……
ダラダラとダラダラと自転車を漕いで帰った。




