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三 青春

感想をお待ちしております。

 四月。私は二回生に進級した。

 私のキャンパスライフは早いもので二年目を迎えたのであった。

 後輩もできた。私は先輩と呼ばれる立場となったのだ。


「春ちゃん、午後の講義サボっていつもの喫茶店行こうよ」


 私の袖を引っ張りながら桃が言う。

 

「何言ってんの。喫茶店なら放課後でいいでしょ。サボりなんてダメよ」


 と、私は彼女の提案を拒否する。

 

「さすが柊先輩。優等生は違いますね」

「今まで一度もサボったことないんですよね」


 私には桃以外にも新しく友達ができていた。彼女たち二人は美波の同期である。


「放課後じゃ遅いんだよぉ! スペシャルパフェ売り切れちゃう!」


 桃はごねた。

 

「また今度にしなさい」


 私はそう言って桃の頭を撫でた。

 

「安心したまえ、桃たん。今度私が特別にスペシャルパフェをキープしておこう」


 ここでいきなり岸和田が現れた。一体いつからここに?

 本当にこの人は神出鬼没な存在だ。

 

「ホント? ありがとうゆっこ!」


 桃は岸和田に抱き付いた。

 岸和田はデレデレと嬉しそうな顔をしている。

 

「岸和田先輩。今日は就活ないんですか?」


 と、私は一言尋ねた。


 彼女は四回生になった。就職活動で忙しい時期であるはずだ。それなのに、ノコノコとこの場に顔を出す暇なんてあるのだろうか。

 

「就活? ああ、今日はサボった。明日から本気出す」


 岸和田はケロッとしていた。その様子だと、あまり上手く進んでないみたいだな。

 まぁこの人のことだし、いずれどこかの企業から内定をもらってくることだろう。なんせロリコンであることを除けば完璧な人物なのだから。

 

 私たちの集団は学食に向かっていた。これからみんなで昼食を取ることになっている。

 友達に囲まれながら歩いている私。去年までは、こんな光景はどこにも見られなかったものだ。

 奇跡というべきか。この私がいつの間にか、ぼっちを脱していた。

 

「おい、あの娘すげー可愛くね?」

「やべー」


 男子学生たちが噂をしている。きっと私のことを指しているのだろう。

 ふふん、どうだ。

 ようやく世の中の男たちも、私の魅力に気付き始めたようね。

 さぁ、もっと私に見とれなさい。もっと噂しなさい。ここに女神さまがいる、と。


「春華さん」


 そばを歩く美波が私を呼んだ。

 

「なあに?」


 私は機嫌よく返事をする。男に注目されていい気分なのだ。

 

「ありがとうございます、春華さん」


 美波は涙声になっていた。

 何も泣くことはないでしょう。私たちは今、こんなに楽しいのだから。

 

「私の夢を、叶えてくれて……」


 彼女は私の手を握ってくるのであった。

 

 私は答えた。

 

「どういたしまして」


お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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