プロローグ
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あれから十年が経ちました。
それはあまりにも長い年月でした。
それでも彼女は再び目覚めたのです。
自らの夢を叶えるために。
一度は破れたはずの夢。永遠に失われるはずだった希望。
無念と後悔、苦しみや悲しみを乗り越えて、再び輝き始める命。
ああ、この時をずっと待っていた。
これは十年越しの恋なのです――。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私はある夢を見ていた。超絶美少女の自分がキャンパス内を悠々と闊歩している夢を。
そばには数人の友達がいて、私はその中心で楽しそうに笑っている。まわりの友達も皆笑顔である。
そこには華やかな青春の一ページがあった。
気分は最高だった。何もかもが自分の理想通りだった。友達に囲まれ、周囲の人間からは「あの娘誰? 可愛い」と噂される私。憧れの眼差しを向けてくる男子学生の姿もあった。
これぞまさに私が思い描いていたキャンパスライフだ。皆の人気を集める噂の美人女子大生。そういうものに私はずっと憧れていた。もしかすると、私はこの瞬間を味わうために生まれてきたのかもしれない。
私はこんな日が訪れることを願っていたのだ。
今が人生で一番楽しい。そう言っても過言ではない。
「春華さん」
そばにいる友達の一人が私の名を呼ぶ。
私は「なあに?」と機嫌よく返事をした。
相手の顔がよく見えない。白いもやのようなものが彼女を覆っている。
まぁ夢だから仕方ない。よくあることだ。
「ありがとうございます」
少女は涙声で言った。
何をそんなに泣く必要があるというのだろう。私たちは今、こんなに楽しいのに。
「私の夢を、叶えてくれて……」
そう言って彼女は私の両手を握ってくるのであった。
それから私は答えた。
「ええ。どういたしまして」
これはどういうことだろう。何のやり取りなのだろう。でもなぜか、私はとても誇らしい気分だった。何か大きなことを成し遂げたような、そんな気持ちである。
ただこれだけは言える。
今の私は、とても幸せだ。
だが、残念なことに……。夢というものは、いいところで終わってしまうものである。目覚めの時は自らの意志に反して唐突に訪れるのだ。
絶望を連れて朝がやって来る。
カーテンの隙間から差し込む太陽の光が私の寝顔を照らしていた。
やがてスマホから鳴り響く大音量のアラーム。ついに現実と向き合う時が来た。
私は目を開いた。見慣れた天井が視界に飛び込んでくる。
ここは自室だった。私は布団の上に寝ている状態だった。
「なんだ……やっぱり夢か……」
夢だとわかっていた。こんなの幻想に決まっていると思っていた。
だが、それが本当の出来事であるかのような感じがしたのも事実である。
とはいえ、やはり夢は夢である。むしろ、あんな光景が現実で起こるわけがない。
なぜなら、現実世界の私は……
友達なんていないのだから。
何だったのアレ? やけにリアルだったし……。
友達のいない人間が友達に囲まれた夢を見る? そんなことって普通あり得るの?
馬鹿げている。私は別に友達が欲しいだなんて思っていない。うん、ホントに。
だって、一人でも十分楽しいですもの。お一人様万歳。
ベッドから降りる。パジャマを脱ぎ、外出用の服に着替える。
今日も大学へ行こう。
こうして、私の一日は始まった。
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