七 飲酒
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飲み放題コースで予約をしていたため、元を取るにはドリンクを何杯もお代わりするべきだろう。
私はお酒を一杯飲んだ後は、ソフトドリンクを注文するつもりだった。しかし、意外と最初に注文したレモンチューハイが美味しかったため、もう一杯頼んでみたくなった。
美波はさっきからウーロン茶を狂ったように飲んでいる。そんなに喉が渇いていたのだろうか。いや、晴らせぬ何かを忘れるために飲んでいるように見える。
城田さんと林さんは軟骨の唐揚げを注文しまくっている。コリコリとした食感がクセになったようだ。
「レモンチューハイのお客様ー」
従業員の女性がジョッキに入ったチューハイを持ってきた。
「あ、はい」
手を挙げる私。
「二杯目ですか。まだまだ余裕みたいですね」
城田さんが言った。
「さすがにチューハイ一杯で酔ったりしないわ」
「ですよね。じゃんじゃんいきましょう!」
もっと酒を飲めと煽る城田さん。
いいわよ。やってやろうじゃない。
私はグビグビと二杯目のチューハイを飲み干した。
これくらい楽勝ね。全然酔わないわ。ジュースと同じようなものでしょ。これならもっと飲める。
「今度はライムサワーとかどうです?」
城田さんが勧めてくる。
「いいわね。じゃあそれを飲もうかしら」
受けて立とうではないか。
「ライムサワーでーす」
すぐに従業員が持ってくる。
「どうも」
ジョッキを受け取った直後に、勢いよく飲み干す私。
ライムも美味しい。香りがいい。爽やかで飲みやすいと思う。
「や、やりますね……春華先輩。三杯でも足りないかぁー。じゃあ、限界までいってみましょうか!」
「上等よ」
「春ちゃん頑張れぇ」
私はグレープフルーツサワーを一気に三杯注文した。
今の私なら飲める。ボウリングでズタボロになった鬱憤を酒で晴らす。今夜は酒の力でハイテンションになろう。
ガブガブと飲み続けていく。すごく美味しい。
顔が熱くなってきた。少しぽーっとしてきた気がする。酔いが回り始めたと思われる。
さすがにこれだけ飲んだら酔ってしまうだろう。私は酒に慣れていない。これまでほとんど飲んだことがなかったのだから。
「ぷはぁ……」
ガン、とジョッキをテーブルに置く私。
グレープフルーツサワー、三杯飲み干したわよ……。
「すごいですわ、春華」
アンネが褒める。
「こんなに飲んで大丈夫なんですか? あまり無理しない方が……」
林さんは心配していた。
あまり私を舐めないでほしいわね。私はこれだけでダウンするような女ではない。酒に強い大人の女なのだ。
酒を飲みまくること。それはまだ子供の彼女たちには到達できない領域である。
っていうか、それより、さっきから美波が動かないんだけど……。
彼女は机に突っ伏していた。今日はずっとウーロン茶ばかりを飲んでいた。
まさかとは思うけど、お茶で酔ったんじゃないわよね?
「みーちゃん、起きてるー?」
桃が美波を揺さぶる。
「お、起きてます……」
顔を伏せたまま返事をする美波。
「どうしたの? 気分でも悪いの?」
私は尋ねた。
「飲みすぎちゃいました……。お腹が破裂しちゃいそうです」
ウーロン茶だけでお腹いっぱいになってしまったらしい。せっかくの外食なのに、飲み物で満腹になるのはもったいないだろう。
「どうしてそんなにたくさん飲んだの?」
「わかりません。止まらなくて、つい……」
私たちが彼女を止めてあげるべきだったかもしれない。明らかに彼女の飲む量は異常だった。早い段階でストップするように言っておけばよかった。
「もう私はダメです……」
「美波……! しっかりして!」
「う……」
美波は私の膝に倒れ込んだ。
私は彼女に膝枕をする形となった。
「ずるーい。桃も春ちゃんに膝枕してほしいぃ」
「わたくしもですわ」
「アホでしょアンタたち」
私は呆れた。
膝枕の何がいいのか。
美波は私の膝の上で、幸せそうな顔をしながら眠っている。スヤスヤと穏やかな様子だった。
「なんか美波見てると、私も眠くなってきちゃったわ……」
酔ってきたことも起因しているのだろう。頭がボーっとしてクラッとする。横になればすぐに眠ってしまう自信がある。
「おやおやぁ? もうギブアップですかー?」
城田さんが挑発してくる。
私はムッとした。
ギブアップですって? この私がもう降参すると思っているのかしら。
「いいえ、そんなわけないでしょう。まだまだ飲めるわよ。私は美波の分も飲み続けるわ」
今度はハイボールにしよう。飲んだことないけど、CMとか観てて美味しそうだと思っていたのよね。
本当の夜はここからだ。
私はハイボールを注文した。
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