アキ―青年―
純粋に本が好きな青年
それを取り巻く周りの環境
青年の心はどうなるのか
青年は読書が好きだ
読書はいい
この世界から切り離され本の世界へと旅立てる
本はいい読書が好きだ一日中読書をしていたい
青年は真剣にその事について悩んでいた
青年は高校生だ
朝起きて準備をし電車で登校する
この電車での登校時間は青年の読書タイムである
好きな世界に没頭し浸っていても終わりはやってくる
最寄り駅で降りてまた徒歩での登校
門を潜り教室に向かい席につく
二回目の読書タイムだ
しかしそれも束の間
号令がなりホームルームが始まる
たいくつだ
ホームルームでは本日の予定と時間割の確認、日直の確認をしている
どうやら本日は小テストがあるらしい
バカバカしい
小テストだろうが中間テストだろうが期末テストだろうが授業を真面目に聞いていればわかる事ばかりだ
何を慌てふためく事がある
ホームルームが終わり次の授業の準備をする
とはいっても小テストだ
教科書を軽く読み返してノートを見るだけでよい
必要文具だけ揃えて授業開始の合図を待つ
チャイムが鳴る
授業開始だ
テストが配られ行き届いたか確認される
カンニング出来る物がないか一通りチェックされ開始の合図と共に小テストが始まる
いっても小テストだ
本当に教科書の範囲内だ
慌てる事なく名前を書き設問に答えていく
落ち着いていれば何の問題もない
青年は淡々と黙々とテストに臨んでいた
カリカリとシャープペンの文字を書く音が響く
時間内にテストを終わらせ間違いがないかチェックをする
よし、問題ないだろう
青年は窓から見える世界を見渡した
高くなった青い空と赤や黄色に染まって来ている木々の葉
心地よい風を感じながらテストが終わるのを待ち続けた
テストは終わり答案用紙が回収され日直が職員室まで届けた
日直は面倒だな
次に日直に割り当てられるのはいつだろう
そう考えながら次の授業の準備をしまた読書に浸る
青年には友達はいなかった
作るつもりも必要もなかった
なので陰で青年の事をなんと呼ばれているか等気にもしてなかった
学校にはヒエラルキーが存在する
そのカースト制度の一番下にいるのが青年だ
しかし青年にはそれはどうでもいい事であった
読書の時間さえ邪魔されなければそれでよかった
しかし子供の虐めというものは時として残酷だ
幼稚園、小学生でさえ残酷なモノなのだから高校生ともなると犯罪に近い虐めが行われる
青年はよく荷物を無くした
正確には奪われたというべきか
兎に角色んな物を盗られた
物を盗られるという事は面倒だ
それを探している間読書が出来ない
どうして皆僕の読書の邪魔をする
理不尽な暴力は青年の心をかき乱す
しかし読書をしている時は青年は青年でいられた
ある日帰りに言われの無い事で同級生が呼び出しをされ校舎裏へと連れて行かれた
一方的に暴力をふるわれただただひたすら我慢をしていた
こういう事は大人しく殴られ蹴られていれば大抵気が済んで帰ってくれる
経験上からわかっていたので抵抗せず気の済むまで抵抗しなかった
しかし今日は違っていた
『お前金持ってないか?』
一人が唐突に聞き出した
そうすると仲間も同調され金を出せの一点張りになる
冗談じゃない
このお金は本を買う為のお金であってお前達に渡す物ではない
渡してなるものか
反射的に鞄を持ち蹲る
同級生達は次々に間髪入れずに蹴り込んでくる
しかし大切な本とお金を守る為に必死で蹲っていた
同級生はある程度蹴り殴っていたが亀のように動かない青年を見て諦めたようだった
『今度はきっちり払って貰うからな』
捨て台詞を吐いて何処かへ消えていった
今度ってなんだ?
僕はお前達にお金を貸した覚え等ない
お金を渡す義理もない
世の中は理不尽だとは思っていたがここまでとは
青年は痛みに耐えなんとか起き上がりフラフラになりながら校門を出た
つたえ歩きをしながら何とか歩いている状況だった
今日は楽しみにしていた本の新刊が出る日だ
早く本屋に向かわねば
その一心が青年を支え歩かせていた
本屋についた
その安心感からか青年は入り口で倒れてしまった
店内がざわつく店員が慌てて医務室へ運ぶ
救急車が呼ばれる
入り口からの記憶はもう青年にはなかった
救急車が到着し青年は運ばれた
しかし運が悪く今日は金曜日
道は凄く混んでいて中々病院まで辿りつけない
更に受け入れ病院も見つからない
そんな最悪の中で青年の血圧は下がっていった
『大丈夫ですか?わかりますか?救急車ですよ』
救急隊の呼び掛けが遠くに聞こえる
今は僕は何が起こっているのだろう
新刊買いたかったな
明日は土曜日だから思う存分読書が出来るぞ
あれ体が動かない
頭も痛いし身体中が痛い
どうなってるんだ?
搬送先の病院が見つかり何とか運ばれた青年だったが病院についた頃には意識はなかった
青年の身体は頭から顔から身体中に至るまでありとあらゆる暴力がなされた跡があった
特に頭部は強く蹴られており死因は頭部強打と全身の骨折での内臓破壊ではないかと診られる
青年は主に頭を蹴られていたのである
間もなく青年の死が確認された
ボロボロになった制服と鞄を傍に青年は息を引き取った
早くに両親をなくし身寄りのない青年は学校の先生が引き取り人になった
近々青年の家には遺留品整理が入るであろう
青年の死をもって学校に虐めがなかったか調査が入るであろう
しかし青年にとってはそんな事どうでもよかったのかもしれない
薄れていく意識の中新刊が読みたい
それが青年の純粋な願いだったのであろう
イジメは人を殺す
それは本当は当たり前であるはず
それを簡潔に表現したいと思いました
季節をアキにする必要はなかったのですが春夏秋冬の物語を投稿してる上で必然的に秋になりました
ちょっと秋っぽくないので秋は書き直すかもしれません
純粋に本が大好きな青年が安らかに眠れるような世の中だといいですね