それぞれのフレンド
4人でパーティーを組みブルーニャ山を登る。僕はこの先のストーリーが他の人達にネタバレにならないように会話に気をつけた。
メロンさんと二人で攻略したブルーニャ山。やはり4人だと楽に感じる。途中の群れカラスも、オノを装備したマシンさんの『薪落とし』やミズキさんの炎魔法『ジュジュマ』でなんなりと倒すことができた。
「なんかあったら俺にまかせろ」
マシンさんは男気のあるかたで、ゲーム内の設定年齢は30歳。そしてちょっぴりスケベ。
「俺が守ってやるよ。へへ」
と冗談交じりにミズキさんへ言った。ミズキさんは何も言わなかったけど、落ち着きを払いながら笑っていた。僕は冗談でもそんなこと言えない。
「マシンちゃんまたそんなこと言ってるのかよ、まったく」
まささんとマシンさんはどうやらずいぶん仲がいいらしかった。まささんも30歳に設定していた。マシンちゃん、まさと呼び合っていた。
21歳の設定のミズキさんはどうやらこういったRPGのゲームはあまりやったことがなくてわからないそうだ。自分の手が魔法の炎で包まれた時は「きゃっ」と言ってびっくりしていたし、敵を倒したあとに落ちている、金貨についた泥をていねいに手で落としてからゆっくりと腰の箱にしまった。メロンさんはフッと口で息を吹きかけて箱も見ずにしまっていたよなあ。
どことなく水希さんに似ている気もする。口数が多いわけではないけど、まったくしゃべらないわけでもない。クールなわけでもない。
4人で山の主ジェイドを倒し、僕はもう一度ムービーを見る。4人で話をしながら村へ戻った。夜が明け出した紫色の空だった。
村で僕は3人と別れた。『友達』になった。また一緒にプレイしようぜ。そう言われうれしかったし、4人プレイも楽しかった。だけど、メロンさんに申し訳ないなという思いは常にあった。
フレンドリストを開くとメロンさんはログインしていた。いつログインしたんだろう。したなら一言声をかけてくれればいいのに。
「こんです」
僕はメロンさんに声をかけた。
「こん」
声の感じではいつもと変わりなかった。
「さっきまで他の人のムーンフラワーを手伝ってました。メロンさんは何をしていますか?」
すぐに返事は返ってこなかった。どうしたのかな? しばらくして
「ごめん。今フレとレベル上げしてるの」
え。よく見るとフレンドリストのメロンさんのアイコンの横に人型をしたアイコンが3つあった。メロンさんもパーティーを組んでいた。
「先進めてて。また時間が合えば一緒にあそぼ」
そう言われ僕は
「わかりました。またです」
と元気に言った。元気に言ったのは僕の強がりだ。さみしくなったことを悟られないように言った答えた。
ゲームは自由にプレイするのがあたりまえだ。ペースを合わせる必要なんかどこにもない、それは頭の中ではわかっている。
僕の妄想の中で、メロンさんは他の僕の知らない人たちと楽しそうにプレイしている光景が浮かんだ。得意気にサンダークローを繰り出すメロンさん。どこかの木陰で休憩をしながら他のプレイヤーと談笑するメロンさん。
その表情は僕が見たことのないメロンさんの顔だった。
そんな妄想をしながら僕はササラの海岸で、この前拾った赤い貝がらを海に投げ捨てた。そしてログアウトした。




