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メロンさんに会うために  作者: かろりんぺ
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クリスマスプレゼント

 いつもはトラあなをしている時間帯。布団に寝そべり電気を消しても一向に眠気はやってこなかった。枕元にあるスマホ。その中できっとメロンさんは今もプレイしているんだと思うと、むしろ目が覚めてくる。スマホを布団の下に隠してもまた出してしまう。

 roinの着信音が聞こえた。水希さんからだった。

『どうだった? 謝れた?』22:14

 謝ったけど一方的に僕がしゃべっただけだし、謝れたのだろうか。

『会うことはできなくてチャットで謝りましたけど、返事はありませんでした』

『そっか。でも冒険してたらいつかまた会えるかもしれないよ。わたしたちもいるしさ』

 そんなroinをやりとりして僕は寝た。夢でメロンさんに会えるかなと期待していたけど夢すら見なかったし、今までのことが夢であったらと起きたけど、昨夜の水希さんとのroinがそうではないことを物語っていた。


「俺昨日、吊り橋仙人クリアしたぞ」

「おお、やったじゃん。おれは今日そこ行く」

 学校の休み時間。そんな話声が聞こえてきた。きっとトラあなだ。僕がまだ行ってないダンジョンだろう。みんなどんどん先に進んでいるんだなぁ。そしてみんな楽しそうだなぁ。僕はみんなにはトラあなをしていることを隠している。

 ガラガラと教室のドアが開いた。

「はい、始めます」

 数学の先生が入ってきた。

「え。まだチャイム鳴ってないんじゃ……」

 キーンコーンカーンコーン。

「はい。始まりました」

 そんな光景をぼんやり眺めていた。


 バイトに到着し厨房に入ると、店長がクリスマスツリーの前でなにかやっていた。

「う~ん、やっぱ駄目だな」

 と独り言を言いながらイルミネーションを外しだした。バックヤードに向かう店長の赤い服には、ツリーのちぎれた緑のプラスチックがチラチラとついていた。そして僕のとこにやってきて

「ちょっとさ、イルミネーション買ってきてくれないか? ちょっと点かなくなったっぽい」

 と、僕に5000円札を渡してきた。

「白と青のやつな。なかったら他でもいいけどなるべく安いやつな」

「わかりました」

 お札をポケットに突っ込み、僕は帽子を取って、制服の上からダウンジャケットを着こみ裏口へ向かう。

「あ、そうそう。領収書もな」

 店長の声を背にドアを開ける。


 日が暮れだしている。すぐに暗くなるだろう。

 水希さんと会ったモテナスは今日も昨日と変わりなかった。もうこの時間から外の街路樹のイルミネーションは点滅している。ウインカーを出した車が僕の前を横切ってビル専用駐車場に入っていく。そば屋丸吉は今日はお客が入っているだろうか。丸吉のほうをみるとだれか一人お客が暖簾をくぐったっぽかった。

 モテナスに入りエスカレーターで3階に向かう。人が一列に並んだエスカレーターは3階でほとんどが降りた。すぐ目の前に『クリスマス特設コーナー』の看板がぶら下がっている。

 サンタのコスチュームの店員がにこやかに接客している。おもちゃ売り場では子供が床にお尻をついて泣いていた。カップルがポストカードをゆっくり選んでいる。

 イルミネーションコーナーにはそれほど人はいなかった。単色バージョンもあったし、7色、また2色もあった。僕は手っ取り早く白と青のイルミネーションのパッケージを手に取り値段を確かめお会計を済ませた。領収書も忘れない。

 バイト中とはいえ、このまま戻ってもまたいつもの作業に戻るだけ。めったにこんなこともないし、せっかくだから時間つぶしに少し店内を見てまわることにした。

 少し恥ずかしかったけど、手にはイルミネーションの入った袋を持っているし、スラックスはバイトの制服だ。自分はバイト中です、仕事で必要な物品を探しています、という格好で店内を歩く。

 小物売り場の前を通る。もし、もしもだけど。恋人同士だったら、僕はメロンさんにどんなプレゼントを買うんだろう。

 店内は女性客だらけだったから素通りした。アクセサリーショップは無理だろう。いったいみんなどんなクリスマスプレゼントを選んでいるんだろう。

 4階へ行ってみる。もうそろそろバイトに戻らないと怒られそうだけど。

お。

 通路を歩いていてもすぐにわかった。向こうに『トラあな』のグッツショップがあった。僕は迷わず向かった。

 見たことのある商品が並んでいた。『トラあな情報局』の公式サイトで見た、クリスマスバージョンのキャラクターのぬいぐるみだった。エミリアさんやトピーさん、キャプテン・ロウズもあったけど、一番売れていたのはルナのぬいぐるみだった。

 やっぱりトラあなは楽しいなと、悲しくなった。

 他にもモンスターボールペンとか、航海日誌のようなノート、奥には『ラーンソーダ』が350円で売っていた。ゲームの世界と同じ味がするのかな?

 そして目に留まった商品があった。

 ラーンの村でメロンさんが買った、選ぶのに10分以上かかった緑色のターバンの小さなブローチだった。他にも色があったけど、ピンクや赤は売り切れだった。

 買っとこうかな。

 あ。自分の財布がロッカーの中だと気づく。

 バイト終わったらまた来よう。

 メロンさんの緑色の髪に、ターバン型の緑色のブローチ。現実とゲームが混同している。そして、買ってもどうしようもないこと。

 それでも僕は買おうと決めた。


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