明と暗
学校から帰宅すると僕は明るい気持ちでトラあなにログインした。
メロンさんに会いにいくぞ。
メロンさんと一緒に冒険するうちに少しずつだったけど、あの人の性格がわかってくる。明るかったり時には怒ったり。お茶目なところもあるし、急に見せる大人さや優しさも垣間見れる。特にメロンさんの笑った顔が僕は大好きだった。
目の前が真っ暗になり、BGMとともにバレットの港が現れる。フレンドリストを開く。
あれ?
「こん」
メロンさんの声。僕はボソッと答えた。
「こん」
「じゃあ今日は船に乗って次の目的地に行こっか」
いつもの明るく元気な声だった。
遠くにメロンさんの緑色の頭が見える。そしてメロンさんの横に男性が立っていた。
「あ、かろり。こっちこっち」
僕はお辞儀をした。メロンさんと、その隣の男性に。
「えと、こちらは『カクテル』さん」
メロンさんが紹介した男性が「どうも。はじめまして」と僕に向かって笑顔で言った。
「どうも。かろりです」
もう一度お辞儀する。
「カクテルさんと友達なってさ。かなり強いし、この先二人だけじゃ色々辛くなっていくと思うし」
「いやいや、強くなんかないよ。プレイする時間が長いだけ」
「なに言ってるのよ。イカホタルなんか一撃で倒しちゃったじゃない」
「いや、武器が強いだけだよ。ま、俺も固定したパーティーを組みたいと思ってたし」
そんな二人の会話を黙って聞く。
「だからさ、カクテルさんと一緒に冒険していこうよ」
ログインする前の楽しい気持ちはもうなかった。でも、「いやです」となんか言える訳がなかった。
ゲームの設定年齢は僕と同じくらいだろう。でも僕は高校生。カクテルさんは確実に僕より、そしてメロンさんより年上な気がした。落ち着いた雰囲気だし、話も上手そうだし。
「よろしくおねがいします。かろりさん」
水色の前髪を斜めに流し、目力のある切れ長の目、そして薄い唇をしたカクテルさんはにこやかに、さわやかに、礼儀正しく言った。
「よろしくおねがいします」
僕はぶっきらぼうに言った。
木造の中型船に乗り、船長さんを目の前に
「3人なんですけど『レンフィル大陸』までお願いします」
とカクテルさんが僕たちをリードする。
「あいよ」
船長さんは大きな円形の舵を回しながら、船はバレットの港を離れた。晴れた穏やかな海だった。海風も心地よかったけど……。
船の長椅子に腰かけ、メロンさんが海風に負けないように言った。
「その武器なんて名前?」
「あ、これ?」
カクテルさんが背中に担いだオノを手に取った。
「これね、『シルバーアックス』だよ。けっこう高かったんだよ」
「めちゃくちゃかっこいいじゃん」
「お金貯めてさ、いいツメ買おうよ。メロンちゃん戦い方うまいし」
「かろりもいいステッキ買わないとね。頼むね、僧侶さん」
「はい」
「でさ、この先の大陸にはなにがあるの?」
「それは言えないよ。楽しみが減っちゃうじゃん」
「聞きたいよね? ね、かろり」
「いえ」
メロンさんの笑顔が真顔になった。
「なんなの?」
「いえ、べつに。今日はちょっと具合が悪いんです」
「そうなんだ。無理しないでね」
そう言って、またメロンさんはカクテルさんと話し込んだ。僕はこの場にいたくなかったので船内に入った。
電球のある薄暗い船内で船の揺れを感じながら、外から二人の楽しそうな話し声が聞こえる。僕は決めた。
「もうすぐ着くぞ。あそこに見えるのが『レンフィル大陸』だ」
船長の大きな声がした。
レンフィル大陸は森の大陸だった。船着き場には小屋があり、簡単な宿泊場になっていた。旅人の休憩ポイントだろう。中には案内係の男性がいて
「この先を真っ直ぐ進むと『ブレメの村』があります」
と説明してくれた。
「さ、出発」
メロンさんが元気に片手を上げた。
「あの……僕ちょっと具合が悪いんで今日は終わります。先進めちゃってください」
そう言った僕を心配そうにカクテルさんが見ている。メロンさんは数秒黙った後
「そっか。ゆっくり休んでね」
と無表情で言った。
僕は何も言わずログアウトした。




