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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第一章:夢のキャンパスライフ編
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十三 雑談

 ツインテールのロリっ子、上田桃は私と同じ経済学部の一回生である。彼女の背丈は私より随分低く、見た目は完全に中学生くらいだが、年齢は十九歳。正真正銘の大学生なのであった。


 彼女とは仕方なく友人関係になったわけだが、私はそれを後悔しつつある。この女は私をどうしても百合に目覚めさせたいらしい。


「春ちゃん、早速だけど今日桃のウチに来る? なんなら泊っていかない? 一緒のお布団でおねんねすれば、きっと分かり合えると思うの」

「何言ってるのよ、あなたは。悪いけど今日はこの後バイトだから、あなたの家に寄ってく暇なんてないわ。それより、あなたはどこに住んでいるのかしら? 実家暮らし?」

「ううん、一人暮らしだよ。大学の近くのアパートで下宿してるんだ。だからいつでも春ちゃんを連れ込めるの!」


 連れ込まれてたまるか、と言いたい。身の危険しか感じない。彼女に何をされるかわからない恐怖。一度は入れば、ただでは帰れないだろう。だからこいつの家には一生行かない。


「あなた、他に友達とかいないの?」

「いないよ? だって必要ないもの。あたしには春ちゃんがいるんだもん」


 こいつ絶対まともじゃない。「友達なんて必要ない」とか言っちゃう人間にはロクな奴がいないのだ。おっと、盛大なブーメランを投げてしまった。でもしかし、私は特別なので問題ないのである。私は友達がいなくても大丈夫な人種なのだ。一般的な人間とは違い、崇高な存在だ。よって私に友達は不要だ。


 こいつみたいな薄気味悪い輩が私という神聖な存在に近づくことは罰当たりな行為に等しい。神を愚弄するような者には、いずれ天罰が下ることだろう。


「春ちゃんはバイトって何をしてるの? もしかして、メイド喫茶?」

「違うわ。本屋よ」

「そっかぁ、本屋さんでバイトしてるんだ。似合ってると思うよ。ちなみに、桃はコンビニでバイトしてるよ。H駅前のコンビニ。また今度来てよ」


 よし、もうそこのコンビニには行かない。二度と行かない。こんなのを雇うなんて、ぜったいまともな店じゃないだろうから。


 三限目まで時間がまだあるので、私たちはキャンパス内のベンチに腰掛けながら雑談をしているところだ。


 こうやって誰かと昼休みに会話をするのは久々だ。一体いつぶりだろうか。

 桃のツインテールがそよ風に揺れる。滑らかなうねりを伴いながら。

 まっすぐで綺麗な髪だ。彼女はどんなトリートメントを使っているのだろう。

 私はぼんやりと、絹糸のような髪を見ていた。


「んも~! そんなに見つめられると、桃ちゃん照れちゃうよぉ」

「は、はぁ?! 別にあなたのことなんか見つめてなんかないわよ。あなたの髪に見とれていただけなんだから」

「え? 髪の毛?」


 桃は髪を触る。指先をくしのように使って、その長い髪をといている。

 余計なことを言ってしまった。髪とはいえ、こいつに見入ってしまったのは不覚だ。


「綺麗な髪してるなぁって思ったのよ。どんな手入れしてるのか私にも教えなさいよね。参考にしてあげてもいいわ」

「えへへ、春ちゃんに髪を褒めてもらえるなんて嬉しいな。うん、いいよ。教えてあげる」


 桃はニコッと笑う。彼女の無邪気な顔は正直言って可愛らしかった。それはもうグッとくるほどに。


 私はこの子を嫌いにはなれなかった。気味悪いし、所々ウザいけど、どこか憎めないのだ。悪い奴ではないことは確かだ。


 トリートメントの種類やドライヤーの使い方について語る桃。意外と女子力が高いみたいだ。私も見習わなければならない。可愛さではこの子に劣っていないと思うけれども。


 友達がいると、新たな発見をすることができる。今まで気づかなかったことに気づくことができる。友達なんて不要だと思っていたが、メリットもあるようだ。


「……っていう感じかなぁ。よかった今度試してみてね」

「わかったわ。気が向いたらね」

「うん!」


 ニコニコしながら桃は私の肩にもたれ掛かってきた。

 左肩にかすかな温もりを感じる。

 まぁ、悪くはない。もう少しだけ、このままでいさせてあげてもいいだろう。寛容なこの私に感謝してほしいものだ。

 

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