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木積さんと奇怪な日常  作者: 浅木宗太
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拝み屋はつらいよ-6

人と妖怪は別種の生き物である。

それは私も理解していることだ。陰陽師として、それを生業とする者になる者として。理解しているつもりだ。それなのに何故、彼の言葉はここまで引っかかるのだろうか。

「おじいちゃんから、って、何かあったんですか?」

「フフ、そうだねぇ、あったと言えばあったけれど、なかったと言えばなかったのかな。ダイゴロウが君に教えていないなら、私の口から言うのは、無粋ってやつかも知れないな。それに、昔の事をペラペラ喋っていたら彼に叱られそうだ」

だから、私の口からは内緒だ。とケイジさんはそっと自身の唇に人差し指を寄せる。どうやら、話してはくれないらしい。

「楽しげなところ、失礼する、よ?ウィリアム、キミに電話だ」

障子を開けて顔を覗かせたまっちゃんが、ケイジさんに手招きする。手招きされた方はと言うと、誰からの電話なのか何となく察しが付いているのか、楽しげに笑うと「今行くよ」とそちらへ行ってしまった。ここにはいまだに現役の黒電話が廊下のいたる所に置いてあり、きっと一番近い黒電話に向かったのだろう。余談ではあるが、ここのこの黒電話達は、時折、そう、時々、どうやら、他の世界へ繋がっているのだ、と小さな妖達がこしょこしょと噂話をしていたのを耳にした事がある。そもそも、河井荘自体、かなり色んな噂が住人達の中でも飛び交っている。一番突拍子もなかった噂話はというと、この建物自体、昔この辺りにいた山の神様の屍でできているのだという話だ。どこまでが本当で、どこからが尾ひれなのか、私には知る術は無いし、知ったところで何か出来る訳でもないから気になるけど、首を突っ込む気にはならない。いや、それは少し語弊があるかもしれない。

ここが何で、どんな理由で彼が管理人をしていて、どうして彼らはここに住んでいるのか。

きっとみんな何かしらの理由があるのだろう、とそう思い知ろうとしないのは、

私に何か言えるだけの理由がないからだ。

もし、彼らの噂が本当だったとしたら?

私には何か出来るのか、

否、何も出来やしないのだ。

生まれて十五年の小童にどうにかできるようなものでは無いのだ。

彼らは私が生まれるよりずっと前から、おじいちゃんの子供の頃よりももっともっと、ずっと前から生きている。

きっとこれからも。

彼方に聞いたことがある。

「ずっと生き続けるって、どんな感じなの?」と。

彼女はゆるり、と笑うとこう答えたのだ。

「それは俺にもわからないな。なんせ、俺には終わりが来る。アンタ達と同じ様にいつか終わるのさ。時間の流れ方の違いしかそこにはないんだよ、お鈴。でも、俺達から見れば人間はほうき星みたいなものだからなぁ。一瞬の煌めきを残して消えちまう。そんなものなのさ」

この質問は実は、他の人にもしたことがある。紫色の彼は「退屈になってしまうだけ、さ」と笑い、黒い稲妻模様のヘッドホンをした彼は「んー、きっと望まないからそれはいらない」とあやふやな返事を返してきた。

もしも、ケイジさんの言っていた、考え方の違いがそれなのだとしたら、それはきっと先に消えてしまう側といつだって取り残されてさよならを言えない側との違いなのかもしれない。

そう考えると少しだけ、何だか切ないなぁ、と思ってしまった。

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