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十九 降臨

感想をお待ちしております。

 レイアさんたちは山之内と同じく神の重臣であり、それぞれが特殊能力を持っている。


 全員が力を合わせれば、神を打ち倒すことができる。山之内はそう言った。


「やってやろうじゃねぇか。チコの弔い合戦だ」

「神の暴虐を止める。我々の手で……」

「久々に熱くなれそうですな」


 重臣たちは意気込んだ。


 彼らにとって、チコちゃんは大切な仲間だった。そんな彼女を殺した神に彼らは反旗を翻す決意を固めた。


「闇の魔女・アンネリーゼさん。どうか、春華さんのためだと思って、僕たちに力を貸していただけませんか?」

「もちろん、構いませんわ」


 アンネも話に乗った。


 凄腕の能力者集団に最強の魔女が加勢する。

 これはもう勝ったも同然だろう。


「では行きましょうか。神のもとへ」


 私たちは神が住む「天界」と呼ばれる場所へ向かうことになった。


 山之内がゲートを用意していた。その先は天界につながっているようだ。


 ゲートをくぐると、大勢の人たちが私たちを出迎えてくれた。

 彼らは皆、白い服を纏っており、背中からは白い羽が生えている。


 それはいわゆる天使のような姿だった。


「お待ちしておりました、山之内様。ついにこの時が来たのですね」


 一人の女性が言った。


「はい。いよいよです。今日まで本当によくやってくれました。神の目を欺きつつ、こうして反乱軍を結成することができたのは皆さんのおかげです。ありがとうございます」

「お礼を言うべきなのは私たちの方です。山之内様の根回しがなければ、これほどまでの戦力は集まらなかったでしょうから」


 いつの間にか天界では色んな人たちを巻き込んで、クーデターの準備が進められていたようだ。


 見ての通り、神は大勢の人から嫌われている。一体どれほど滅茶苦茶なことをしてきたのだろうか。


 山之内と会話をしている女性がこの天使集団のまとめ役だと思われる。

 見た目が若く、年齢は私とあまり変わらないはずだ。


 ここでふと彼女と目が合った。

 すると、彼女は私の方へ歩み寄ってきた。


「貴様が柊春華だな? 私が誰だかわかるか?」

「えっと……どなたでしょうか?」


 今まで一度も会ったことはないと思う。

 だけど、声は聞き覚えがある。


「貴様と私は夢の中で会話をしているはずだ」

「ああ、あの時の……」


 思い出した。以前、私が眠っている間に脳内でコンタクトを取ってきた人の声だ。


 神を倒すという共通の目的を持つ者どうし、お互い協力し合おうと同盟を結んだ相手である。


 あれ以来、彼女とは一度も話したことはなかったが、記憶はしっかり残っている。

 

「私の名はミラ。反乱軍を指揮している。我々のように天界には神をよく思わない連中が数多くいる。この者たちは皆、神を倒すことを目的として秘密裏に活動してきたのだ」

「どうしてあなたたちは神に逆らうことになったの?」


 私はずっと気になっていた。神の「アンチ」がこんなに多いのはどうしてなのか。


「理不尽な理由で神に仲間を殺された者、財産を没収された者……。神の身勝手な振る舞いをよく思わない者が不満を募らせている。私も妹を神に殺された。だから復讐を誓ったのだ。あのような存在が世界を統べる神であっていいはずがない」


 ミラさんは怒りに満ちた目で私に訴えた。

 

 彼女の後ろにいる他のメンバーも似たような顔つきをしていた。皆、それぞれ思うことがあるのだろう。神を許すことができない事情を抱えている。


「偽りの神を神の座から引きずり下ろす。そして、真の神を立てるのだ」

「真の神って……?」

「山之内様だ。このお方こそ、神に相応しい。我々は山之内様と共に正しい世界を創り上げるのだ」


 山之内に絶対的な信頼を寄せるミラさん。

 彼女がここまで肩入れする理由は不明だが、きっとそれなりの出来事があったものと思われる。


 私にはわからない。本当に神に相応しい人物が誰であるのか。そもそも、神とはどうあるべきなのか。


 だが、これだけは言える。今の神は、神である資格がない。


「へぇ、雑魚のくせに生意気なこと言うのね」


 頭上から声が聞こえた。


 誰? どこから話しているの?


 全員が空を見上げる。


 次の瞬間、私たちをめがけて雷が落ちてきた。


 ――ドオオオオオオン!


「うわああああああああっ!」


 悲鳴が響き渡る。


 突然の襲撃に集団はパニックを起こし始めていた。


「何事だ……?」


 狼狽えるミラさん。

 彼女も状況を把握できていない。


「これはアンタの仕業? 山之内」

「おやおや。バレてしまいましたか……」


 いつの間にか、一人の少女が私の目の前に立っていた。

 

 赤い髪。切れ長の目。


 彼女は……神である。


 その姿を直接見るのは初めてだった。だが、夢の中でミラさんが神のイメージ図を送ってくれていたので、私はすぐにこの少女が神であることに気づいた。


「そう……。そうだったのね。まさかアンタが私を裏切るとは思わなかったわ」

「裏切ってなどいませんよ。僕は最初から、あなたの味方でも何でもありませんでしたから」

「黙りなさい。こんな真似をしてタダで済むと思ったら大間違いよ」


 神は重臣の謀反に怒り心頭だった。

 

「全員、皆殺しにしてあげる」

「皆殺し……。できるといいですね」

「できる。私は神だもの」


 天界に集結した反乱勢力。そして、それを迎え撃つ神。


 最終決戦が始まろうとしていた。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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