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木積さんと奇怪な日常  作者: 浅木宗太
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合宿譚と僕らの長い一日-4

登り坂や下り坂、あるいはお前そこ通る?と言いたくなるような道を歩き回り、どうにかこうにかスコアボードを網羅した我々は合宿場へ戻る道を歩いていた。すると目の前にぽつりと人の姿が見える。

「あれ?吉岡さんじゃん」

「あ、北山さん!ちょうど良かった!」

そう言って駆け寄ってきたのは吉岡さん。クラスメイトの一人でかわいい系の顔の女の子だ。趣味はB級ホラー映画巡りというちょっと変わった女の子だがこの位では動じなくなった私も私だ。

「どうしたの?班の人は?」

「それが……急に霧が出てきて、皆とははぐれないように歩いてたつもりだったんだけど……いつの間にか……」

「霧……?そう言えば、今日こんな霧が出るって予報なかったよね……?」

彼女の言葉に周囲を見渡せば自分達以外は見えない程の霧に包まれていた。

「これって……」

「お鈴、吉岡に歩いてもらおう。俺達はその後ろをついて行く方が良さそうだ」

その言葉に不安そうな顔をする吉岡さんに彼方はへらりと笑うと「大丈夫だって、俺を信じな」と彼女の肩を軽く叩いた。


「ねぇ、本当に大丈夫なの?」

吉岡さんの案内の元歩きながら隣を歩く彼方にこそりと尋ねる。

「大丈夫も何も、今回は吉岡が鍵だ。俺達を巻き込んだ理由は分からんが、やるべき事は大方見当がついている」

前を歩く吉岡さんを見ながら彼方はそう言うと「とりあえず吉岡の班の連中には連絡を取ってあるしな」とさも当たり前のような顔で言い放った。

「……ひとつ聞いていい?」

「ん?」

「班の連中ってさ」

「ヒト相手にはうちの舎弟共は見えねぇだろうなぁ」

にひひと笑う彼方にやっぱりかと何とも言えない気持ちになる。

「……うちのクラスにってか、うちの学校どのくらい妖怪が居るんだろ……」

考えるとちょっとため息がでた。

どのくらい歩いただろう、体感時間にして多分三十分も歩いてないくらいの時だった。前を歩いていた吉岡さんがぴたりと止まったのだ。

隣に来て彼女の見つめている先へ視線を移す。

「泉と、なにあれ豪邸?って言えばいい?」

「んー、寝殿造り、かな。この手の建物には多いん、だ」

目の前に広がる泉というよりは湖と呼ぶ方が正しそうなそこは澄んだ水が穏やかに波を立てており、その上にはどうやって建てたのか、昔の貴族が住んでそうな建物が建っている。

「北山さんも代々木くんも驚かないの?!」

「吉岡、深呼吸深呼吸」

「はーい吸ってー吐いてー、そのまま中嶋の後ろに隠れてー」

何がなんだかわからない吉岡さんの背を押して中嶋くんの後ろに連れていく河原くん。そして彼方はと言うと楽しげにうっすらと笑みを浮かべた。

「お鈴、出たぞ」

彼方のその声に真っ直ぐに前を見つめる。何かが水をかき分けるような音、そして霧の中から一艘の船が姿を現した。船の上には狩衣を着た人物と船を漕ぐ従者のようなものが乗っている。

船は岸辺に着くと狩衣の人物だけが船から降りてくる。

「その娘を嫁に貰い受けに参った。渡せ」

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