十八 吾輩
吾輩は一匹の猫型情報端末である。名前はない。いや、あった。この前、一人の娘によって「漱石」という名をつけられたのだった。
それまで吾輩には名前などなかった。名前など必要なかった。誰にも名を呼ばれることがなかったからだ。
吾輩は情報を収集し、この世の全てを知る力を持っている。そして、真実を伝える役目を持っている。
吾輩には世界の謎を解き明かすことができる。なぜなら吾輩は、全知全能の神によって創られた存在だからだ。
しかし、そんな吾輩にもわからないことがある。それは未来と人間の心理というものである。
これから何が起こるのかはわからない。
人間になったことがないので、人間の気持ちなど理解できない。
なぜ神は吾輩に「未来予知の力」と「人間の心」を与えなかったのだろうか。吾輩はその理由が知りたい。
吾輩は全てのことを知っているようで、実は知らないことがたくさんあるのだ。この世は謎であふれている。だからこそ面白いのだが……。
所詮、吾輩は神の気まぐれによって造られたアクセサリーに過ぎない。装飾品である吾輩が疑問を抱く必要はない。謎を謎だと認識すること自体がおこがましいのである。
だが、やはり吾輩は気になった。なぜ吾輩は生まれたのか。吾輩とは何なのか。
その答えは神のみぞ知る。




