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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第一章:夢のキャンパスライフ編
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六 約束

 朝の満員電車はストレスの原因の一つだ。狭い空間に押し込められ、得体の知れない人間と密着状態になってしまう。ものすごく不愉快で息苦しい。


 私は電車に乗る間、いつもスマートフォンを片手に握り、お気に入りのサイトを閲覧することで、どうにか正気を保っているのだった。


 今朝も私は七時四十分過ぎの電車に乗ることになっていた。現在は駅のホームで電車の到着を待っているところだ。


 ホームにはあふれんばかりの人が並んでおり、その集団の中に私がいる。今は通勤や通学のために電車を利用する人の数が最も多い時間帯だった。


「おはようございます、春華さん」

「あっ。お、おはよう……」


 美波が現れた。いきなりだったので驚かされたものだ。彼女がこの場に突然湧いて出たようにも思えた。それまでまったく彼女の気配を感じなかった。


 彼女の存在感が薄いのか、それとも私が鈍いのかどっちなんだろう。


「今日も早いですね」

「美波こそ、いつもこの時間に乗ってたんでしょ?」

「ええ。そうでないと学校に間に合いませんから」

「まぁ、私もそんな感じかな。あと一本遅らせてもいいんだけど、それだと駅から大学まで急ぎ足にならないといけないし」


 私は走るのが苦手だ。ゆとりを持って行動するタイプなので、遅刻ギリギリの時間に到着するような真似はしたくない。


 逆に大学に着くのが早過ぎるのも嫌だった。早く行ったところで何もすることがないからだ。私には喋り相手がいないため、講義が始まるまで暇を潰すのが難しい。よって、ずっとスマホをいじることしかできない。しかし、大学でスマホの充電がなくなると、今度は帰りの電車が暇になる。


 読書で時間を潰すこともできるので、ラノベを持っていけばいいのかもしれないが、満員電車でカバンがぎゅうぎゅうに押されて本が傷んでしまう恐れがある。そのため、安易にラノベを持ち運ぶことはできない。


「そういえば、昨日初めて会った時、どうして美波は駅にいたの? まだあの時間は学校だったんじゃないの?」


 私は講義が一限目で終わったので早く帰ることができたのだが、高校生は授業中だったはずだ。まさか美波が学校をさぼったとは思えない。


「今、ちょうどテスト期間中なんです。テストは午前中で終わりますから」

「あぁ、そういうことだったのね。ということは、今日もこれからテスト?」

「はい。金曜日までです。今週はずっとテスト勉強漬けですね」


 そう言って美波はてへっと笑った。無邪気な笑顔が可愛らしい。


 私も去年までは女子高生だったことを思い出した。たった一年前のことなのに、今となってはとても懐かしく思える。


 高校時代の私は試験期間中であっても、あまり勉強をしていなかった。テストが午前で終わって帰宅しても、すぐには勉強を始めなかったのだ。帰ったらまずネットをして、ちょっと昼寝をする。そして気付けば夜だった。そんなことの繰り返しだったような気がする。


「その、今週の金曜日なんですけど……。時間、空いてたりしませんか? その日テストが終わるので、よかったら二人でどこかに行きたいなぁ……なんて思ったり……」


 美波はもじもじしながら話を切り出した。

 これはつまり、デートの誘いということだろうか。

 この子、結構積極的だ。

 誘いを断る理由はなかった。週末だし、次の日は休みだからいいか。


「金曜日ね。大丈夫よ。その日はバイトもないし。講義が終わった夕方なら会えると思うわ」

「いいんですか? 実は私、春華さんについてきてほしい所があるんです」

「ふーん、そうなんだ。それって、どこなの?」

「まだ内緒です。あ、待ち合わせはどうしましょうか?」

「場所は美波に任せるわ。時間は夕方の五時くらいにしてもらえると助かるのだけど」

「わかりました。では、五時にT駅の改札前で会いましょう」


 こうして、私たちは二人で出かける約束をしたのだった。


 大学に入って初めてできた友達と初めてどこかへ行くことになった。放課後におでかけをするなんて、いかにも女子大生っぽいことをするようになったものだ。


 しばらく美波と会話していると電車が来た。

 私たちは同じ車両に乗り込んだ。

 

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