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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第六章 追跡者の野望編

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一 弟子

新キャラ登場。アンネリーゼの弟子視点です。

 魔女は人間とは違い、数千年も生きる存在である。その容姿は数百年経っても若々しく、老いというものは生まれてから二千年近く経つまで実感することがない。


 私の愛するアンネリーゼお姉さまは、御年四百歳の「お若い」魔女であられる。しかし、若手にしては極めて優秀で高貴な魔法使いであった。


 今から三十年前に勃発した「第八百六十二次魔界大戦」では、お姉さまは多くの手柄を立てられた。西軍を勝利に導いた功績を讃え、お姉さまには数々の勲章が贈られたのだった。


 その戦には私も西軍の前衛部隊として参加していた。ところが、私たちの部隊は敵の東軍が所有する「魔竜」に苦戦し、全滅寸前にまで追い込まれた。


 魔竜の進撃により絶体絶命のピンチに陥っていた私を救ってくれたのが、アンネリーゼお姉さまだった。

 お姉さまは華麗な雷撃魔法で魔竜を瞬殺し、敵の前衛部隊をあっという間に壊滅させたのだ。


 それがきっかけで、私はアンネリーゼお姉さまに惚れ込んだ。

 彼女はなんて素晴らしい魔女なのだろう。その強さは一体どこから来ているのだろう。瞬く間に彼女のとりことなってしまった。

 

 終戦後、私はお姉さまに弟子入りを志願した。

 お姉さまは快諾し、私は彼女の下で魔法の鍛錬に励むことになった。

 

 お姉さまは強いだけではない。とても優しいお方でもあった。彼女は雷撃魔法の才能が伸び悩んでいた私をいつも励ましてくれた。鍛錬の後はいつも、私をティータイムに誘ってくださった。

 

 私はお姉さまとのティータイムが何よりも好きだった。お姉さまが用意してくださる紅茶は絶品で、お菓子も非常に美味しかった。特にお姉さまが作るアップルパイは魔界一と言ってもいいだろう。


 また、アンネリーゼお姉さまは魔界最強クラスの美しさをお持ちだ。お姉さまの美貌にかなう魔女などいない。

 私はお姉さまの全てを尊敬し、心の底から慕っていた。


 私はお姉さまの言う事なら何でも従う。お姉さまのためならば、どんなことでも成せる。お姉さまに対する私の愛は誰にも負けることはない。


 いつかきっと、お姉さまも私の愛に気づいてくださる。私はそう信じていた。

 それなのに……。


 お姉さまの心は奪われてしまった。

 人間界に住む一人の女によって……。


 私はその女を許さない。私の愛するお姉さまを奪った女を絶対に許さない。

 人間の分際で、お姉さまのハートを射止めるなんて……むきぃいいい! なんて生意気な! あああ! ムカつくムカつくムカつくぅ!


 お姉さまが変わってしまったのは、今から一年ほど前のことだった。

 彼女は何かに取り憑かれたかのように、あの女に夢中になっていた。


 「お姉さま! どうしてこうも毎日、鏡の中ばかり覗いていらっしゃるのですか! お姉さまは紛れもなくお美しゅうございます! 何度も鏡で確認する必要などございません! このメアリーが保証いたしますわ!」

 「うふふ。これは人間界を映し出す特別な鏡ですのよ。わたくしは自分の顔ではなく、そこに映る春華のことを見ているのですわ」


 お姉さまはうっとりとした表情を浮かべていた。それはまさに恋する乙女の顔であった。

 彼女がそのような顔を見せることは、これまで一度もなかった。


 「ハルカ……? 誰ですか、それは?」

 「人間の少女のことですわ。彼女からは何か特別な力を感じますの。わたくしはそれに思わず惹かれてしまいましてよ……」

 「人間の少女に、お姉さまが……?」

 驚愕する私。


 「春華はただの人間ではありませんわ、メアリー。神聖で妖艶な存在ですのよ」

 「で、ですが……」

 「決めましたわ。わたくし、いつか春華を自分のものにしてみせますわ!」


 お姉さまは本気だった。


 「……うえええええええええん!」


 その日は泣いた。一晩中泣いた。枕がびっしょりとなるくらい涙を流した。

 あのお姉さまが人間ごときに恋をするなんて。この私を差し置いて、人間の少女に夢中になるなんて。


 そして、とうとうお姉さまはその女を追って人間界へ行ってしまわれた。私が魔法の鍛錬をしている間に置手紙だけを残して……。


 もうこのままお姉さまは戻ってこないかもしれない。人間界で「女子大生ライフ」とやらを満喫するのだという。

 

 しかし。絶望の淵に立たされた私に、一つのチャンスが訪れたのである。

 なんと、この私も人間界へ行く機会が与えられたのである。


 通常、魔女が人間界へ行くには「転移魔法準二級」以上の資格が必要だ。その資格は取得がかなり難しく、二級や一級レベルの資格を持つ魔女はごくわずかだ。アンネリーゼお姉さまですら、現段階では準二級の取得が精一杯であった。

 

 準二級レベルでは水のある場所にしか転移用のゲートを用意できない。おまけにゲートの位置もあやふやで、思った通りの場所にゲートを発生させることができるとも限らないのである。


 今の私がお姉さまを追って人間界へ行くことなど、絶対に不可能であるはずだった。お姉さまが戻ってくるのを待つしかなかった。


 ところが、私には人間界へ行く特別な許可が下りたのだった。


 人間界の神を名乗る少女が突如現れ、こう言ったのだ。


 「あなたを人間界へ行かせてあげる。あなたの大好きな魔女に会わせてあげる。その代わり、柊春華を捕えて私のところへ連れてきなさい」


 なんと私は、お姉さまと憎き柊春華がいる場所へ転移させてもらえることになったのだ。

 柊春華をアンネリーゼお姉さまから引き離し、神の元へ連れてゆく。そうすれば、私は再びお姉さまと一緒になれる……!


 これは千載一遇のチャンスだ。

 私はその話に乗ることにした。


 今日、私はいよいよ人間界へ行く。


 待っててください、お姉さま。私がお姉さまを悪夢から目覚めさせてあげますわ。


 柊春華、絶対にお姉さまは貴様なんかに渡さない……。


 


 

お読みいただきありがとうございます。

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