十 朝日
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桃の部屋でグダグダとしていたら、いつの間にか朝日が昇っていた。太陽の光が部屋の中に差し込んできている。
私は初めて友人の家で一夜を明かした。なぜか全裸という不思議な格好で。
昨夜は何もなかったと思いたい。私は決して、女の子たちと一線を越えてなどいない。うん、きっとそのはずだ。そう信じることにしたいと思う。
友達の家に泊まるとは伝えていなかったので、親は心配しているかもしれない。私は無断で外泊するような悪い子ではない。母は私が事件や事故に巻き込まれたのではないかと思っているかもしれない。
洗濯した服はそろそろ乾いているだろう。さっさとそれを着て家に帰ろう。
「色々やってもらって悪かったわね。もうそろそろ帰るわ。私の服はどこに干してあるのかしら?」
「春ちゃん帰っちゃうの? やだぁ、まだ帰っちゃだめぇー」
桃は私にしがみついてきた。
そう言われても困る。私はいつまでもここにいるわけにはいかないのだ。なぜなら、今日は午後からバイト先の同僚、奈々香と映画を観に行く約束をしているからだ。
「春華さんが帰るなら私も……」
そう言って美波は布団から出た。彼女は私と帰る方向が同じだった。これから一緒に朝帰りということになる。
あとは隣の部屋で寝ているアンネリーゼも起こして連れて帰らないと……。
「朝ご飯食べてってよ」
桃が言った。
何も食べずに帰るよりはいいだろう。確かにお腹が空いてきた頃だ。食べて帰ることにしようと思う。
「わかった。じゃあそうさせてもらうわ」
私はお言葉に甘えることにした。
「では、私もいただきます」
美波も私に同調した。
こういうのもたまには悪くない。友人の家で寝泊まりして、朝食をいただく。まさかそういう経験をする日が来るなんて、ぼっちだった頃は夢にも思っていなかった。
「アンちゃんも食べていってほしいの。ちょっと起こしてくるー」
桃は隣の部屋に行った。
しかし、すぐにこちらへ戻ってきた。
「どうしたの? 桃」
私は問いかける。
「アンちゃんがいないの。どこ行ったんだろう?」
桃は答えた。
「よく探してみたら? 違う部屋にいるのかもしれないわ」
「……うん」
桃によると、アンネはすぐ隣の部屋で寝ていたそうだ。しかし、朝になるとそこからいなくなっていたという。ではどこへ行ったというのか。
私たちは全ての部屋を探し回ったが、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。かくれんぼをしていた覚えはないのだけど……。
「おかしいなぁ。もう帰っちゃったのかなぁ?」
桃は首をかしげる。
「そうかもしれません。きっと何か用事があったんですよ」
と、美波が言う。
本当にそんなことがあるのだろうか。アンネリーゼが私のそばを離れることは滅多にない。いつもべったりな彼女が私を置いてここを去るとは考えにくい。
そもそもアンネに用事なんてあるのだろうか。彼女は人間界に来て以来、ずっと暇そうにしている。バイトもしていなければ私たち以外の人間との交友関係もないのだった。急いで出て行くほどの用があったとは思えない。
「ま、仕方ないわね。こうなったら私たちだけで食べましょう。アンネはそのうち見つかるでしょうし」
「そうですね」
私は深く考えないことにした。気まぐれなあの魔女のことだ。勝手にフラフラと消えて、勝手にひょっこり出てくるはずだ。今もどこかで散歩でもしていることだろう。きっとすぐ現れるわ。
「……で、私たちの服はどこなの? いつまでもこの格好は嫌なんだけど」
早く服を返してほしいものだ。私は露出マニアでも痴女でもない。好きで裸になっているわけではないのだ。これは不本意な格好である。
「服着る前に写メ撮っていい?」
桃がスマホのカメラで私の裸体を撮影しようとした。
「いいわけないでしょ」
私は桃の手からスマホを取り上げた。
可愛いくせにやることがキモすぎる。この子の将来が心配だ……。
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