十四 刺激
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レイアさんは両手で顔を覆いながら、シクシク泣いている。恥ずかしくて私たちと目を合わせることもできないようだ。
まさか本当に漏らしてしまうとは思わなかった。少し可哀想なことをしてしまった。
彼女は今、どこかへ消えて無くなりたいと思っているはずだ。
情けない話だが、この私も大学に入学してから二度も粗相をしている。そのため、レイアさんを見ていると、あの時の恥ずかしさがこみ上げてきて思わず叫びたくなってしまうのだ。
「あらあら。いい歳したレディがみっともないですわね。うふふふ」
アンネが嘲笑する。彼女はレイアさんを蔑んだ目で見ていた。
「揶揄っちゃダメよ。やめてあげなさい」
「そう言われましても、こんなの可笑しくて笑わずにいられませんわ。だって、お漏らしですわよ? 大人なのに! あー、汚い汚い。臭いがこちらまでプンプン漂ってきてましてよ」
鼻をつまみながらニヤッと笑う魔女。
かなり機嫌がいい。他人の失態を馬鹿にすることがよっぽど楽しいのだろう。悪趣味だ。
とはいえ、そういう私も内心ではゾクゾクしていた。苦悶の表情を浮かべる彼女の姿を見ると意地悪な思考がはたらいてしまったのだ。可哀想だと思いつつも、結局トイレに行かせてあげなかった。彼女がそのまま果ててしまう瞬間を密かに待ち望んでいた。
やっぱり今日の私は変だ。心と体の両方が熱を帯び、刺激を求めている。
拷問部屋で過ごしていたら、変なテンションになってしまった。私の中にある様々な欲望が行き場を求めながら体内を蠢いている。
「本当は春華もこの状況を楽しんでいるのでしょう? 素直になるのですわ」
「違う! 私は……」
「違いませんわ。ほら、今もこんなに熱くなっていますの」
「あっ……」
アンネは背後から私を抱きしめ、その指先で私の頬や首筋をなぞった。
氷のように冷たい魔女の手が肌に触れると、私は思わず声を出してしまった。
「いいことを思いつきましたわ。いつもの儀式……ここでついでにやってしまいませんこと?」
「何言って……。レイアさんがいるじゃないの」
「誰かに見られている方が興奮しますわ。わたくしに凌辱される春華の姿を彼女に見ていただきましょう」
勝手なことを言わないでほしい。私はそんなことで興奮なんてしないんだから。
しかし、アンネリーゼは私が拒む間もなく儀式を開始するのだった。
お互いが生きるためにお互いを満たし合う。それが私たちの間で交わされた契約だ。
「ちょっと待って……! んんっ」
魔女は一心不乱に私の身体の至るところを弄ってきた。
ふとレイアさんの方を見やると、彼女は唖然とした表情で私たちが戯れる様子を眺めていた。そりゃそうなるでしょうね。
「あなたたち……まさか……」
あ、ヤバい。完全に誤解されちゃってるわね。私とアンネの関係について、あらぬことを想像しているパターンだわ。
「春華ぁ……」
「や、やめっ……! んぐっ!」
アンネの口が私の口を塞ぐ。
レイアさんの視線をよそに何度も唇と唇を重ね合わせる私たち。魔女の甘い吐息が私をクラクラとさせ、正常な思考を奪い去ってゆく。抵抗したいのに体が動かない。私は毎回、魔女によってされるがままになってしまうのだ。
これは魔力のせいなのか。それとも、私が魔女を求めているからなのか。
こんなのダメだとわかっているのに、それでもやめられない。
「んっ!」
魔女の手が身体に触れただけで、私は痺れるような感覚に襲われた。
どうなっているの? 気のせいかしら。いつもより何倍も気持ちいい……。
やりたい放題を許してしまう屈辱。魔女に逆らえない自分への嫌悪感。第三者からの視線。
これらすべてが混ざり合うことで、私はかつてない愉悦を覚えた。
「いいですわ……。もっとわたくしに溺れるのですわ」
尊厳とか恥じらいとか、もうそんなのどうでもいいや。
今この瞬間の快楽を最大に味わいたい。そのためなら、すべてが壊れてしまっても構わない。
私は私が私であることを忘れてしまったかのように、ひたすら魔女に蹂躙され続けるのだった。
その隣ではレイアさんが息を荒くしていた。彼女は顔を火照らせ、羨ましそうに私とアンネの儀式を眺めている。見ているだけでは気が済まなくなってきたのだろう。自分も混ざりたいと言わんばかりだった。
すでに私たち三人は狂っていた。魔女が生み出した不気味な部屋で己の欲望に支配されるのだった。
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