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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第八章 神軍の結束編

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三 成績

感想をお待ちしております。

 私は注文したアイスコーヒーを飲みつつ、期末試験に向けてテスト勉強をすることにした。


 講義の内容をまとめたノートを開き、要点を確認していく。どの辺りがテストに出題されるのか、おおよその目星はついている。


 優等生で尚且つ普段から真面目に講義を受けている私は、難なく単位を取得する自信があるのだが、平凡な成績を残して満足するつもりはない。納得できる評価判定は「可」でも「良」でもなく、「優」ただ一つだけなのだ。


 というのも、私はスカラシップの獲得を目指しているからである。スカラシップとは、特に優秀な学部成績を修めた学生に対して大学から支給される返済不要の奨学金のことである。私が所属する経済学部では二十万円が支給されることになっている。


 もしこれだけのお金が手に入れば、その全額を学費に当てたいと思う。いつも学費は親が払ってくれているが、少しでも家計の負担を減らすことができればいい。


 成績優秀者に選ばれるためには、とにかく試験で高得点を取らなければならない。だから私はこうして必死に勉強しているのだ。


「このかき氷、すごく美味しいよ。一口食べる?」


 頬を緩ませながら桃が言った。

 彼女は岸和田先輩が丹精込めて作り上げた白玉ぜんざいのかき氷を堪能している。


 降り積もったばかりの雪のようにフワフワとした氷の削り節。その上には大量の小豆がかかっている。さらには、白玉と抹茶のアイスが添えられているのだった。


 甘党の私はぜんざいも抹茶アイスも大好物である。好きな食べ物どうしを組み合わせた贅沢なデザートはきっとすごく美味なのだろう。


 ガラスの器にこんもりと盛られた甘い雪山を見て、ゴクリと唾を飲みこむ私。


「じゃあ、一口だけいただこうかしら……」


 つい誘惑に負けてしまう。食べてみたいという欲求をどうしても抑えきれなかった。いくら暑い季節であっても、アイスクリームなどの冷たいものをあまり食べ過ぎないように注意しているのだが、一口だけなら問題はないだろう。


「はい。あーんして」


 桃が小豆混じりのかき氷をスプーンですくい、それを差し出してきたので、私はパクッと食いついた。桃は「えへへ、間接キスだねー」とか何とか言ってるけど、とりあえず無視して味わう。


 ひんやりと冷たく、やわらかい食感が口の中に広がる。私は氷の綿を食べているような気分になった。


「ホントだわ。すごく美味しい……」

「でしょー。春ちゃんも注文しちゃいなよ」


 できればそうしたいところだが、これほどのボリュームがあるかき氷を食べたら、確実に頭がキーンと痛くなるだろう。また、お腹を壊す心配もある。


 今はせっかく勉強に集中しているのだから、こんな時に頭痛や腹痛と戦うことになるのは勘弁してほしい。


「今日はやめておくわ。かき氷は今度食べようかな。テストが終わったらまた来ましょう」

「うん。そうしよう」


 次にここへ来るのはバイト代が入ってからだ。今はまだ給料日前である。できるだけ節約しなくてはならない。


「ところで桃、テスト勉強はちゃんとやってる?」 

「うっ……」

「やっていないのね。まぁそうだろうとは思っていたけど。そろそろ本腰を入れた方がいいんじゃない? 後で苦労するわよ」


 テストの出来に手応えを感じることができれば、憂いなく夏休みを迎えられるだろう。逆に自信が持てなければ、試験結果に怯えながら夏休みを過ごすことになってしまう。桃だって、それは絶対に避けたいはずだ。


「それ食べ終わったら、私と一緒にテスト勉強するわよ」

「はぁーい……」


 力なく返事をする桃。あまり乗り気ではないようだが、彼女が単位を落とすことがないように、ここは無理矢理にでも勉強させるべきなのだ。


 桃の成績はごく普通で悪くはないが、これは私が彼女に勉強を教えているからである。私と知り合う前、つまり一回生の前期は単位を落とした科目もあったそうなのだが、それ以外の学期では履修科目の単位をすべて取得することができている。


 もし私と知り合っていなければ、この子は今頃どうなっていただろう。


 私たちは気づけば友達になっていた。友人関係である以上、私は桃が留年しないよう必死にサポートするしかないのだが、本人のやる気が伴わなければ意味がない。


 よって、彼女にやる気を出させるために勉強を頑張った時は「ご褒美」を与えることにしている。


 本当はそんなものがなくても自分で勉強するのが当たり前なのだが、背に腹は代えられない。とにかく桃をその気にさせないと何も始まらない。


「またプリン買ってあげるわ。それなら頑張れるわよね?」

「プリン……! うん! 桃、頑張る!」


 食べ物で簡単に釣れるチョロい性格でよかった。おかげでとても扱いやすい。

 

 さっきから岸和田先輩が私たちの座っている席のまわりをウロウロしながら、こちらの様子をチラチラと見てくる。正確には桃に視線を向けていると思われる。正直鬱陶しいのだが、私はせっかくなので追加で注文することにした。長居しているのにコーヒー一杯だけだと店に申し訳ないからね。


「すみません。アイスコーヒー、もう一杯ください」

「きゅ、急に話しかけるな、ヒノラギ! 私は今、かき氷を美味しそうに食べる桃たんを観察している最中なのだぞ」


 いや、そんなことしてないで真面目に接客しなさいよ。仕事中でしょうが。あと私は「ヒイラギ」です。


「あなた、次期店主ですよね? 遊んでる場合じゃないでしょう」

「ちっ。偉そうに説教か。……で、注文は何だって? 『特盛チョコバナナパフェ~たい焼き&ベルギーワッフルダブル乗せ~』が一人前だったかな?」

「誰もそんなものは頼んでいません」


 とんでもないメニューだ。聞いただけでお腹がいっぱいになる。こんなものを食べてしまったら、しばらく何も食べなくて済みそうね。


「春ちゃんパフェ食べるの? いいなぁ、桃も食べたいなぁ」

「いや、食べないから」

「よしよし、わかった。桃たんの分も特別に用意しよう。タピオカとイチゴ大福も無料でトッピングしちゃうぞ」


 何その欲張りセット……。もう何のパフェなのかわからないでしょ。


「話をややこしくしないでください。パフェはいいですから、アイスコーヒーをお願いします」

「アイスコーヒーですねー。かしこまりました。無料で下剤をトッピングできますが、いかがなさいますかー?」

「もうこの店潰れてしまえばいいのに」


 提供しているメニューは絶品だけど、店員の接客態度がゴミ過ぎる。

 お気に入りの喫茶店なのに、岸和田先輩のせいでこの先がとても心配だ。


お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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