始まり-6
3日に1度と言ったな?無理でした
改めて彼方と話をしたところ、分かったこと……というか今後についての事は以下のようになる。
一、この町で過ごす高校3年間の間、彼方、積一派の頭領の仕事の手伝いをする
二、この街のパトロール
三、妖怪について知る
大まかに言えばこの3つなのだそうだ。大まかすぎるような気はしているが。
「まぁ、手伝いつっても俺らの世界を知るための社会科見学みたいなもんだよ」
「結局それ妖怪知るか街のパトロールかの二択じゃん」
「こまけぇこったいいんだよ。気にすんな」
そう言うと彼女はひとつ伸びをする。
「アンタがここに来た理由なんざ、白と黒の2色しかないと思って欲しくないとあいつが思ってるからさ。陰陽師には多いからね。妖怪は絶対悪で、人間こそが正しいんだーってさ。いや、これは陰陽師に限らないんだけどな。アンタにそういうふうになって欲しくないから大五郎ちゃんはアンタを俺に任せたわけだ。オーケー?」
「絶対悪もなにも、私、そういう風に今まで見たことないし……」
「そうかも知れないが、今後どうなるかなんて分かんねぇだろ?人間ってのは変わりやすい生き物だからな」
そう言って、ふ、と笑った彼方の顔はどこか寂しげにも見えた。
***
「えー、新入生の皆さん、まずはご入学ありがとうじゃなくておめでとうございまーす」
締まらない挨拶をしたのは弥生高校の校長。桜舞い散るどころか春風によって巻き上げられては四散していく麗らか(?)な日。そう、入学式だ。
新しい制服に新しい学校。新しい物づくめのこの日、やはりどんなものであれ新しいというのはわくわくするものだ。
幸運か何か、クラスには彼方も河原君もまっちゃんも居る。そして自己紹介を聞く限りのこのクラスのクラスメイトのキャラの濃さに「あっ、これは愉快な仲間たち案件だぞ」と潔く気がついた私は聡い。一人目の自己紹介から「趣味は雑草を煮つめて抽出したエキスをあれやこれやに使う事です!」なんて自己紹介を聞いてしまったのだから、少しの自画自賛は大目に見て欲しいものだ。あれやこれやって何に使う気なんだお前。
つつがなく終わった高校生活1日目。そして今から始まる陰陽師修行生活1日目。狩衣にも似た、いわゆる、少しアレンジが加えられて脱ぎ着しやすくなった正装を纏う。いざと言う時にも、そうでなくともきちんとした身なりから。というおじいちゃんの教えはどうやら彼方からのものだったらしい。同じことを言う姿は「ああ、本当にこいつがおじいちゃんの師匠だったんだな」と感じさせられ、なんだか感慨深いものがある。
「うん、なかなか様になってるじゃないか」
「ありがと。まずはきちんとした身なりから、なんでしょ?」
「はは、そいつは違いねぇ」